同じ「ふびん」という読み方の「不便」と「不憫」の違いを例文を使って分かりやすく解説しているページです。
どっちの言葉を使えば日本語として正しいのか、迷った方はこのページの使い分け方を参考にしてみてください。
「不便」と「不憫」という言葉は同音の言葉ですが、それぞれの漢字によって使い方には少し違いがあります。
不便と不憫の違い
不便と不憫の意味の違い
不便と不憫の違いを分かりやすく言うと、不便とは「ふべん」と読んで都合が悪いことを表す言葉、不憫とは「ぶびん」と読んで気の毒に思うことを表す言葉という違いです。
不便と不憫の使い方の違い
一つ目の不便を使った分かりやすい例としては、「普段の買い物で不便に感じたことはありません」「慣れない海外での生活は不便です」「ご不便をおかけして申し訳ありません」「不便だからこそ得られる良さもあるでしょう」などがあります。
二つ目の不憫を使った分かりやすい例としては、「親に邪険にされいる子どもを不憫に思う」「不憫な子をみると守ってあげたくなります」「主人公が不憫すぎるアニメにハマっています」「天涯孤独になった彼が不憫でならない」などがあります。
不便と不憫の使い分け方
不便と不憫という言葉は、どちらも「ふびん」と読んで「かわいそうなこと、あわれむべきこと」を意味する言葉ですが、実際の使われ方には違いがあります。
もともとは「不便」という言葉が漢語として伝わり、「ふべん」と読んで「都合が悪いこと、便利でないこと」を表しました。この「不便」は、時代の変化とともに「ふびん」とも読まれ、いつしか「かわいそうなこと、気の毒に思うこと」の意味でも使われるようになったのです。
つまり、現代において「不便」は「ふべん」と読み、都合が悪いことの意味で使われることが多くなっています。一方の「不憫」は「ふびん」と読み、かわいそうなことという意味で使用されている言葉です。
不便と不憫の英語表記の違い
不便を英語にすると「inconvenience」「inexpediency」「unhandiness」となり、例えば上記の「不便に感じる」を英語にすると「feel inconvenient」となります。
一方、不憫を英語にすると「pitiable」「pathetic」「miserable」となり、例えば上記の「不憫に思う」を英語にすると「take pity」となります。
不便の意味
不便とは
不便とは、都合の悪いこと、また、そのさまを意味しています。
その他にも、「かわいそうなこと、あわれむべきこと」「かわいがること、そのさま」の意味も持っています。
不便の読み方
不便の読み方は「ふびん」の他に「ふべん」とも読み、近代以降は「ふべん」と読まれることが一般的になっています。
不便の使い方
「母は交通が不便な田舎に住んでいます」「不便をかけることへの理解を求める」「あえて不便の価値を見つめ直すべきです」「不便益という発想をご存知でしょうか」などの文中で使われている不便は「都合の悪いこと」の意味で使われています。
一方、「やせ細っている野良猫が不便でならない」「我が子に不便な思いをさせたくありません」の文中で使われている不便は「かわいそうなこと」の意味で、「彼は子どもを異常なほどに不便がる」の文中で使われている不便は「かわいがること」の意味で使われています。
不便とは、上記の例文にあるように複数の意味を持ちますが、基本的には「都合の悪いこと、都合の悪いさま」の意味で用いられています。「かわいそうなこと、あわれむべきこと」の意味で用いる時は、当て字の「不憫」「不愍」を使用することが一般的です。
「不便益」の意味
不便を用いた日本語には、「不便益」(読み方:ふべんえき)があります。「不便益」とは、不便なことによるメリットを意味します。不便だからこそ自分で工夫したり手間をかけたりすることによる効用を指す言葉であり、英語で「benefits of inconvenience」と表現します。
不便の対義語
不便の対義語・反対語としては、目的を果たすのに都合のよいことを意味する「便利」などがあります。
不便の類語
不便の類語・類義語としては、都合の悪いことや不届きであることを意味する「不都合」、思うようにならないことを意味する「不自由」、思い通りにならないことを意味する「不如意」、思うようにならないことや自由にできないことを意味する「ままならない」などがあります。
不憫の意味
不憫とは
不憫とは、かわいそうなこと、あわれむべきことを意味しています。
不憫の漢字表記
不憫は「不愍」とも書きますが、一般的には「不憫」と表記されています。
不憫の使い方
不憫を使った分かりやすい例としては、「我が子に不憫な思いをさせたくありません」「闇バイトに引っかかった友人が不憫でならない」「生徒から嫌がらせを受けている英語の先生が不憫です」などがあります。
その他にも、「不憫な人を見ると胸が締め付けられます」「貧しいからって不憫に思うのは失礼だと思います」「私は不憫キャラとしていじられています」「不憫かわいいはZ世代のトレンドになっている」などがあります。
不憫の「憫」は訓読みで「あわれむ」「うれえる」と読み、かわいそうに思うことや気の毒に思うことを表す漢字です。不憫は「不便」の当て字ですが、現在では「かわいそうなこと」の意味では「不便」より「不憫」「不愍」と書き表すようになっています。
表現方法は「不憫でならない」
上記の例文にある「不憫でならない」とは、かわいそうな気持ちや気の毒な気持ちが抑えられないさまを表現する言い回しです。「ならない」は、動詞の「なる」の未然形と打消しの助動詞「ない」を合わせた言葉で、その事について抑えようのない気持ちを表します。
「不憫なお願い」は誤用
不憫を用いた誤った表現には「不憫なお願い」があります。正しくは「不躾なお願い」であり、相手に対して失礼なお願いや無理なお願いを意味します。
不憫の対義語
不憫の対義語・反対語としては、自分よりすぐれている人をうらやみ妬むことを意味する「嫉妬」などがあります。
不憫の類語
不憫の類語・類義語としては、他人の不幸や苦痛などに同情して心を痛めることを意味する「気の毒」、同情の気持ちが起こるさまを意味する「可哀相」(読み方:かわいそう)、同情することや慈悲の心をかけることを意味する「哀れむ」などがあります。
不便の例文
この言葉がよく使われる場面としては、都合の悪いさま、かわいそうなさま、かわいいと思うことを表現したい時などが挙げられます。
例文1から例文3にある不便は「ふべん」と読み、都合の悪いことや不都合であるさまを表します。「不便をかける」とは、相手にとって都合の悪いことを負わせることを意味する言い回しです。例文4や例文5の不便は「ふびん」と読み、かわいそうなさま、かわいいと思うことを意味します。
不憫の例文
この言葉がよく使われる場面としては、かわいそうなこと、気の毒なさまを表現したい時などが挙げられます。
例文4にある「不憫キャラ」とは、かわいそうな様子や哀れなさまを特徴とするキャラクターのことです。
不便と不憫という言葉は、どちらも「ふびん」と読んで「かわいそうなこと」を表します。ただし、現代において「不便」はもっぱら「ふべん」と読んで、「都合の悪いこと、便利でないさま」を意味することを覚えておきましょう。