似た意味を持つ「一途」(読み方:いちず)と「一筋」(読み方:ひとすじ)の違いを例文を使って分かりやすく解説しているページです。
どっちの言葉を使えば日本語として正しいのか、迷った方はこのページの使い分け方を参考にしてみてください。
「一途」と「一筋」という言葉は、どちらも「一つのことに打ち込むこと」を意味しているという共通点があり、本来の意味は少し違いますが混同して使われる傾向があります。
一途と一筋の違い
一途と一筋の意味の違い
一途と一筋の違いを分かりやすく言うと、一途とは一つのことに打ち込む様子、一筋とは一つのことに打ち込む行為という違いです。
一途と一筋の使い方の違い
一つ目の一途を使った分かりやすい例としては、「彼からの一途な愛を重たく感じる」「一途な男性の特徴を教えましょう」「一途な人ほど報われないって本当ですか」「勉強や部活に一途に打ち込む」などがあります。
二つ目の一筋を使った分かりやすい例としては、「父はずっと仕事一筋の生活をしています」「彼はチャラそうに見えますが実は彼女一筋です」「夜空を尾を引きながら横切る一筋の光が見えた」などがあります。
一途と一筋の使い分け方
一途と一筋という言葉は、どちらも気持ちを他に向けずに一つのことに集中するさまを表しますが、意味や使い方には違いがあります。
一途とは、ただ一つのことに打ち込んで他を顧みないさまを意味し、ひたむきな様子を表します。「一途な愛」とは、他の異性に目を向けず、特定の相手一人をひたむきに愛し続けることを表現しています。また、「一途な人」のような使い方で、人の性格も表す言葉です。
一筋とは、他のことに気を取られず一つの物事に集中していることを意味し、ひたすらに打ち込む行動を表現する言葉です。「仕事一筋」とは、仕事に対して献身的に打ち込んでいる行動を表し、「彼女一筋」はひたむきに彼女を愛し続ける行為を表します。
つまり、一途とは一つのことに打ち込む様子を表し、一筋とは一つのことに打ち込む行為を表す言葉です。二つの言葉は似ていますが、意味は異なるので区別して使うようにしましょう。
一途と一筋の英語表記の違い
一途を英語にすると「steadfast」「devoted」「single-minded」となり、例えば上記の「一途な愛」を英語にすると「steadfast love」となります。
一方、一筋を英語にすると「straight line」「devoted to」「earnest」となり、例えば上記の「あなた一筋」を英語にすると「be devoted to one’s work」となります。
一途の意味
一途とは
一途とは、他を考えないで一つのことに打ち込むこと、ひたすら、ひたむきを意味しています。
その他にも、「一つの方法、特に仏語としては、悟りを求める一つの方法」の意味も持っています。
一途の使い方
「恋愛に一途な人には共通する特徴があります」「一途な女の子は面倒です」「一途にこの人だけと思う」などの文中で使われている一途は、「他を考えないで一つのことに打ち込むさま」の意味で使われています。
一方、「相談してみるのも一途である」「一途として試す価値はあるだろう」「問題を回避する一途しか見つかっていない」「これは一途であり全てではありません」などの文中で使われている一途は、「一つの方法」の意味で使われています。
一途の読み方
一途の読み方は「いちず」の他に「いっと」とも読みます。「いっと」と読むと、「ただ一つの方向」という意味に変わるので注意してください。
一途とは、上記の例文にあるように二つの意味を持ちますが、一般的には「他を考えないで一つのことに打ち込むこと、ひたむき」の意味で用いられています。一途の「一」は他をまじえずそれ一つだけであるさま、「途」は道筋や手段を表す漢字です。
一途の語源
一途という言葉の語源は、仏教に由来します。仏教用語で、一途は「悟りをひらく唯一の方法」を意味しました。そこから「一つの物事に熱中するさま」「他のことを顧みないで、一つの方針または事柄に向かってゆくこと」を表すようになりました。
一途の対義語
一途の対義語・反対語としては、一つのことに集中できず心が変わりやすいことを意味する「浮気」などがあります。
一途の類語
一途の類語・類義語としては、心を一つの事に集中することを意味する「一心」、わき目もふらずに事に集中することを意味する「一直線」、わき目もふらず心を一つのことだけに注ぐことを意味する「一意専心」などがあります。
一筋の意味
一筋とは
一筋とは、細長い物の一本、一条を意味しています。
その他にも、「ただ一つのことに心を傾けるさま」の意味も持っています。
一筋の使い方
「暗闇に一筋の光が差し込んだ」「こらえきれず一筋の涙がこぼれた」「彼は一筋縄ではいかない人です」「一筋縄でない事情があります」などの文中で使われている一筋は、「細長い物の一本、一条」の意味で使われています。
一方、「部長は家庭を顧みない仕事一筋人間です」「留学のために英語一筋で頑張ってきました」「部活に一筋気で取り組んでいる」「彼氏一筋で恋愛一辺倒になってしまう」などの文中で使われている一筋は、「ただ一つのことに心を傾けるさま」の意味で使われています。
一筋とは、上記の例文にあるように二つの意味を持ち、それぞれの意味で用いられているため、文脈により意味を捉える必要があります。一筋の「筋」は細長い筋線維の束でできた肉や、細長い線状のものを表す漢字です。
表現方法は「一筋縄ではいかない」
一筋を用いた言い回しには「一筋縄ではいかない」があります。「一筋縄ではいかない」とは、人並みのやり方では思うままにできないことを意味します。普通のやり方では処理できない困難な問題や状況に使用される言葉です。
一筋の対義語
一筋の対義語・反対語としては、興味の対象をたやすく別のものに向けることを意味する「移り気」などがあります。
一筋の類語
一筋の類語・類義語としては、そのことだけに熱心になることを意味する「専念」、特定の対象だけに心を傾けて他は顧みないことを意味する「一辺倒」、心を一つの事に集中して他の事に気をとられないことを意味する「一心不乱」などがあります。
一途の例文
この言葉がよく使われる場面としては、それしかないと思われる一つの方針や方法、一つの方針または事柄に向かってゆくことを表現したい時などが挙げられます。
例文5にある「念仏一途」とは、ひたすら「南無阿弥陀仏」と念仏を唱え続けることを意味します。極楽往生を願う人々の間で広まった考え方です。
一筋の例文
この言葉がよく使われる場面としては、糸や竹などのような細く長いものの一本、一つに集中するさまを表現したい時などが挙げられます。
例文1にある「一筋の涙」とは、涙で濡れた跡が一本の筋に見える様子を表しています。
一途と一筋という言葉は、どちらも「一つのことに打ち込むこと」を表します。どちらの言葉を使うか迷った場合、一つのことに打ち込む様子を表現したい時は「一途」を、一つのことに打ち込む行為を表現したい時は「一筋」を使うようにしましょう。