似た意味を持つ「通じる」(読み方:つうじる)と「通ずる」(読み方:つうずる)の違いを例文を使って分かりやすく解説しているページです。
どっちの言葉を使えば日本語として正しいのか、迷った方はこのページの使い分け方を参考にしてみてください。
「通じる」と「通ずる」という言葉は、どちらも道筋が通ることを意味するという共通点があり、使う場面は少し違いますが混同して使われる傾向があります。
通じると通ずるの違い
通じると通ずるの意味の違い
通じると通ずるの違いを分かりやすく言うと、辞書に載っている現代風の読み方か、古い読み方かの違いです。「通じる」と「通ずる」は、どちらも同じ意味を持つ言葉で、現代では「通じる」の方を一般的な読み方として使用しています。
通じると通ずるの使い方の違い
一つ目の通じるを使った分かりやすい例としては、「野球とサッカーは通じるところがある」「話が通じる人でありがたい」「この人とは相通じるものがある」「話が通じる人に担当になってほしかった」「外国では通じない英語を和製英語と言う」などがあります。
二つ目の通ずるを使った分かりやすい例としては、「この歴史上の二人の戦い方は相通ずるものがある」「歌と芝居は相通ずるものがある」「比較的多くに通ずるところを採る芸風」などがあります。
通じると通ずるの2つが存在する理由
なぜ、通「じる」と通「ずる」という二種類の語尾が存在するのか。これは、日本語の口語文法と文語文法の決まりによる違いがあるからです。口語文法とは、しゃべり言葉のことで、文語文法とは、文章で書く際の言葉という意味です。
これらの日本語文法には「活用法」という考え方があります。活用法とは、文章の流れによって単語の語尾を違和感のないように変えることを意味します。
まさしく「通じる」「通ずる」のように、最初の言葉は同じであっても語尾が違う言葉が存在するのは、活用法によって文脈に合うかたちで語尾が変えられているからです。
通じる、通ずるという言葉は「サ行変格活用」という活用法によって、語尾を変えています。サ行変格活用では、文章の流れによって語尾をサ行の言葉である「さしすせそ」を元にして変えていきます。
「通じる」「通ずる」という言葉の場合、「通」という先頭の言葉はそのままに、語尾を「未然形:じ」「連用形:じ」「終止形:じる・ずる」「連体形:じる・ずる」「仮定形:じれ・ずれ」「命令形:じろ・じよ・ぜよ」という風に変化させます。
語尾の変化の形である未然形や連用形などの名称は、その言葉がどのような文脈で使われているかの形のことを指しています。例えば「未然形」というのは「まだそうなってはいない」という意味を持ち、否定形と一緒に使われます。
つまり、通じるの未然形の表現は「通じない」となります。変化しない先頭の「通」に未然形の「じ」をつけて、最後に否定形の「ない」を付けた形です。
このように、日本語には、様々な文法上の決まりがあります。「通じる」「通ずる」というのは、両方ともこの文法で言うところの「終止形」です。
終止形というのは、言い切りの形という意味があります。文章ではなく、ひとつの単語として使う際には終止形を使います。
通じると通ずるの使い分け方
「通」の終止形には「じる」と「ずる」の二種類があります。これが「通じる」と「通ずる」の違いです。二種類の語尾がある場合、どちらを使っても間違いではありませんが、どちらか一方が、一般的に使われているものであることがほとんどです。
「通」の場合、辞書に記載されているのは「通じる」という言葉です。こちらが、現代では一般的に使用されている言葉であり、「通ずる」というのは古い言い方になります。
しかし、意味に違いはありませんし、どちらも文法的には使えるものですので、個々人の好みや文章の前後の文脈などを考えて、自由に使い分けが出来るものであると言えます。
通じるの意味
通じるとは
通じるとは、道筋が通ることを意味しています。
表現方法は「通じるところがある」「通じるものがある」「話が通じる」
「通じるところがある」「通じるものがある」「話が通じる」などが、通じるを使った一般的な表現方法です。
通じるの使い方
通じるを使った分かりやすい例としては、「中国でも日本語は通じる」「この考え方は今のビジネスに通じる」「東西に通じる道路」「祈りは通じて合格した」「通じる英語と通じない英語がある」「そもそも話が通じない」などがあります。
その他にも、「日本旅館のサービスに相通じる」「恋愛と経営は相通じるものがある」「他のテーマにも相通じるものがある」「言葉にしなくても心で通じることができる」などがあります。
通じるの対義語
通じるの対義語・反対語としては、行き詰まることを意味する「窮する」(読み方:きゅうする)があります。
通じるの類語
通じるの類語・類義語としては、人や車が行き来することを意味する「通る」、相手の気持ちに寄り添うことを意味する「理解する」、あやふやなものがはっきりすることを意味する「分かる」などがあります。
通じるの通の字を使った別の言葉としては、病院に治療や検査に行くことを意味する「通院」、過ぎることを意味する「通過」、学校に行くことを意味する「通学」、貫くことを意味する「通貫」などがあります。
通ずるの意味
通ずるとは
通ずるとは、通じるという言葉の少し古い言い方を意味しています。通ずるというのは「通ず」という言葉のサ行変格活用の終止形です。
表現方法は「通ずるものがある」「通ずるところがある」「通ずるものを感じる」
「通ずるものがある」「通ずるところがある」「通ずるものを感じる」などが、通ずるを使った一般的な言い回しです。
通ずるの使い方
通ずるを使った分かりやすい例としては、「国際機関を通ずる協力を求む」「日本の神話にも通ずる感覚」「日々の積み重ねがマラソンにも通ずる」「この考え方は仏教の教えに通ずる」「一芸は道に通ずる」などがあります。
その他にも、「議論になったが相通ずる点はあった」「経営理念に相通ずるものがある社員の行動」「万人に相通ずると信じている」などがあります。
通ずるは辞書に載っていない
意味としては、通じると全く同じものであり、文章の前後の文脈などによって使い分けることが出来るものです。辞書には「通じる」は載っていても、「通ずる」という言葉は載っていないことが多く、通ずるは現代語よりも少し古い表現です。
しかし、意味は同じであるので、「通じる」「通ずる」のどちらを使っても間違いではありません。古風な雰囲気を出したい時などには、あえて「通ずる」という言葉を使うのも良いでしょう。
他にも、例えば「通ず」という言葉の命令形を考えてみると、現代風の言い方であれば「通じろ」となりますが、古風な言い回しになると「通じよ」または「通ぜよ」となります。
この「通じよ」「通ぜよ」と同じ雰囲気を持つのが「通ずる」であると考えると、わかりやすいでしょう。
通じるの例文
この言葉がよく使われる場面としては、主に自分の力が他の場所で試すことを表現したい時などが挙げられます。
例文1のように自分で学んだ英語が実際に海外の国で通用するのか、例文3のように小さいときから練習してきた野球が日本国内では通用したが、もっとレベルの高いアメリカでは通用するのか、という使い方です。
通ずるの例文
この言葉がよく使われる場面としては、通じるという言葉を少し古風な表現で表したい時などが挙げられます。
例文2のように現在や未来のことについても使うことがありますので、「通じる」の方を使わずに「通ずる」を使うと間違いというわけではありません。
「通じる」と「通ずる」の意味を知っている人からすると、なんか古風な人間だなと思われるくらいです。