似た意味を持つ「厳重」(読み方:げんじゅう)と「厳格」(読み方:げんかく)の違いを例文を使って分かりやすく解説しているページです。
どっちの言葉を使えば日本語として正しいのか、迷った方はこのページの使い分け方を参考にしてみてください。
「厳重」と「厳格」という言葉は、どちらも「非常に厳しいさま」を意味しているという共通点があり、本来の意味は少し違いますが混同して使われる傾向があります。
厳重と厳格の違い
厳重と厳格の意味の違い
厳重と厳格の違いを分かりやすく言うと、厳重とはいい加減なことが許されないさま、厳格とは不正や怠慢を許さないさまという違いです。
厳重と厳格の使い方の違い
一つ目の厳重を使った分かりやすい例としては、「厳重に注意するとともに猛省を促す」「熱中症に厳重な警戒が必要です」「国土交通省が厳重注意の行政指導を行う」「葬儀は故人を見送る厳重な儀式です」などがあります。
二つ目の厳格を使った分かりやすい例としては、「食品の添加物表示が厳格化されました」「ワクチンには厳格な品質管理が求められます」「知的財産権の侵害に対する処罰を厳格化する」「英語の先生は厳格な性格なので苦手です」などがあります。
厳重と厳格の使い分け方
厳重と厳格という言葉は、どちらも大雑把であることを許容せず非常に厳しい様子を表しますが、意味や使い方には違いがあります。
厳重とは、「厳重に注意する」のような使い方で、いい加減なことが許されない厳しい様子を意味します。行政指導の厳重注意とは、改善措置をとるべきことを指導するものです。また、「厳重な儀式」のような使い方で、おごそかな様子も意味する言葉です。
厳格とは、不正や怠慢を許さない厳しい態度を意味します。「処罰を厳格化する」のように規律に厳しく不正を見逃さないさまや、「厳格な性格」のようにモラルやしつけに厳しく怠慢を受け入れないさまを表現します。
つまり、厳重とはいい加減なことが許されないさまを表現し、厳格とは不正や怠慢を許さない態度を表す言葉です。二つの言葉は似ていますが、意味は異なるので区別して使うようにしましょう。
厳重と厳格の英語表記の違い
厳重も厳格も英語にすると「strict」「severe」となり、例えば上記の「厳重に注意する」を英語にすると「reprimand somebody severely」となります。
厳重の意味
厳重とは
厳重とは、いい加減にせず、厳しい態度で物事に対処するさまを意味しています。
その他にも、「おごそかなさま、いかめしいさま、霊験あらたかなさま」の意味も持っています。
厳重の読み方
厳重の読み方は「げんじゅう」です。誤って「げんちょう」「ごんじゅう」などと読まないようにしましょう。
厳重の使い方
「個人データを厳重に取り扱う」「会社はモンスター社員に厳重注意を与えた」「書面で厳重注意を通知した」などの文中で使われている厳重は、「厳しい態度で物事に対処するさま」の意味で使われています。
一方、「結婚の儀が厳重に執り行なわれた」「神官が厳重に祝詞を奏上する」「厳重な雰囲気で行列が進んでいく」などの文中で使われている厳重は、「おごそかなさま、霊験あらたかなさま」の意味で使われています。
厳重とは、上記の例文にあるように二つの意味を持ち、それぞれの意味で用いられているため、文脈により意味を捉える必要があります。厳重の「厳」は少しのゆるみも許さないさまや物事の状態が緊張しているさま、「重」は軽々しくしないことを表す漢字です。
表現方法は「厳重注意」
厳重を用いた日本語には「厳重注意」があります。厳重注意とは、ビジネスシーンにおいて、懲戒処分を科すまでに至らない程度の問題行動があった労働者に対して行われる注意を意味します。厳重注意は懲戒処分の前段階という位置付けで、労働者に対して具体的な不利益が生じることはありません。
厳重の対義語
厳重の対義語・反対語としては、やり方などがいい加減であることを意味する「適当」、いいかげんに物事をするさまを意味する「ぞんざい」などがあります。
厳重の類語
厳重の類語・類義語としては、細かいところまできびしく目を行き届くさまを意味する「厳密」、思いやりに欠け非常にきびしいことを意味する「厳酷」、手心を加えず非常に厳しいさまを意味する「手厳しい」などがあります。
厳格の意味
厳格とは
厳格とは、規律や道徳に厳しく、不正や怠慢を許さないことを意味しています。
厳格の読み方
厳格の読み方は「げんかく」です。同じ読み方をする熟語に「幻覚」や「原核」がありますが、意味が異なるので書き間違いに注意しましょう。
厳格の使い方
厳格を使った分かりやすい例としては、「与党の政治資金を厳格にチェックする」「本人確認を厳格に行う」「移民規制の厳格化が問題になっています」「昨今の人事評価は厳格化傾向にあります」などがあります。
その他にも、「外国人のビザ取得要件を厳格化する」「厳格な合理性の基準を適用する」「情報管理は厳格にすべきです」「安全に係る審査をより厳格に行う」「自由な社風なので厳格な雰囲気は全くありません」などがあります。
厳格の「厳」は訓読みで「きびしい」と読み、少しのゆるみも許さないさまを表します。がちっとはめこまれた一定の枠を表す「格」と結び付き、厳格とは、規律や道徳などに厳しく、少しの不正や怠慢も許容しないさまを意味します。
表現方法は「厳格化傾向」
厳格を用いた日本語には「厳格化傾向」があります。厳格化傾向とは、心理学用語の一つであり、特に、人事評価時に評価者が陥りやすいエラーを指す言葉です。部下を評価する際に必要以上に評価が厳しくなる傾向であり、人事評価者が留意する事項の一つとなっています。
厳格の対義語
厳格の対義語・反対語としては、他の罪や欠点などをきびしく責めないことを意味する「寛容」、思いやりがあってむやみに人を責めないことを意味する「寛大」などがあります。
厳格の類語
厳格の類語・類義語としては、規準を厳格に守って公正に行うことを意味する「厳正」、冷静でおごそかなさまを意味する「冷厳」、非常に厳しいさまや過酷なさまを意味する「シビア」などがあります。
厳重の例文
この言葉がよく使われる場面としては、厳しく抜かりのないさま、おごそかなこと、いかめしい様子を表現したい時などが挙げられます。
例文5にある「厳重警戒」とは、気象庁が発表する熱中症警戒アラートにおいて、暑さ指数28以上31未満の警戒レベルを指します。
厳格の例文
この言葉がよく使われる場面としては、不正やごまかしや怠慢を少しも許さないという厳しい態度や様子を表現したい時などが挙げられます。
上記の例文にあるように、厳格の慣用的な言い回しには「厳格な性格」「厳格に管理する」「厳格な雰囲気」などがあります。「厳格な性格」とは、ルールやマナーをしっかりと守る非常に真面目な性格を言います。
厳重と厳格という言葉は、どちらも「非常に厳しいさま」を表します。どちらの言葉を使うか迷った場合、いい加減なことが許されないさまを表現したい時は「厳重」を、不正や怠慢を許さないさまを表現したい時は「厳格」を使うようにしましょう。