似た意味を持つ「搾取」(読み方:さくしゅ)と「詐取」(読み方:さしゅ)の違いを例文を使って分かりやすく解説しているページです。
どっちの言葉を使えば日本語として正しいのか、迷った方はこのページの使い分け方を参考にしてみてください。
「搾取」と「詐取」という言葉は、どちらも「他人のものを奪い取ること」を意味しているという共通点があり、本来の意味は少し違いますが混同して使われる傾向があります。
搾取と詐取の違い
搾取と詐取の意味の違い
搾取と詐取の違いを分かりやすく言うと、搾取とは不当に利益を搾り取ること、詐取とは金品をだまし取ることという違いです。
搾取と詐取の使い方の違い
一つ目の搾取を使った分かりやすい例としては、「途上国で労働者の搾取が社会問題になっている」「性搾取ビジネスの背景には貧困があります」「恋愛で搾取される側の気持ちがわかりますか」「搾取した牛の乳を加熱殺菌処理する」などがあります。
二つ目の詐取を使った分かりやすい例としては、「ネットを通じて金銭を詐取する行為に注意してください」「偽サイト運営で現金詐取をたくらむ」「募集人が保険料を詐取していた事実が判明した」などがあります。
搾取と詐取の使い分け方
搾取と詐取という言葉は、どちらも他人のものを不当に自分のものにすることを表しますが、意味や使い方には違いがあります。
搾取とは、「搾取した牛の乳」のような使い方で、動物の乳や果実の汁などを搾り取ることを意味します。一般的には、「労働者の搾取」のような使い方で、資本家が労働者の働きに対し、それに価するだけの支払いをせず、利益をわがものにすることの意味で使用される言葉です。
詐取とは、金銭や物品をだまして取ることを意味します。単に何かを奪い取ることではなく、嘘をついたり言いくるめたり人をあざむいて金品をだまし取ることです。詐取は犯罪であり、刑法第246条で禁じられています。
つまり、搾取とは不当に利益を搾り取ることの意味で使われる言葉であり、詐取とは金品をだまし取ることを意味します。二つの言葉は似ていますが、意味は異なるので区別して使うようにしましょう。
搾取と詐取の英語表記の違い
搾取を英語にすると「expression」「exploitation」となり、例えば上記の「労働者の搾取」を英語にすると「worker exploitation」となります。
一方、詐取を英語にすると「fraud」「defrauding」となり、例えば上記の「金銭を詐取する」を英語にすると「get money by fraud」となります。
搾取の意味
搾取とは
搾取とは、乳などを絞り取ることを意味しています。
その他にも、「階級社会で、生産手段の所有者が生産手段を持たない直接生産者を必要労働時間以上に働かせ、そこから発生する剰余労働の生産物を無償で取得すること」の意味も持っています。
搾取の使い方
「搾取所で牡牛を飼育してはいけません」「スプレー式のレモン汁搾取器がとても便利です」「この化粧品の成分は種子から搾取した油です」などの文中で使われている搾取は、「乳などを絞り取ること」の意味で使われています。
一方、「搾取する人の末路は天涯孤独です」「英語圏の国々にも搾取工場はあります」「搾取は社会の本質だと思いませんか」などの文中で使われている搾取は、「階級社会で、剰余労働の生産物を無償で取得すること」の意味で使われています。
搾取の読み方
搾取の読み方は「さくしゅ」です。誤って「さくしゅう」「ししゅ」などと読まないようにしましょう。
搾取とは、上記の例文にあるように二つの意味を持ち、それぞれの意味で使用されているため、文脈により意味を捉える必要があります。搾取の「搾」は訓読みで「しぼる」と読み、強くねじって水分を出すこと、「取」は訓読みで「取る」と読み、手に入れることや自分のものにすることを表します。
表現方法は「中間搾取」
搾取を用いた日本語には「中間搾取」があります。中間搾取とは、 資本家と労働者の中間で労働者の賃金の一部を横取りすること意味します。俗に「ピンはね」と呼ばれ、特に、建設業界や派遣業界で問題視されています。
搾取の対義語
搾取の対義語・反対語としては、生産に関与した者の間に所得が分けられることを意味する「分配」などがあります。
搾取の類語
搾取の類語・類義語としては、牛や山羊などの乳をしぼることを意味する「搾乳」、自分の利益のために人やものを利用することを意味する「食い物」、催促し徴収することや強制的に取ることを意味する「取り立て」などがあります。
詐取の意味
詐取とは
詐取とは、金品をだまして取ることを意味しています。
詐取の使い方
詐取を使った分かりやすい例としては、「90代女性から50万円を詐取した疑いがある」「法律家を装って金銭を詐取しようとした」「真面目そうな英語教師が生徒の金を詐取した疑いで逮捕されました」などがあります。
その他にも、「振り込め詐欺の詐取金は55億円にのぼる」「人を騙してお金を詐取することは刑法で禁じられています」「キャッシュカードを窃取して金を詐取する」「手形を詐取する事件がありました」などがあります。
詐取の「詐」は訓読みで「いつわる」と読み、本当でないことを本当であると思い込ませることや、言葉巧みに相手を言いくるめることを表す漢字です。獲物や作物を手に入れることを表す「取」と結びつき、詐取とは、金品などをだまして取ることを意味します。
表現方法は「詐取金」
詐取を用いた日本語には「詐取金」があります。詐取金とは、だまし取った金を意味し、特に、詐欺により他人から奪った金を指すことが多い言葉です。
「詐取選択」は誤用
詐取を用いた誤った表現には「詐取選択」があります。正しくは「取捨選択」であり、必要なものを選んで残し不必要なものを捨て去ることです。
詐取の対義語
詐取の対義語・反対語としては、物事をもとの形や状態などに戻すことを意味する「還元」などがあります。
詐取の類語
詐取の類語・類義語としては、取り次いで人に渡すべき金品から一部を取って自分のものとすることを意味する「ピンはね」、他人をだまして金品を奪ったり損害を与えたりすることを意味する「詐欺」、おどしたりだましたりして奪い取ることを意味する「巻き上げ」などがあります。
搾取の例文
この言葉がよく使われる場面としては、乳や草木の汁などを絞り取ること、階級社会で生産手段の所有者が直接生産者をその生活維持に必要な労働時間以上に働かせ労働生産物や成果を剰余価値として取得すること、乏しいものを無理にとることを表現したい時などが挙げられます。
例文5にある「やりがい搾取」とは、労働者の「やりがい」を利用して、適切な報酬を与えずに長時間労働や過酷な条件で働かせることを言います。
詐取の例文
この言葉がよく使われる場面としては、金品をだまし取ることを表現したい時などが挙げられます。
例文3にある「人を欺いて財産を詐取する犯罪」は詐欺罪と言い、刑法第246条に規定されている犯罪です。
搾取と詐取という言葉は、どちらも「他人のものを奪い取ること」を表します。どちらの言葉を使うか迷った場合、不当に利益を搾り取ることを表現したい時は「搾取」を、だまして金品を取ることを表現したい時は「詐取」を使うようにしましょう。