似た意味を持つ「情緒的」(読み方:じょうちょてき)と「叙情的」(読み方:じょじょうてき)の違いを例文を使って分かりやすく解説しているページです。
どっちの言葉を使えば日本語として正しいのか、迷った方はこのページの使い分け方を参考にしてみてください。
「情緒的」と「叙情的」という言葉は、どちらも感情を表しているという共通点があり、本来の意味は少し違いますが混同して使われる傾向があります。
情緒的と叙情的の違い
情緒的と叙情的の意味の違い
情緒的と叙情的の違いを分かりやすく言うと、情緒的とは感情を起こさせる雰囲気や感情そのものを意味し、叙情的とは感情を表現することを意味するという違いです。
情緒的と叙情的の使い方の違い
一つ目の情緒的を使った分かりやすい例としては、「情緒的な病気で苦しんでいる友人がいる」「深い悲しみから情緒的に不安定になっている」「幼少期には情緒的対象恒常性を確立すべきだ」「情緒的自立を促す」「情緒的な文章を書く人だ」などがあります。
二つ目の叙情的を使った分かりやすい例としては、「叙情的な声楽曲に心が奮えた」「叙情的な詩を味わう講座に参加する」「秋の夜長に叙情的な恋愛小説を読む」「独創的かつ叙情的な歌詞の歌謡曲だ」などがあります。
情緒的と叙情的の使い分け方
情緒的と叙情的という言葉に共通する「情」は心の動きを表し、この二つの言葉は感情に関わる言葉ですが、意味や使い方には違いがあります。情緒的とは、感情を起こさせる雰囲気があるさまや感情を捉えるさまを意味します。叙情的とは、感情を述べ表すさまを意味します。
上記の例の「情緒的な病気」とは、精神的な心の病気を意味し、情緒的を叙情的に置き換えることはできません。また、「叙情的な声楽曲」とは、感情を表現している声楽曲を意味します。これが「情緒的な声楽曲」となると、ある感情を沸かせる雰囲気の声楽曲を意味し、意味が変わってしまいます。
情緒的と叙情的の英語表記の違い
情緒的を英語にすると「emotional」「affectional」となり、例えば上記の「情緒的な病気」を英語にすると「emotional ailment」となります。
一方、叙情的を英語にすると「lyric」「lyrical」「description of feelings」となり、例えば上記の「叙情的な声楽曲」を英語にすると「lyrical vocal music」となります。
情緒的の意味
情緒的とは
情緒的とは、感情を起こさせる雰囲気があるさまを意味しています。
その他にも、感情として捉えるさまの意味も持っています。
情緒的の読み方
情緒的は「じょうちょてき」の他に「じょうしょてき」と読むことができます。情緒は本来「じょうしょ」と読みますが、慣用読みの「じょうちょ」が定着している言葉です。情緒的を「じょうしょてき」と読んでも間違いではありませんが、「じょうちょてき」の方が通じやすくなっています。
表現方法は「情緒的な文章」「情緒的な人」「情緒的な会話」
「情緒的な文章」「情緒的な人」「情緒的な会話」などが、情緒的を使った一般的な言い回しです。
情緒的の使い方
「情緒的な風景に佇んでいた」「情緒的表現が多い小説でぐっときた」「情緒的なキャッチコピーだ」「情緒的な文章が書けるようになりたい」などの文中で使われている情緒的は、「感情を起こさせる雰囲気があるさま」の意味で使われています。
一方、「情緒的ベネフィットを感じる商品だ」「情緒的価値を高めた商品だ」「情緒的ネグレクトの実態を把握する」「情緒的欲求に応えてる」「情緒的健康に注意する」「涙もろく情緒的な人だ」などの文中で使われている情緒的は、「感情として捉えるさま」の意味で使われています。
情緒的という言葉の「情緒」は、感情を起こさせる特殊な雰囲気や、事に触れて起こるさまざまの微妙な感情を意味します。そのような傾向や性質であることを意味する「的」と組み合わさり、情緒的とは、感情を起こさせる雰囲気があるさま、感情として捉えるさまの意味を持っています。
情緒的は感情を表す言葉なので、創作物や日常生活の言動に対して使われることが多いのですが、ビジネスシーンでも使われています。上記の例の「情緒的ベネフィット」「情緒的価値」は情緒的を使ったマーケティング用語です。
「情緒的ベネフィット」「情緒的価値」の意味
