似た意味を持つ「現地」(読み方:げんち)と「現場」(読み方:げんば)の違いを例文を使って分かりやすく解説しているページです。
どっちの言葉を使えば日本語として正しいのか、迷った方はこのページの使い分け方を参考にしてみてください。
「現地」と「現場」という言葉は、どちらも「物事が実際に行われている場所」を意味しているという共通点があり、本来の意味は少し違いますが混同して使われる傾向があります。
現地と現場の違い
現地と現場の違いを分かりやすく言うと、現地とは現在行われている場所や将来行われる場所を表し、現場とは現在行われている場所や過去に行われた場所を表すという違いです。
一つ目の現地を使った分かりやすい例としては、「着陸前に時計を現地時間に合わせる」「現地の人と英語でコミュニケーションする」「海外事業を拡大するため現地法人を設立する」「現地に住み着いて10年になります」「工事の現地調査で調べる項目を書き記す」などがあります。
二つ目の現場を使った分かりやすい例としては、「殺人事件の現場検証が行われています」「現場管理費に大工の給料は含まれません」「現場で取り組むべき熱中症対策をお話します」「工事の現場調査で建物の状態を確認する」「英語教育の現場の声を聞いてください」などがあります。
現地と現場という言葉は、どちらも物事が実際に行われたり存在している場所を表しますが、意味や使い方には違いがあります。
現地とは、ある事が実際に行われている場所、また、ある事が行われる場所を意味します。「工事の現地調査」とは、作業に入る前に現地がどのような状況かを調べる目的で行われるものです。また、「現地に住み着く」のような使い方で、現在いる土地の意味もある言葉です。
現場とは、物事が現在行われている場所、また、実際に行われた場所を意味します。「工事の現場調査」とは、作業を行った場所がどのような状態であるかを調査することです。また、「現場の声」のように、物事を実際に行なう場所の意味も持つ言葉です。
つまり、現地とは物事が現在起こっていたり、これから行われる場所に使用され、現場とは物事が現在行われていたり、すでに行われた場所に用いられる言葉です。二つの言葉は似ていますが、意味は異なるので区別して使うようにしましょう。
現地を英語にすると「field」「local」「on-site」となり、例えば上記の「現地時間」を英語にすると「local time」となります。一方、現場を英語にすると「site」「scene」「field」となり、例えば上記の「現場検証」を英語にすると「an inspection of the scene」となります。
現地の意味
現地とは、ある事が実際に行われている、また行われる場所や土地、現場を意味しています。
その他にも、「現在、自分が住んでいる土地」の意味も持っています。
「事前決済ではなく現地決済を選ぶ」「現地調査の結果をレポートにまとめる」「現地現物はトヨタ方式の基本姿勢です」「英語が通じない現地で苦労しました」「現地配送業者が受け取りました」などの文中で使われている現地は、「ある事が実際に行われる場所や土地」の意味で使われています。
一方、「現地に永住するつもりはありません」「終の棲家に現地はふさわしいだろうか」「現地の友達と離れたくありません」などの文中で使われている現地は、「現在、自分が住んでいる土地」の意味で使われています。
現地とは、上記の例文にあるように二つの意味を持ち、それぞれの意味で用いられているため、文脈により意味を捉える必要があります。現地の「現」は訓読みで「あらわれる」と読み、目の当たりや実際を表し、「地」は訓読みで「つち」と読み、一定の土地や場所を表します。
現地を用いた日本語には「現地法人」があります。現地法人とは、日本企業が海外に設立する子会社のことであり、独立した法人として運営されます。現地の法律に基づいて設立し、登記や税務処理などもすべて現地で行われます。
現地の対義語・反対語としては、別の土地を意味する「他所」、別の場所を意味する「よそ」などがあります。
現地の類語・類義語としては、物事が実際に存在したり行なわれたりしている場所を意味する「実地」、自分が現にいるこの土地を意味する「当地」、この場所やこの土地を意味する「当所」などがあります。
現場の意味
現場とは、事件や事故が実際に起こった場所、現にそれが起こっている場所を意味しています。
その他にも、「実際に作業が行われている場所、また、企業などで管理部門に対する実務部門」の意味も持っています。
「交通事故の現場を目撃する」「警察官は事件現場へ向かいました」「血の海となった犯行現場を検証する」「現場付近で容疑者が捕まりました」などの文中で使われている現場は、「事件や事故が実際に起こった場所」の意味で使われています。
一方、「建設現場に野良猫がたくさんいました」「付き合っている彼氏は現場監督をしています」「現場代理人の常駐義務が緩和されました」などの文中で使われている現場は、「実際に作業が行われている場所」の意味で使われています。
現場の読み方は二通りあり、「げんば」の他に「げんじょう」がありますが、「げんじょう」と読む場合には「実際に作業が行われている場所」の意味を持ちません。
現場とは、上記の例文にあるように複数の意味を持ち、それぞれの意味で用いられているため、文脈により意味を判断する必要があります。現場の「場」は、ある事が起こり進行している所や局面を表す漢字です。
現場を用いた日本語には「現場代理人」があります。現場代理人とは、工事請負契約の当事者の代理として工事現場の責任者を務める立場の人を意味します。現場代理人は工事現場の取締りや請負代金額のやり取りを担い、工事における技術上の管理を行う「現場監督」よりも上の立場になります。
現場の対義語・反対語としては、机の上や現実との間に乖離のあるものを意味する「机上」などがあります。
現場の類語・類義語としては、工事が行われている当の場所を意味する「工事現場」、土木や建築などの作業を行なっているところを意味する「工事場」、作業が行われている個々の現場を意味する「作業場」などがあります。
現地の例文
この言葉がよく使われる場面としては、現在ある事が行なわれている土地、実際にある事が行なわれる場所、現在いる土地を表現したい時などが挙げられます。
例文1にある「現地集合」とは、あらかじめどこかで待ち合わせせずに、それぞれが目的地に向かい、そこで集合することを意味します。
現場の例文
この言葉がよく使われる場面としては、物事が実際に起こったその場面や場所、建築や制作などの作業をしている場所、物事を実際に行なう場所を表現したい時などが挙げられます。
例文5にあるオタク用語の「現場」とは、自分の推しのライブ会場や舞台、イベントが行われる会場などを指す言葉です。
現地と現場という言葉は、どちらも「ある事が実際に行われている場所」を表します。どちらの言葉を使うか迷った場合、現在行われている場所や将来行われる場所を表現したい時は「現地」を、現在行われている場所や過去に行われた場所を表現したい時は「現場」を使うようにしましょう。