似た意味を持つ「恩恵」(読み方:おんけい)と「恩寵」(読み方:おんちょう)の違いを例文を使って分かりやすく解説しているページです。
どっちの言葉を使えば日本語として正しいのか、迷った方はこのページの使い分け方を参考にしてみてください。
「恩恵」と「恩寵」という言葉は、どちらも恵みや慈しみを意味しているという共通点があり、本来の意味は少し違いますが混同して使われる傾向があります。
恩恵と恩寵の違い
恩恵と恩寵の意味の違い
恩恵と恩寵の違いを分かりやすく言うと、恩恵とは神だけでなく自然や他人からの恵みも表し、恩寵とは神や君主からの恵みを表すという違いです。
恩恵と恩寵の使い方の違い
一つ目の恩恵を使った分かりやすい例としては、「人類は自然の恩恵を受けてきた」「主の恩恵に感謝する」「円安で恩恵を受ける企業に注目する」「太陽光の恩恵にあずかる自家発電だ」「技術革新の恩恵にあやかることができた」などがあります。
二つ目の恩寵を使った分かりやすい例としては、「神の恩寵によって人々は救われた」「逆境は神の恩寵的試練である」「神の恩寵にあずかる人間の営み」「選民にのみ与えられる救済的恩寵がある」などがあります。
恩恵と恩寵の使い分け方
恩恵と恩寵という言葉は、キリスト教においては神から与えられる人類への恵みや慈しみを意味しますが、どちらも他の意味があり、その意味では使われ方が違うので注意が必要です。恩恵は他人や自然などから受ける幸福や利益を意味し、恩寵は神や君主から受ける恵や慈しみを意味します。
上記の例の「主の恩恵」とは、キリスト教における人類への神の恵みを表すので、恩恵を恩寵に置き換えることができます。しかし、「自然の恩恵」とは、自然から受ける恵みや利益を表すので、恩恵を恩寵に置き換えることはできません。
恩寵は、神や君主など限られた特別な存在から受けるものです。恩恵と恩寵を比べると、自然や他人からの恵みも意味する恩恵の方が幅広く使え、馴染みのある言葉と言えるでしょう。
恩恵と恩寵の英語表記の違い
恩恵を英語にすると「favor」「benefit」となり、例えば上記の「恩恵を受ける」を英語にすると「receive benefit」となります。一方、恩寵を英語にすると「goodwill」「grace of god」「grace」となり、例えば上記の「神の恩寵によって」を英語にすると「by the grace of God」となります。
恩恵の意味
恩恵とは
恩恵とは、恵み、慈しみを意味しています。
その他にも、キリスト教で「神の恩寵」の意味も持っています。
表現方法は「恩恵を与える」「恩恵が大きい」「恩恵を感じる」
「恩恵を与える」「恩恵が大きい」「恩恵を感じる」「恩恵を施す」「恩恵を受ける」などが、恩恵を使った一般的な言い回しです。「恩恵を返す」という使い方は間違いで正しくは「恩を返す」なので誤用には注意しましょう。
恩恵の使い方
「インフレで恩恵を受ける人もいる」「社会福祉の恩恵にあずかる」「清らかな水の恩恵に与る」「自然の恩恵にあやかる精進料理です」「新しい産業の恩恵を被る地方都市となる」などの文中で使われている恩恵は、「恵み、慈しみ」の意味で使われています。
一方、「キリスト教に入信して恩恵を授かりたい」「神の恩恵に感謝する」「主が施す恩恵に違いない」「神の慈悲と恩恵によって救われる」などの文中で使われている恩恵は、「キリスト教で神の恩寵」の意味で使われています。
恩恵という言葉は、上記の例のように複数の意味を持ちますが、一般的には「恵み、慈しみ」の意味で使われることが多い言葉です。この意味では、得になることや経済的な利益も表すことがあり、恩恵という言葉は幅広く使われています。
「恩恵期間」の意味
恩恵を用いた日本語には「恩恵期間」があります。これは、国際法における用語であり、開戦の際に自国港にある敵商船や開戦を知らずに入港した敵商船に対して、抑留せずに出港のために与える期間を意味します。この用語における恩恵は、相手に対する情けや労わる心を表しています。