「情緒的ベネフィット」「情緒的価値」とは、ブランド戦略論において使われる言葉であり、商品サービスを通してユーザーが得ることのできる感情に関わるベネフィットのことです。そのブランドから得られる安心感や充実感などであり、機能的な価値ではなく精神的な側面の価値を表します。
情緒的の対義語
情緒的の対義語・反対語としては、感情に動かされず冷静に理性の判断に従うさまを意味する「理性的」、きちんと筋道を立てて考えるさまを意味する「論理的」などがあります。
情緒的の類語
情緒的の類語・類義語としては、感情を動かされやすく涙もろくなっているさまを意味する「感傷的」、理性を失って感情をむきだしにするさまを意味する「感情的」などがあります。
情緒的の緒の字を使った別の言葉としては、思いのはしや心の動きを意味する「心緒」、物事の起こりや経緯を意味する「由緒」、前書きやはしがきを意味する「緒言」などがあります。
叙情的の意味
叙情的とは
叙情的とは、感情を述べ表すさまを意味しています。
表現方法は「叙情的な文章」「叙情的な雰囲気」「叙情的な詩」
「叙情的な文章」「叙情的な雰囲気」「叙情的な詩」などが、叙情的を使った一般的な言い回しです。
叙情的の使い方
叙情的を使った分かりやすい例としては、「叙情的な旋律に胸が締め付けられた」「昨夜みた映画は叙情的な作品だった」「クライマックスは叙情的な音楽で盛り上がった」「幻想交響曲の叙情的情景を鑑賞する」 などがあります。
その他にも、「叙情的な文章を得意とする作家だ」「叙情的な雰囲気を醸し出した舞台だった」「美しく叙情的なハープ音楽を鑑賞する」「素朴で叙情的なさまを表した詩だ」「叙情的祭を吹奏楽で演奏する」などがあります。
叙情的の読み方
叙情的は「じょじょうてき」と読みます。「抒情的」とも書き表しますが、「抒」は常用外漢字のため、「叙情的」の方が使われる傾向があります。
叙情的という言葉にある「叙」とは、順序立てて述べることを表し、常用外漢字の「抒」の代用字です。叙情とは自分の感情を述べ表すことであり、叙情的とは物事に感じて起こる気持ちを述べ表すようなものを意味します。
「叙情的表現」の意味
叙情的という言葉を用いた日本語には「叙情的表現」があり、喜び・悲しみ・怒り・諦め・驚きなどの感情を述べ表すような表現を意味します。対照的な表現方法としては、事実を述べ表すような表現を意味する「叙事的表現」、風景を述べ表すような表現を意味する「叙景的表現」があります。
叙情的の対義語
叙情的の対義語・反対語としては、事実や事件をありのままに述べ記すさまを意味する「叙事的」、現実を主観をまじえずありのままに表現しようとするさまを意味する「写実的」などがあります。
叙情的の類語
叙情的の類語・類義語としては、自分の感情などを表現した文章を意味する「叙情文」、牧歌のように素朴で叙情的なさまを意味する「牧歌的」などがあります。
叙情的の叙の字を使った別の言葉としては、風景を文章に書き表すことを意味する「叙景」、物事について順を追って述べることを意味する「叙述」、自分で自分のことを述べることを意味する「自叙」などがあります。
情緒的の例文
この言葉がよく使われる場面としては、何かしらの感情を起こさせる雰囲気があるさま、感情として捉えるさまを表現したい時などが挙げられます。
例文2にある「情緒的サポート」とは、励ましたり、愚痴を聴いたり、相談役になったりなどの情緒面でのサポートを表しています。例文4にある「情緒的コミットメント」とは、愛着や一体感といった組織との感情的なつながりを意味します。対する言葉に「功利的コミットメント」があります。
叙情的の例文
この言葉がよく使われる場面としては、感情を述べ表すようなものを表現したい時などが挙げられます。
上記の例文のように、叙情的という言葉は、音楽や文章について使われることが多い言葉です。例文1では、気持ちが燃え立つ情熱を表すことを「叙情的」と表現しています。例文5にある「叙情的な文章」とは、感情を述べ表した文章を意味します。対になる言葉に「叙事的な文章」があります。
情緒的と叙情的という言葉は、どちらも感情を表し、似た読み方をする言葉です。どちらの言葉を使うか迷った場合、感情を湧き起こさせる雰囲気や感情そのものを表したい時は「情緒的」を、感情を表現することを表したい時は「叙情的」を使うようにしましょう。