似た意味を持つ「控訴」(読み方:こうそ)と「上告」(読み方:じょうこく)の違いを例文を使って分かりやすく解説しているページです。
どっちの言葉を使えば日本語として正しいのか、迷った方はこのページの使い分け方を参考にしてみてください。
「控訴」と「上告」という言葉は、どちらも「判決に対する不服申立て」を意味しているという共通点があり、本来の意味は少し違いますが混同して使われる傾向があります。
控訴と上告の違い
控訴と上告の違いを分かりやすく言うと、控訴とは一審判決に対する不服申立て、上告とは二審判決に対する不服申立てという違いです。
一つ目の控訴を使った分かりやすい例としては、「和解案を受け入れて控訴を取り下げることにした」「控訴の際には控訴提起手数料を支払います」「高裁は被告の控訴を棄却しました」「特許侵害訴訟にかかわる控訴状を受理する」などがあります。
二つ目の上告を使った分かりやすい例としては、「判決ではなく決定で上告を棄却する」「上告するための弁護士費用を捻出する」「えん罪事件の判決について国は上告しない方針を固めた」「上告を断念した理由についてはノーコメントです」などがあります。
控訴と上告という言葉は、どちらも裁判所の決定に対して不服を申し立てる手続きを表しますが、意味や使い方には違いがあります。
控訴とは、第一審判決に対する不服の申立てを意味します。民事訴訟では、第一審が簡易裁判所のときは地方裁判所、第一審が地方裁判所のときは高等裁判所で行われますが、刑事訴訟では常に高等裁判所で行われます。控訴審では、原判決の当否を事実点や法律点にわたって再審査されます。
上告とは、控訴審の判決に対する不服申立てを意味し、第二審の判決に不服がある場合に、第三審を担当する裁判所になされる上訴を表します。憲法違反など一定の上告理由がある場合に限り認められるものです。
つまり、控訴とは一審判決に対する上訴であり、上告とは二審判決に対する上訴です。また、控訴は幅広い理由で認められますが、上告は憲法解釈の誤りなど限られた理由でのみ認められることも、二つの言葉の明確な違いになります。
控訴を英語にすると「appeal」となり、例えば上記の「控訴を取り下げる」を英語にすると「withdraw an appeal」となります。一方、上告を英語にすると「final appeal」となり、例えば上記の「上告を棄却する」を英語にすると「reject a final appeal」となります。
控訴の意味
控訴とは、上訴の一つ、第一審判決に不服のある場合に上級裁判所に再審査を求めることを意味しています。
控訴を使った分かりやすい例としては、「判決内容が受け入れられないので控訴します」「控訴状は第一審に提出するものです」「控訴審では事実認定の見直しもあり得るだろう」「控訴期間内に書類を揃えてください」などがあります。
その他にも、「控訴裁判所に訴訟委任状を提出する」「控訴の期限は明日に迫っています」「控訴状の印紙額を計算するサイトがあります」「控訴状の記載例をネットで探しています」「控訴理由書の書き方についてアドバイスをもらう」などがあります。
控訴の読み方は「こうそ」です。同じ読み方をする熟語に「公訴」や「酵素」がありますが、意味が異なるため書き間違いに注意しましょう。
控訴の「控」は訓読みで「ひかえる」と読み、後の必要や不時の用にあてるために準備することを表し、「訴」は訓読みで「うったえる」と読み、裁きを求めるため上に申し出ることを表します。控訴とは、第一審の判決に不服のある者が、その判決の当否の審査を上級の裁判所に対して求めることです。
上記例文にある「控訴期間」とは、控訴の提起または申し立てのできる期間を意味します。民事訴訟では判決の送達の日から14日以内、刑事訴訟では判決宣告の日から14日以内とされています。
控訴の対義語・反対語としては、上訴による不服主張を理由がないとして排斥することを意味する「棄却」などがあります。
控訴の類語・類義語としては、訴え出ることや裁判を申し立てることを意味する「訴訟」、刑事訴訟で検察官が裁判所に公訴を提起することを意味する「起訴」、下級裁判所の決定または命令に対して上級裁判所に不服を申し立てることを意味する「抗告」などがあります。
上告の意味
上告とは、訴訟法上、控訴審の判決に対し憲法解釈の誤りなどを理由に、その変更を求めるための上訴を意味しています。
上告を使った分かりやすい例としては、「判決に納得できないので上告します」「上告受理申立て理由を簡潔に述べる」「上告受理の申立てをするには印紙代がかかります」「民事における上告審の流れについて説明を受けました」などがあります。
その他にも、「上告棄却決定に対して異議申し立てをする」「上告人の不服申立内容が看過された」「上告期間の起算日を確認する」「上告状の書式をダウンロードしました」「上告理由書の提出期限を教えてください」などがあります。
上告の「上」は上の人や機関に申し出ることや差し出すことを表し、「告」は善悪や正邪の判定を求めて申し出ることを表す漢字です。上告とは、未確定の判決について控訴審以上の審級の裁判所になされる上訴を意味します。
上告を用いた日本語には「上告審」があります。上告審とは、上告事件を審理する裁判所の審級を意味します。「法律審」とも呼ばれ、原則として憲法違反や判例違反に関する審理のみを行うため、法廷での裁判は開かれず書面審理により行われます。
上告の対義語・反対語としては、訴訟上の申し立てや申請などを取り上げないで排斥することを意味する「却下」などがあります。
上告の類語・類義語としては、裁判所などに訴え出ることや訴訟を起こすことを意味する「提訴」、民事訴訟の係属中に被告から原告に対して提起する訴えを意味する「反訴」、行政処分を違法または不当であるとする者が再審査を求める行為を意味する「不服申立」などがあります。
控訴の例文
この言葉がよく使われる場面としては、第一審判決に対して上級裁判所になされる上訴を表現したい時などが挙げられます。
例文3にある「控訴状」とは、第一審判決に対する不服申立てをする場合に、裁判所へ提出する書面のことです。
上告の例文
この言葉がよく使われる場面としては、未確定の判決について,控訴審よりも上の審級の裁判所になされる上訴を表現したい時などが挙げられます。
例文2にある「上告人」とは、上告をする人のことであり、判決に不服があって、さらに上の裁判所へ不服申立てをする人を指します。
控訴と上告という言葉は、どちらも「上訴の一つ」を表します。どちらの言葉を使うか迷った場合、一審判決に対する不服申立てを表現したい時は「控訴」を、二審判決に対する不服申立てを表現したい時は「上告」を使うようにしましょう。