同じ「ていげん」という読み方の「逓減」と「低減」の違いを例文を使って分かりやすく解説しているページです。
どっちの言葉を使えば日本語として正しいのか、迷った方はこのページの使い分け方を参考にしてみてください。
「逓減」と「低減」という言葉は、減ることや減らすことという共通点があり、本来の意味は少し違いますが混同して使われる傾向があります。
逓減と低減の違い
逓減と低減の意味の違い
逓減と低減の違いを分かりやすく言うと、逓減は徐々に減ることを表現する時に使い、低減は減ることだけを表現する時に使うという違いです。
「逓減」にはある地点からだんだん減っていくという意味がありますが、一方の「低減」にはある地点と比べて減るという意味だけで、副詞的な意味は含んでいません。
他にも「低減」には値段が安くなるという意味もありますが、徐々にという意味が含まれているか否かが大きな違いです。
逓減と低減の英語表記の違い
逓減を英語にすると「diminishing」「gradual decrease」「run off」となり、例えば「収穫逓減」を英語にすると「diminishing returns」となります。
一方、低減を英語にすると「reduce」「fall」「decrease」となり、例えば「経費の低減」を英語にすると「to reduce costs」となります。
逓減の意味
逓減とは
逓減とは、数量が次第に減ることや次第に減らすことを意味しています。
逓減を使った言葉として、「逓減率」「収穫逓減」「逓減課金方式」などがあります。
「逓減率」の意味
一つ目の「逓減率」とは、時間の経過とともに数量や程度などが減少していく割合を意味する言葉です。保険業界や建築業界でも使われる言葉ですが、気温逓減率は気温減率ともいいます。高度が上がるにつれて気温が下がる割合を示したものを指す言葉です。
「収穫逓減」の意味
二つ目の「収穫逓減」とは、何らかのエネルギーを費やしたものの、それに見合った利益が得られていない状態を意味する言葉で、収穫逓減の法則とも呼ばれます。
例えば、農地に肥料を与えることで農作物の収穫量を増やすことができますが、一定レベルを超えた肥料を与え続けると肥料の量と収穫量が比例しなくなってしまい、費やした肥料の金額や手間に収穫量が見合わない状態に陥ります。これが「収穫逓減」です。
「逓減課金方式」の意味
三つ目の「逓減課金方式」とは、使用量が増えるほど単価が下がっていく方式のことです。
例えば、マンガ喫茶でパソコンを借りるとなった時、使い始めてから1時間であれば30分あたり300円、1時間から3時間であれば30分あたり200円、3時間以降は30分あたり100円のように、長く借りればだんだん30分あたりの料金は安くなっていきます。
このように使用量に応じて利用単位あたりの課金額が減っていく方式を逓減課金方式と言いますが、基本的には日常生活において私たちが使うのではなく、法人向けに使われている言葉です。
逓減の対義語
逓減の対義語・反対語としては、数量が次第に増えることを意味する「逓増」があります。
逓減の類語
逓減の類語・類義語としては、時が経つにつれて衰えていくことや財産などが減っていくことを意味する「先細り」、しだいに減ることを意味する「漸減」、しだいに減ることやある数から同一の数を順次減らしていくことを意味する「累減」があります。
逓減の逓の字を使った別の言葉としては、順次取り次いで便りを伝えることを意味する「逓信」、次から次へと伝え送ることを意味する「伝逓」、通信や荷物などを人の手から手へ順送りにすることを意味する「逓送」、郵便を意味する「駅逓」などがあります。
低減の意味
低減とは
低減とは、数量が減ることや減らすこと、値段が安くなることや安くすることを意味しています。
表現方法は「低減させる」「低減する」「低減できる」
「低減させる」「低減する」「低減できる」「低減を図る」などが、低減を使った一般的な表現方法です。
低減を使った言葉として、「低減措置」と「低減係数」があります。
「低減措置」の意味
一つ目の「低減措置」は「リスク低減措置」という使い方で、製造業や金融業など様々な業界で使われている言葉です。その業務において危険性や有害性の特定を行い、それがどのようなリスクをもたらすのかを見積もります。
そして、その見積もりに基づいてリスクを減らすためにはどうすればいいのかを検討し、実施します。ここで実施された内容が低減措置にあたるものです。
「低減係数」の意味
二つ目の「低減係数」とは建物から十分離れた屋外での放射線量を1とした時、建物内で受ける放射線量を示したものです。ブロックやレンガの家屋、鉄筋コンクリート家屋では遮蔽効果が高まるため木造家屋と比べて放射線量が低くなるといったことが数値化されています。
ちなみに、2019年10月から実施された軽減税率制度を低減税率とするのは誤りですので注意しましょう。
軽減税率とは、酒類を除く飲食料品などは標準の税率10%ではなく8%となる制度のことです。品目によって税負担が軽くなる、という意味を含むため「軽減」を使うようにしましょう。
低減の対義語
低減の対義語・反対語としては、物の数量が増えることを意味する「増加」、増えて大きくなることや増やして大きくすることを意味する「増大」があります。
低減の類語
低減の類語・類義語としては、削って減らすことを意味する「削減」、重さや負担を減らすことを意味する「減軽」、少なくすることを意味する「減殺」(読み方:げんさい)、価格などが下がることや評価などが悪くなることを意味する「低落」などがあります。
低減の低の字を使った別の言葉としては、周囲に比べて低い土地を意味する「低地」、速度が遅いことを意味する「低速」、金額が安い様子を意味する「低廉」、頭を低く下げて礼をすることを意味する「低頭」などがあります。
逓減の例文
この言葉がよく使われる場面としては、徐々に減っていくもしくは徐々に減らすことを意味する時などが挙げられます。
例文4のような塔のような建築物とともに使う「逓減」は減らすことではなく、横幅が小さくなっていくことを意味します。上層と下層の差が大きな塔に対しては「逓減が大きい」と表現をし、ほとんど同じような幅の塔は「逓減が小さい」と表現します。
低減の例文
この言葉がよく使われる場面としては、減らすことや安くすることを意味する時などが挙げられます。
例文4の「低減化」という使い方をすることで、難しい問題に対して綿密な計画を立てて低減を目指していくという意味を持たせることができます。
逓減と低減どちらを使うか迷った場合は、だんだん減っていくことを表す場合には「逓減」を、減ることだけを表す場合は「低減」を使うと覚えておけば間違いありません。