似た意味を持つ「処理」(読み方:しょり)と「処分」(読み方:しょぶん)の違いを例文を使って分かりやすく解説しているページです。
どっちの言葉を使えば日本語として正しいのか、迷った方はこのページの使い分け方を参考にしてみてください。
「処理」と「処分」という言葉は、どちらも「物事の扱いを決めること」を意味しているという共通点があり、本来の意味は少し違いますが混同して使われる傾向があります。
処理と処分の違い
処理と処分の意味の違い
処理と処分の違いを分かりやすく言うと、処理とは物に何らかの手を加えることを表し、処分とは物に手を加えることだけでなく捨てることや人を罰することも意味するという違いです。
処理と処分の使い方の違い
一つ目の処理を使った分かりやすい例としては、「システム障害で支払い処理が遅れています」「AI写真イラスト化で画像処理を行う」「ゲームの処理落ちにイラつく」「情報処理技術者試験に申し込みました」「山積みになった雑用を手早く処理する」などがあります。
二つ目の処分を使った分かりやすい例としては、「物置に溜まった古新聞を処分する」「違反者を処分する」「山奥に廃棄物処分場があります」「粗大ごみの処分費の勘定科目を教えてください」「金融庁は銀行に業務停止命令の行政処分を出しました」などがあります。
処理と処分の使い分け方
処理と処分という言葉は、どちらも物事を取り扱いを決めて、すっかり始末をつけることを意味します。この意味で使用されている「雑用を手早く処理する」の処理は、処分という言葉に置き換えても問題ありません。
さらに、処分という言葉は、「罰すること」「廃棄することや売り払うこと」「法律上の処分行為」の意味も持っており、この意味で使用されている「違反者を処分する」「粗大ごみの処分」「行政処分」の処分は、処理という言葉に置き換えることはできません。
つまり、処理は物に対してなんらかの手を加えることであり、人に対して使うことはできません。一方の処分は、物に対して使用する際は手を加えることだけでなく捨てることも意味し、また人に対しては罰を加えることを意味します。
二つの言葉を比べると、処理よりも処分の方が幅広い意味を持ち、汎用性のある言葉だと言えるでしょう。
処理と処分の英語表記の違い
処理を英語にすると「management」「dealing」「processing」となり、例えば上記の「支払い処理」を英語にすると「payment processing」となります。
一方、処分を英語にすると「disposition」「punishment」「disposal」となり、例えば上記の「古新聞を処分する」を英語にすると「dispose of old newspaper」となります。
処理の意味
処理とは
処理とは、物事を取りさばいて始末をつけることを意味しています。
処理の読み方
処理の読み方は「しょり」です。誤って「そり」「きょり」などと読まないようにしましょう。
処理の使い方
処理を使った分かりやすい例としては、「彼女は英語の情報処理能力が高い」「知能検査で子どもの処理速度が低いと言われました」「ALPS処理水の海洋放出に関する情報を集めています」「処理中ですので、しばらくお待ちください」などがあります。
その他にも、「パソコンの処理落ちが激しい」「ひと目でわかるようにバッチ処理フロー図を作成しました」「英語で書かれた書類を処理することが苦手です」「処理速度の低さは集団生活で目立ちやすくなります」などがあります。
処理の「処」は物事をしかるべく取りさばくことを表し、「理」はきちんと整えることや物事のすじめを立てることを表す漢字です。処理とは、取りさばいて適切に決まりをつけることを意味し、事件や事務に対して用いられる言葉です。
「処理落ち」の意味
処理を用いた日本語には「処理落ち」があります。処理落ちとは、コンピューターなどの電子機器において、一定間隔で行われるべき処理が行われずに動作が止まったり遅延したりする現象です。ゲームで処理落ちすると、キャラクターがカクカクしたぎごちない動きになったりします。
処理の対義語
処理の対義語・反対語としては、そのまま保ちとどめておくことを意味する「保留」、問題を一時的に未処理のままにしておくことを意味する「棚上げ」などがあります。
処理の類語
処理の類語・類義語としては、その場に応じて物事に始末をつけることを意味する「処置」、事件や問題などをうまく処理することを意味する「解決」、物事をうまく処理することを意味する「料理」、「物事の決着をつけることを意味する「かたを付ける」などがあります。
処分の意味
処分とは
処分とは、取り扱いを決めて物事の決まりをつけること、処理を意味しています。
その他にも、「規則・規約などを破った者に罰を加えること、処罰」「不要なものや余分なものなどを捨てる、売り払う、消滅させる、など適当な方法で始末すること」「公法上の行政処分・強制処分・保護処分など、私法上の処分行為」の意味も持っています。
処分の使い方
「混沌とした問題を事務的に処分する」の文中で使われている処分は「物事の決まりをつけること」の意味で、「違反者を処分する」「検察官は処分保留で被疑者を釈放した」の文中で使われている処分は「罰を加えること」の意味で使われています。
一方、「英語の教科書を処分する」「登記に処分禁止の仮処分が記載されていました」の文中で使われている処分は「不要なものを始末すること」の意味で、「処分権主義は民事訴訟法の基本原則です」などの文中で使われている処分は「公法上および私法上の処分行為」の意味で使われています。
処分とは、上記の例文にあるように複数の意味を持ち、それぞれの意味で用いられているため、文脈により意味を捉える必要があります。処分の「処」は取りさばくことや切り盛りすること、「分」は物事の状態や程度を表します。
「処分保留」の意味
処分を用いた日本語には「処分保留」があります。処分保留とは、刑事手続きが進められていく上で、勾留期限内に十分な証拠が揃わなかった場合、検察官が起訴の可否を保留して被疑者を釈放することです。処分保留で釈放した後にも検察が捜査を続け、その後起訴することもあります。
処分の対義語
処分の対義語・反対語としては、物品を預かって保存・管理することを意味する「保管」、法律で権利や義務を残留・保持することを意味する「留保」などがあります。
処分の類語
処分の類語・類義語としては、物事の締めくくりをつけることを意味する「始末」、不用なものとして捨てることを意味する「廃棄」、物事をとりさばくことを意味する「扱う」、結末をつけることや決着をつけることを意味する「けりを付ける」などがあります。
処理の例文と使い方
この言葉がよく使われる場面としては、取り扱って事の始末をつけること、処置することを表現したい時などが挙げられます。
例文4にある処理と措置はどちらも物事の始末をつけることを意味しますが、二つの言葉の違いは、措置には事態や状況に応じて始末をつけるというニュアンスがある点です。
処分の例文と使い方
この言葉がよく使われる場面としては、取り決めること、罰すること、不要な物などを適宜に始末すること、法律上の行為を表現したい時などが挙げられます。
例文5にある「懲戒処分」とは、組織内において秩序維持のために科せられる制裁や、一定の義務違反を理由として科する制裁を意味します。
処理と処分という言葉は、どちらも「物事の始末をつけること」を表します。どちらの言葉を使うか迷った場合、物に何らかの手を加えることを表現したい時は「処理」を、物を捨てたり手放したりすることを表現したい時は「処分」を使うようにしましょう。