恩恵の対義語
恩恵の対義語・反対語としては、利益を失わせることや失うことを意味する「損害」、人に不幸をもたらす物事を意味する「災い」、身にふりかかる災いを意味する「厄難」などがあります。
恩恵の類語
恩恵の類語・類義語としては、恩恵やめぐみを意味する「恵沢」、人や物に利益や幸いをもたらすことを意味する「恩沢」、恵みや慈しみを意味する「恩愛」などがあります。
恩恵の恵の字を使った別の言葉としては、互いに特別の便宜や利益を与え合うことを意味する「互恵」、特に有利なようにとりはからうことを意味する「特恵」、物事の道理を判断し処理していく心の働きを意味する「知恵」などがあります。
恩寵の意味
恩寵とは
恩寵とは、神や主君から受ける恵み、慈しみを意味しています。
その他にも、キリスト教で「人類に対する神の恵み」の意味も持っています。
表現方法は「恩寵を受ける」「恩寵を賜る」「神の恩寵」
「恩寵を受ける」「恩寵を賜る」「神の恩寵」などが、恩寵を使った一般的な言い回しです。
恩寵の使い方
「皇帝の恩寵を約束し賞金を与えた」「農奴は恩寵賦役に汗を流した」「下級武士はわずかな恩寵を受けただけだった」「神仏や先祖に恩寵を賜りたいと願う」などの文中で使われている恩寵は、「神や主君から受ける恵み、慈しみ」の意味で使われています。
一方、「この逆境を恩寵的試練として受け止める」「全ての人に恩寵が与えられる」「カルバン神学の救いの恩寵は排他的である」「パスカルの恩寵論を読み解く」「神の恩寵により救われる」などの文中で使われている恩寵は、「キリスト教で人類に対する神の恵み」の意味で使われています。
恩寵という言葉は、上記の例文のように二つの意味を持ちますが、神や君主など特別な存在から与えられる恵みと捉えておけば良いでしょう。神や君主などの絶対的存在から受けるものなので、キリスト教などの宗教や歴史資料など使われるシーンは限られています。
「恩寵的試練」の意味
恩寵という言葉を用いた日本語には「恩寵的試練」があります。キリスト教の教えのひとつであり、悪いことが起こった際に、それを神が自分に与えてくれた試練として、喜び感謝して受けとめることを意味します。
恩寵の類語
恩寵の類語・類義語としては、情け深い心や慈しみの心を意味する「恩情」、菩薩が人々をあわれみ苦しみを取り除くことを意味する「慈悲」、仏が世の人を救おうとしてたれる恵みの徳を意味する「恩徳」などがあります。
恩寵の寵の字を使った別の言葉としては、天の恵みや天子の慈しみを意味する「天寵」、特別に大切にして愛することを意味する「寵愛」、 世にもてはやされる人を意味する「寵児」などがあります。
恩恵の例文
この言葉がよく使われる場面としては、恵みや慈しみを表現したい時などが挙げられます。
恩恵という言葉は、恵みや慈しみという意味の他に、キリスト教における神の恩寵も意味しますが、上記の例文のように恵みや慈しみの意味で使われることがが多い言葉です。
例文1の「恩恵にあずかる」、例文2の「恩恵を被る」、例文3の「恩恵を授かる」とは、恵みを受けることや利益のあることを意味する表現です。「恩恵にあずかる」は漢字表記で「恩恵に与る」と書きます。「恩恵を授かる」は、「恩恵をさずかる」と読みます。
恩寵の例文
この言葉がよく使われる場面としては、神や主君から受ける恵みや慈しみ、キリスト教における人類に対する神の恵みを表現したい時などが挙げられます。
例文1にある「恩寵予定説」とは、キリスト教の思想の一つであり、この世のすべてが神の意思のもとに予定されている考え方を意味します。例文3の「恩寵公園」は誤り、正しくは「恩賜公園」です。「おんし公園」と読み、戦前に宮内省が所有していた土地が恩賜され、整備された公園のことです。
恩恵と恩寵という言葉は、どちらも恵みや慈しみ気持ちを表す言葉です。どちらの言葉を使うか迷った場合、神だけでなく自然や他人からの恵みを表現したい時は「恩恵」を、神や君主など特別な存在からの恵みを表現したい時は「恩寵」を使うようにしましょう。