似た意味を持つ「麾下」(読み方:きか)と「隷下」(読み方:れいか)の違いを例文を使って分かりやすく解説しているページです。
どっちの言葉を使えば日本語として正しいのか、迷った方はこのページの使い分け方を参考にしてみてください。
「麾下」と「隷下」という言葉は、どちらも「ある指揮下にあること」を意味しているという共通点があり、本来の意味は少し違いますが混同して使われる傾向があります。
麾下と隷下の違い
麾下と隷下の意味の違い
麾下と隷下の違いを分かりやすく言うと、麾下とは将軍やある人の指揮下にあることを表す時に使われ、隷下とは組織に従属することを表す時に使われるという違いです。
麾下と隷下の使い方の違い
一つ目の麾下を使った分かりやすい例としては、「その人柄から上杉謙信の麾下となった家臣は多くいました」「将軍の麾下として先陣を務めました」「僧侶は客将として麾下に入ることにした」「私は第3軍麾下の第12軍団に所属しています」などがあります。
二つ目の隷下を使った分かりやすい例としては、「防衛大尽は海上自衛隊の隷下部隊による訓練を視察した」「万が一に備えて隷下の者を集めるように指示した」「第24師団隷下の将兵たちを祀った慰霊碑です」などがあります。
麾下と隷下の使い分け方
麾下と隷下という言葉は、どちらも日常生活ではあまり使われませんが、軍隊を表す時に用いられています。どちらも「ある人の指揮下にあること、ある人の指揮下にある者」を表していますが、厳密な意味や使い方には違いがあります。
麾下とは、「将軍麾下の軍」のような使い方で、もともとは将軍じきじきの家来や旗本を指す言葉です。また、「ある人の指揮下にあること、その者」の意味も持ち、この意味では隷下と同じように使うことがあります。
隷下とは、「隷下の者を集める」のような使い方で、権力や威力のあるものに依存していることや、ある人の支配下にあることを意味します。主に、ある組織下に配属されることを表す時に用いられ、「海上自衛隊の隷下部隊」「第24師団隷下の将兵」のように使われています。
麾下と隷下の英語表記の違い
麾下も隷下も英語にすると「underling」「subordinate」「under the command」となり、例えば上記の「謙信の麾下となった」を英語にすると「came under the command of Kenshin」となります。
麾下の意味
麾下とは
麾下とは、将軍じきじきの家来、旗本を意味しています。
その他にも、「ある人の指揮下にあること、ある人の指揮下にある者」の意味も持っています。
表現方法は「麾下に入る」「麾下として」「麾下の艦隊」
「麾下に入る」「麾下として」「麾下の艦隊」などが、麾下を使った一般的な言い回しです。
麾下の使い方
「黒田官兵衛は武田信玄の麾下に入ることを決意した」「足利将軍家の麾下として活躍しました」「江戸時代後期になると大多数の麾下は貧困に苦しんだ」などの文中で使われている麾下は、「将軍じきじきの家来」の意味で使われています。
一方、「麾下の艦隊を率いて敵陣に突入した」「将軍麾下の陸軍に入隊にした」「麾下部隊とそれ以外の外部武装勢力を瞬時に判別する」などの文中で使われている麾下は、「ある人の指揮下にあること」の意味で使われています。
麾下という言葉の「麾」は訓読みで「さしまねく」と読み、軍勢などの向かう方向を指揮することを表し、「下」は支配は影響を受ける側を表します。麾下とは、将軍の直接その下に属している家来を意味する言葉です。この意味では、同音同義語の熟語に「旗下」があります。
また、麾下という言葉は、ある人の指揮下にあることや、その者を表します。昨今では、この意味で使われることの方が多くなっています。
麾下の読み方
麾下の読み方は「きか」です。誤って「きげ」「まか」などと読まないようにしましょう。
麾下の対義語
麾下の対義語・反対語としては、自分の仕えている君を意味する「君主」、全軍または一軍の指揮や統率をする者を意味する「大将」、全軍を指揮する大将を意味する「主将」、親分や組織の長を意味する「ボス」などがあります。
麾下の類語
麾下の類語・類義語としては、家に仕える臣を意味する「家臣」、主君や主家に仕える者を意味する「家来」、君主に仕える者を意味する「臣下」、将軍の配下の者を意味する「幕下」、ある人の支配下にある者を意味する「手下」などがあります。
隷下の意味
隷下とは
隷下とは、従属している人、手下、配下を意味しています。
隷下の使い方
隷下を使った分かりやすい例としては、「総司令部は隷下部隊を指揮し各種事態に対応する」「自衛隊のシステムの一部に隷下部隊用装置があります」「新部隊は第3空挺師団の隷下であったが実際は第1軍団の指揮下に置かれていた」などがあります。
その他にも、「入口に隷下の者を常駐させ出入りをチェックした」「米軍の隷下に組み込まれるのではないかと危惧された」「英語力を入隊の条件とする隷下部隊を創設した」「兄は第30師団隷下部隊に配属されました」などがあります。
隷下という言葉の「隷」は、訓読みで「しもべ」「したがう」と読み、所属することや下級の召使いを表します。隷下とは、ある人や組織の支配下にあること、支配下にある者を意味する言葉です。
「隷下部隊」の意味
上記の例文にある「隷下部隊」とは、旧日本軍や自衛隊において、恒常的に所属する下級部隊のことを意味します。
隷下の対義語
隷下の対義語・反対語としては、仮に親と決めて頼りにする人を意味する「親分」、一団の人々を統率する人を意味する「頭」、一つの仲間の長や頭目を意味する「首領」、世襲により国家を治める最高位の人を意味する「君主」などがあります。
隷下の類語
隷下の類語・類義語としては、ある人の支配下にあって服従する者を意味する「子分」、手下となって使われる者を意味する「手先」、組織などである人の下に属し指示命令で行動する人を意味する「部下」などがあります。
麾下の例文
この言葉がよく使われる場面としては、将軍に直属する家来、旗本、ある人に属してその指揮に従う者、部下を表現したい時などが挙げられます。
例文1から例文3にある「麾下」は、将軍に直属する家来の意味で用いられています。例文4や例文5の「麾下」は、ある人に属してその指揮に従うことの意味で用いられています。
隷下の例文
この言葉がよく使われる場面としては、つき従う人、配下、手下を表現したい時などが挙げられます。
例文1や例文5にある「隷下」と「配下」という言葉は、ほぼ同じ意味を持つ同義語です。配下という言葉の方が一般的に広く使われています。
麾下と隷下という言葉は、どちらも「ある指揮下にあること」を表します。どちらの言葉を使うか迷った場合、将軍やある人の支配下にあることを表現したい時は「麾下」を、組織に従属することを表すを表現したい時は「隷下」を使うようにしましょう。