似た意味を持つ「総務」(読み方:そうむ)と「人事」(読み方:じんじ)の違いを例文を使って分かりやすく解説しているページです。
どっちの言葉を使えば日本語として正しいのか、迷った方はこのページの使い分け方を参考にしてみてください。
「総務」と「人事」という言葉は、どちらも「業務や部署名」を意味しているという共通点があり、本来の意味は少し違いますが混同して使われる傾向があります。
総務と人事の違い
総務と人事の意味の違い
総務と人事の違いを分かりやすく言うと、総務とは組織全体に関わる業務を表し、人事とは人材に関する業務を表すという違いです。
総務と人事の使い方の違い
一つ目の総務を使った分かりやすい例としては、「総務部は多様な役割を担っています」「総務に向いていない人は社内調整が苦手な人です」「総務の求人情報はどれぐらいありますか」「総務省はマイナンバーカードの交付枚数を公表しています」などがあります。
二つ目の人事を使った分かりやすい例としては、「新卒で人事部に配属されることは珍しい」「4月1日付で人事異動発令を行いました」「人事評価シートを明日までに提出してください」「コミュニケーションスキルが高い人が人事労務に向いています」などがあります。
総務と人事の使い分け方
総務と人事という言葉は、どちらも役所や企業の部署名や業務内容を表していますが、意味や使い方には違いがあります。
総務とは、組織全体に関する事務を扱う職務を意味します。会社の総務部は、会社組織を円滑に動かす部署であり、備品管理や施設管理のほか来客応対や広報の発行など、さまざまな業務を担当します。
人事とは、人間に関する事柄、特に組織体においてメンバー個人の身分や能力に関する事柄を意味します。会社の人事部は、人材の採用や教育、その配置や勤怠の管理などを行い、主に人に関する業務を行います。
つまり、総務とは施設や備品の管理など組織全体に関わる仕事を意味し、人事とは採用や配属など人材に関わる仕事を意味する言葉です。ただし、会社によっては総務が人事の業務を兼ねる場合もあります。
総務と人事の英語表記の違い
総務を英語にすると「general affair」「administration」となり、例えば上記の「総務部」を英語にすると「the general affairs department」となります。
一方、人事を英語にすると「human affairs」「personnel affairs」となり、例えば上記の「人事部」を英語にすると「the personnel department」となります。
総務の意味
総務とは
総務とは、組織全体に関する事務を扱うこと、また、その職にある人や部署を意味しています。
総務の使い方
総務を使った分かりやすい例としては、「総務部の具体的な業務内容を把握する」「営業から総務へ転職する志望動機を教えてください」「キャリアコンサルタントは総務におすすめの資格です」「総務部ではどれぐらいの英語力が求められますか」などがあります。
その他にも、「総務省消防庁主催のWEBセミナーに参加しました」「夫は総務省統計局に勤めています」「現在の総務大臣の名前を言えますか」「総務省はデータサイエンス入門講座を開催します」「総務省のお問い合わせ電話番号を調べる」などがあります。
総務の「総」は訓読みで「すべて」と読み、ある物事のすべてや全体を表し、「務」は自分がひきうけてする仕事や役目を表す漢字です。総務とは、組織全体に関する事務を扱う業務を意味し、また、その部署や担当者も表現します。
「総務省」の意味
総務を用いた日本語には「総務省」(読み方:そうむしょう)があります。総務省とは、国の行政機関の一つであり、2001年に総務庁と自治省および郵政省を統合して発足したものです。行政管理、地方自治、電気通信、放送、電波利用などに関する行政事務を担当します。
総務の類語
総務の類語・類義語としては、いろいろの雑多な事務を意味する「庶務」、役所や会社などで書類の作成など主として机の上でする仕事を意味する「事務」、実地に行なう業務を意味する「実務」、事業などに関して経常的に継続して行なう仕事を意味する「業務」などがあります。
人事の意味
人事とは
人事とは、人間社会の出来事、人世の事件、自然の事柄を意味しています。
その他にも、「人間の力でできる事柄、人間が行う事柄」「社会・機構・組織などの中で、個人の身分・地位・能力の決定などに関する事柄」「俳句の季語の分類の一つ、天文・地理などに対する人間に関する題材」の意味も持っています。
人事の読み方
人事の読み方は「じんじ」の他に「ひとごと」とも読みます。「ひとごと」と読むと「自分に関係ないこと」を意味し、「じんじ」と読む場合と意味が異なるので読み間違いに注意してください。
人事の使い方
「人事の政治的背景を考える」の文中で使われている人事は「人間社会の出来事」の意味で、「人事を尽くして天命を待つ境地で英語試験の合格発表を待っています」の文中で使われている人事は「人間の力でできる事柄」の意味で使われています。
一方、「新しい人事考課制度について説明します」「人事院勧告に準じて特別給を引上げます」の文中で使われている人事は「組織などの中で個人の能力に関する事柄」の意味で、「人事句が密かなブームになっている」の文中で使われている人事は「俳句の季語の分類の一つ」の意味で使われています。
人事とは、上記の例文にあるように複数の意味を持ち、それぞれの意味で用いられているため文脈により意味を捉える必要があります。人事の「人」はヒトや社会的行為の主体を表し、「事」は事柄や出来事を表す漢字です。
「人事院勧告」の意味
人事を用いた日本語には「人事院勧告」があります。人事院勧告とは、人事院が、給与など勤務条件の改定に自ら関与できない国家公務員のために、国会と内閣に必要な見直しを求める制度のことです。ここで言う勧告は、行政機関が他の政府機関に参考意見を提出することを意味しています。
人事の類語
人事の類語・類義語としては、人のしわざや人の力で何かを行うことを意味する「人為」、現実の出来事や現象を意味する「事象」、従業員の業績や能力に対し評価を下すことを意味する「人事評価」などがあります。
総務の例文と使い方
この言葉がよく使われる場面としては、全体の事務をまとめ処理すること、その職あるいは人を表現したい時などが挙げられます。
上記の例文にあるように、総務という言葉は主にビジネスシーンで使用されています。
人事の例文と使い方
この言葉がよく使われる場面としては、人間に関する事柄、人のなしうる仕事、人の採用や転任あるいは職務や能力などに関する事柄を表現したい時などが挙げられます。
上記の例文にあるように、人事という言葉はビジネスシーンで使用されることがほとんどです。
例文の「人事を尽くして天命を待つ」とは、人間ができることはすべてやった上で結果を運命に任せることを意味します。中国の儒学者・胡寅が書いた「読史管見」に由来する言葉です。
総務と人事という言葉は、どちらも「役所や会社の業務」を表します。どちらの言葉を使うか迷った場合、施設や備品の管理など組織全体に関わる業務を表現したい時は「総務」を、採用や育成など人材に関する業務を表現したい時は「人事」を使うようにしましょう。