似た意味を持つ「思慮」(読み方:しりょ)と「思料」(読み方:しりょう)の違いを例文を使って分かりやすく解説しているページです。
どっちの言葉を使えば日本語として正しいのか、迷った方はこのページの使い分け方を参考にしてみてください。
「思慮」と「思料」という言葉は、考えることという共通点があり、本来の意味は少し違いますが混同して使われる傾向があります。
思慮と思料の違い
思慮と思料の意味の違い
思慮と思料の違いを分かりやすく言うと、思慮は他人のために考える時に使い、思料は自分のために考える時に使うという違いです。
「慮」と「思」の意味の違い
思慮の慮の字には、周囲の状況などをよく考えるという意味があるため、思慮は自分のためではなく特定の相手がいたり周囲を思考の対象とする言葉なのがわかります。
一方、思料の料の字には、見当をつけてはかるという意味があるため、思料は自分の考えをめぐらすための言葉だとわかります。これらの対象の差異が、二つの言葉の明確な違いです。
思慮と思料の英語表記の違い
思慮を英語にすると「thought」「consideration」となり、例えば「思慮分別」を英語にすると「a careful thought」となります。
一方、思料を英語にすると「consider」となり、例えば「深く思料する」を英語にすると「to consider something carefully」となります。
思慮の意味
思慮とは
思慮とは、注意深く心を働かせて考えることを意味しています。
表現方法は「思慮に欠ける」「思慮が浅い」「思慮を巡らす」
「思慮に欠ける」「思慮が浅い」「思慮を巡らす」「思慮いたします」などが、思慮を使った一般的な表現方法です。
四字熟語「思慮分別」の意味
思慮を使った言葉として「思慮分別」(読み方:しりょふんべつ)があります。物事に注意深く考えをめぐらし判断をすることを意味する四字熟語です。思慮は色々と慎重に考えることを意味し、分別は物事を常識的に判断することを意味しています。
この「思慮分別」の類語・類義語にあたるのが、十分に考えた上で思い切って実行することを意味する「熟慮断行」という四字熟語です。
また、対義語・反対語にあたるのが、よく考えずに軽はずみに物事を決めたり行動することを意味する「軽率短慮」や「軽挙妄動」という四字熟語です。
四字熟語「思慮滅裂」は誤字
思慮を使った誤った言葉として、「思慮滅裂」が見受けられます。本来は「支離滅裂」(読み方:しりめつれつ)と書き、ばらばらでまとまりがなく筋道が立っていない様子を意味する言葉で、相手のことを思いやる意味はもちろんありません。
思慮の対義語
思慮の対義語・反対語としては、浅はかな考えを意味する「浅薄」があります。
思慮の類語
思慮の類語・類義語としては、考えることや思考を意味する「思惟」(読み方:しい)、心配することを意味する「思案」、考えや処置を意味する「料簡」(読み方:りょうけん)、心を落ち着けて深く考えることを意味する「潜考」などがあります。
思慮の慮の字を使った別の言葉としては、思いがけないことや無礼であることを意味する「慮外」、人に対して言葉や行動を慎み控えることを意味する「遠慮」、焦っていら立つことを意味する「焦慮」、心配することを意味する「憂慮」などがあります。
思料の意味
思料とは
思料とは、いろいろと思いをめぐらし考えることを意味しています。
思料という言葉は、政府や自治体が作成する公的な文書や、法律の文書にて多く見られます。また、ビジネスシーンにおいても稀に使われますが日常会話おいて使うことはめったにありません。
しかし、今日では公的な文書の内容が私たち国民にもきちんと伝わるように、特殊な言葉、堅苦しい言葉や言い回しなどはせずに、日常的に使用されている言葉を用いることを規定に記載している自治体もあります。
例えば、「思料」は考えるもしくは思う、「懇請する」はお願いする、「割愛する」は省略する、とそれぞれ表記します。
表現方法は「思料される」「思料できる」「思料せられる」
「思料される」「思料できる」「思料せられる」などが、思料を使った一般的な表現方法です。
思料の類語
思料の類語・類義語としては、論理的に筋道を立てて考えることを意味する「思索」、深く考えることを意味する「熟思」、物事を様々な要素を含めて考えることを意味する「考慮」、自分自身を省みてその善し悪しを考えることを意味する「省察」などがあります。
思料の料の字を使った別の言葉としては、前もって推し量ることを意味する「予料」、物を書くのに用いる紙を意味する「料紙」、ある物品を作るもとになる材料を意味する「原料」、料金を払わなくてよいことを意味する「無料」などがあります。
思慮の例文
この言葉がよく使われる場面としては、注意深く考えることを意味する時などが挙げられます。
例文1の「思慮深い」とは、物事を注意深く十分に考える様子を意味する言葉で、思慮を形容詞化した言葉です。
例文5の「思慮に富んだ考え」とは、これからの言動によって起こるであろう反応や結果を考えてから行動するような考えを指します。
また、「思慮にふける」という表現をされることがありますが、「ふける」には一つの物事に熱中するという意味があり、「思慮」には深く考えるという意味があるため、この二語を組み合わせて使うことはしません。この場合「思索にふける」などの表現にします。
思料の例文
この言葉がよく使われる場面としては、考えを色々めぐらすことを意味する時などが挙げられます。
役所や銀行内の文書にて使われる実務的な表現であったり法律用語として使われるため日常会話においては使いません。
ビジネスシーンでも使われることが稀にありますが、自身が作成するメールや議事録などに「思料」を使う際は、その作成したものを見る側に「思料」という言葉を理解してもらえるかを考えて使うようにしましょう。
思慮と思料どちらを使うか迷った場合は、自分以外に関してよくよく考えることを表す場合には「思慮」を、自分の中で考えをめぐらすことを表す場合は「思料」を使うと覚えておけば間違いありません。