似た意味を持つ「殺伐」(読み方:さつばつ)と「荒涼」(読み方:こうりょう)の違いを例文を使って分かりやすく解説しているページです。
どっちの言葉を使えば日本語として正しいのか、迷った方はこのページの使い分け方を参考にしてみてください。
「殺伐」と「荒涼」という言葉は、どちらも荒れている様子を意味しているという共通点があり、本来の意味は少し違いますが混同して使われる傾向があります。
殺伐と荒涼の違い
殺伐と荒涼の意味の違い
殺伐と荒涼の違いを分かりやすく言うと、殺伐とは雰囲気を表す時に使われ、荒涼とは光景や気持ちを表す時に使われるという違いです。
殺伐と荒涼の使い方の違い
一つ目の殺伐を使った分かりやすい例としては、「職場の殺伐とした雰囲気が辛い」「都会の殺伐した通勤ラッシュにも慣れてきた」「繁忙期の役所の殺伐感が半端ない」「国際社会は殺伐化しているのか」などがあります。
二つ目の荒涼を使った分かりやすい例としては、「荒涼とした風景をスケッチする」「荒涼とした大地にたたずむ」「彼が描く絵は荒涼感の漂う作品が多い」「秋日荒涼たる景色に寂しさを感じる」などがあります。
殺伐と荒涼という言葉は、「殺」「荒」という穏やかでない漢字があり、マイナスイメージのある言葉です。どちらも荒れている様子を表し、「殺伐とした~」「荒涼とした~」という言い回しが多い言葉ですが、意味や使い方には違いがあります。
殺伐は殺気を感じるさまを意味し、あたたかみがない場の雰囲気を表します。荒涼は荒れ果てているさまを意味し、もの寂しい光景や気持ちを表します。表す対象が異なるので、上記の例の殺伐の部分を荒涼に置き換えることも、荒涼の部分を殺伐に置き換えることも出来ません。
殺伐と荒涼の英語表記の違い
殺伐を英語にすると「stark」「bloodthirsty」「without tenderness」となり、例えば上記の「殺伐とした雰囲気」を英語にすると「stark atmosphere」となります。
一方、荒涼を英語にすると「bleak」「bleak」「wild」となり、例えば上記の「荒涼とした風景」を英語にすると「wild landscape」となります。
殺伐の意味
殺伐とは
殺伐とは、殺気が感じられるさま、あたたかみの感じられないさまを意味しています。
表現方法は「殺伐としている」「殺伐とした風景」「殺伐とした部屋」
「殺伐としている」「殺伐とした風景」「殺伐とした部屋」「殺伐とした世の中」「殺伐とした心」「殺伐とした人」などが、殺伐を使った一般的な表現方法です。
殺伐の使い方
殺伐を使った分かりやすい例としては、「殺伐とした職場に息が詰まる」「殺伐した世の中なので下手な発言は出来ない」「この街は殺伐とした雰囲気が漂っている」「殺伐とした牛丼屋さんに入りづらい」などがあります。
その他にも、「仕事だけの毎日で心が殺伐とする」「ツイッターやブログまで殺伐感満載な今日この頃」「殺伐とした時代でも心の余裕を持ち続けたい」「映画館で殺伐世界を満喫した」などがあります。
殺伐という言葉は、人を殺そうとする気配が感じられるほど不穏なさまや、人のあたたかみが感じられないさまを意味します。激しい憎悪や敵意に満ちた雰囲気から、人情味がなく居心地が悪い雰囲気まで、程度の差は様々に悪い雰囲気を表す時に使われます。
四字熟語「殺伐激越」の意味
殺伐を用いた四字熟語には、「殺伐激越」(読み方:さつばつげきえつ)があります。激越は感情が高ぶって言動が荒々しくなることを意味し、殺気を感じるさまの殺伐と組み合わさり、音や動きが乱暴で激しい様子を表します。感情的に大声で叫んだりする時などに使われる四字熟語です。
殺伐の類語
殺伐の類語・類義語としては、人間らしい感情をもたないことを意味する「非情」、思いやりの心がないことを意味する「無慈悲」などがあります。
殺伐の伐の字を使った別の言葉としては、無計画に森林の木を伐採することを意味する「濫伐」、反抗する者を攻めうつことを意味する「討伐」などがあります。
荒涼の意味
荒涼とは
荒涼とは、風景などが荒れ果ててもの寂しいさまを意味しています。
他にも、生活や気持ちなどが荒れすさんでいるさまの意味も持っています。
表現方法は「荒涼とした大地」「荒涼とした風景」「荒涼とした景色」
「荒涼とした大地」「荒涼とした風景」「荒涼とした景色」などが、荒涼を使った一般的な表現方法です。
荒涼の使い方
「荒涼とした大地を開拓する」「季節が変わり荒涼とした風景に様変わりした」「標高が高いため木がなく荒涼とした地域だ」などの文中で使われている荒涼は、「荒れ果ててものさびしいさま」の意味で使われています。
一方、「生活を変えたら荒涼とした思いは消え失せた」「自暴自棄になり荒涼とした生活を送っていた」「荒涼とした生活を立て直したい」などの文中で使われている荒涼は、「生活や気持ちが荒れているさま」の意味で使われています。
荒涼という言葉は上記の例のように二つの意味を持っており、風景や気持ちなどが荒れていてもの寂しい様子を表します。ビジネスシーンで使われることは少ないのですが、日常生活や書籍やゲームなどの創作物でも使われる言葉なので、幅広い範囲で使われています。
四字熟語「満目荒涼」の意味
荒涼を用いた四字熟語には、「満目荒涼」(読み方:まんもくこうりょう)があり、見渡すかぎり荒れ果てて寂しいさまを意味します。満目は辺り一面を意味し、ここでの荒涼は風景などが荒れ果ててものさびしいさまを意味します。もの寂しい風景や光景を表す四字熟語です。
荒涼の類語
荒涼の類語・類義語としては、眺めに情趣が欠けていたり単調なさまを意味する「殺風景」、 ひっそりとして静かなさまを意味する「寂然」(読み方:じゃくねん)などがあります。
荒涼の荒の字を使った別の言葉としては、建物や土地などが荒れはてることを意味する「荒廃」、あれはてた野原を意味する「荒野」などがあります。
殺伐の例文
この言葉がよく使われる場面としては、あたたかみの感じられないさまを表現したい時などが挙げられます。
殺伐という言葉は、ネット上でも使われる言葉です。例文2の「殺伐としたスレ」とは、ネットの掲示板においてコメントが少なく盛り上がらないスレッドの意味で使われています。例文5の「殺伐としたtl」とは、タイムラインの投稿が少ないことの意味で使われています。
荒涼の例文
この言葉がよく使われる場面としては、荒れ果ててものさびしいさまや、生活や気持ちが荒れているさまを表現したい時などが挙げられます。
例文1から例文3で使われている荒涼は、風景などが荒れ果ててもの寂しいさまを意味します。例文2の「荒涼たる」という表現は、荒涼を強調する表現で、文章語的表現です。例文4や例文5で使われている荒涼は気持ちなどが荒れすさんでいるさまを意味しています。
殺伐と荒涼という言葉は、どちらも荒れている様子を意味する言葉です。どちらを使うか迷った場合に、あたたかみがない場の雰囲気を表現したい時は「殺伐」を、もの寂しい光景や気持ちを表現したい時は「荒涼」を使うようにすれば間違いないでしょう。