似た意味を持つ「警鐘」(読み方:けいしょう)と「警笛」(読み方:けいてき)の違いを例文を使って分かりやすく解説しているページです。
どっちの言葉を使えば日本語として正しいのか、迷った方はこのページの使い分け方を参考にしてみてください。
「警鐘」と「警笛」という言葉は、どちらも警戒を促すものを意味しているという共通点があり、本来の意味は少し違いますが混同して使われる傾向があります。
警鐘と警笛の違い
警鐘と警笛の意味の違い
警鐘と警笛の違いを分かりやすく言うと、警鐘には比喩的な意味があり、警笛には比喩的な意味はないという違いです。
警鐘と警笛の使い方の違い
一つ目の警鐘を使った分かりやすい例としては、「地球温暖化による自然災害に警鐘を鳴らす」「アルコール依存への警鐘を鳴らす」消防車が警鐘を鳴らしながら走行する」「危険を知らせるために警鐘を打ち鳴らす」「などがあります。
二つ目の警笛を使った分かりやすい例としては、「出発前に警笛装置を確認すること」「警笛付き横断指導旗を持って信号に立つ」「電車の警笛音に驚く」「ポスター作成のため警笛のフリー素材を探す」などがあります。
警鐘と警笛の語源の違い
警鐘と警笛という言葉は、どちらも警戒を促すために鳴らすものを表しますが、意味や使い方には違いがあります。警鐘は警戒を促すために打ち鳴らす「鐘」を語源とし、危険を予告し警戒を促す意味もあります。警笛は注意を促すために吹き鳴らす「笛」を語源とし、警音器の意味もあります。
「警鐘を鳴らす」と「警笛を鳴らす」の違い
上記の例の「警鐘を鳴らす」とは、事態が悪しき方向へ向かおうとしている事や危険を指摘することを意味し、比喩的な表現となっています。これが「警笛を鳴らす」になると、動作として笛や警笛音を鳴らすことを意味し、危険を指摘する意味はありません。
つまり、警鐘には比喩的な意味があり、警笛には比喩的な意味はないことが二つの言葉の違いになります。
警鐘と警笛の英語表記の違い
警鐘を英語にすると「alarm bell」「warning」「tocsin」となり、例えば上記の「自然災害に警鐘を鳴らす」を英語にすると「sound the alarm about natural calamities」となります。
一方、警笛を英語にすると「alarm whistle」「horn」となり、例えば上記の「警笛装置」を英語にすると「horn device」となります。
警鐘の意味
警鐘とは
警鐘とは、火災・洪水などの警戒を促すために鳴らす鐘を意味しています。
その他にも、危険を予告し警戒を促すものの意味も持っています。
警鐘の使い方
「カンカンと警鐘を打ち鳴らす」「警鐘を聞いて非難した」「警鐘の打鐘方法を確認する」「毎月1日は消防団員が警鐘打鳴を実施する」などの文中で使われている警鐘は、「火災や洪水などの警戒を促すために鳴らす鐘」の意味で使われています。
一方、「ネット依存に警鐘を鳴らす」「肺炎流行への警鐘を鳴らした医師たち」「この論文は環境問題に警鐘を鳴らしている」「再三の警鐘を無視した結果だ」などの文中で使われている警鐘は、「危険を予告し警戒を促すもの」の意味で使われています。
警鐘という言葉は、上記の例文のように二つの意味がありますが、特にビジネスシーンにおいては「危険を予告し警戒を促すもの」の意味で使われています。そもそも鐘は、戦いや災害の際に危険を知らせるために鳴らしたものであり、その鐘を「警鐘」と呼びました。
「警鐘を鳴らす」の意味
現代では「危険が迫っていたり事態の悪化を予告し、警戒を促すもの」という比喩的意味で使われるようになっています。この意味では「警鐘を鳴らす」と表現することが一般的です。「警鐘する」という表現も見かけますが「名詞」+「する」となり文法的に誤りですから使わないほうが良いでしょう。
表現方法は「警鐘が鳴らされる」「警鐘事例」「警鐘を発する」
「警鐘を鳴らす」以外では、「警鐘が鳴らされる」「警鐘事例」「警鐘を発する」などが、警鐘を使った一般的な言い回しです。
警鐘の類語
警鐘の類語・類義語としては、呼び起こすことや呼び覚ますことを意味する「喚起」、危険が迫ったことを伝えて注意を人々に促すことを意味する「警報」、警告を発して人の迷いをさますことを意味する「警醒」などがあります。
警鐘の鐘の字を使った別の言葉としては、鳴り響く鐘の音を意味する「鐘声」、歯車仕掛けで鐘が鳴って時刻を知らせる時計を意味する「自鳴鐘」、新しい時代の始まりを告げ知らせるものを意味する「暁鐘」などがあります。
警笛の意味
警笛とは
警笛とは、警戒や注意を促すために鳴らす笛を意味しています。
その他にも、警音器のこと、警音器の音の意味も持っています。
警笛の使い方
「警察官が信号無視する歩行者に警笛を鳴らす」「痴漢対策のために警笛を持ち歩く」「警笛用の鎖をネットで買う」などの文中で使われている警笛は、「警戒や注意を促すために鳴らす笛」の意味で使われています。
一方、「警笛鳴らせの標識に従う」「警笛区間でクラクションを鳴らす」「警笛区間は鳴らし続ける必要ない」「大阪市営地下鉄の警笛はこだわりの音色だ」などの文中で使われている警笛は、「警音器や警音器の音」の意味で使われています。
警笛という言葉は、上記の例文のように二つの意味があり、注意を促すために鳴らす笛と、サイレンや自動車のクラクションなど警告音を出す装置の意味があります。警告音の意味では、道路交通法で多用されており、「警笛鳴らせ」「警笛区間」の標識があります。
「警笛鳴らせ」「警笛区間」の意味
「警笛鳴らせ」の標識がある場所では警笛を鳴らさないといけません。一方の「警笛区間」は、標識がある区間内のうち、カーブなど見通しがきかない場所では警笛を鳴らさなければいけません。なお、「警笛鳴らせ」と「警笛区間」の標識はほぼ同じで、警笛区間には赤い矢印の補助標識があります。
警笛の類語
警笛の類語・類義語としては、合図のために吹く笛を意味する「号笛」、船の蒸気機関に装置し信号や合図などに用いる笛を意味する「汽笛」、衝突事故を防ぐために船舶や灯台などが鳴らす汽笛を意味する「霧笛」などがあります。
警笛の笛の字を使った別の言葉としては、牧童が家畜に合図するときに吹く笛を意味する「牧笛」、銀色の金属で作った笛を意味する「銀笛」、動物の角でつくった笛を意味する「角笛」などがあります。
警鐘の例文
この言葉がよく使われる場面としては、警戒を促すために鳴らす鐘、危険を予告し警戒を促すものを表現したい時などが挙げられます。
例文1や例文2で使われている警鐘は、警戒を促すために鳴らす鐘の意味で使われています。例文2にある「警鐘台」とは、警鐘が吊るしてある塔や建物を意味します。例文3にあるように、警戒を促すという意味で「警鐘を鳴らす」という言い回しがありますが、「警鐘を促す」とは表現はしません。
警笛の例文
この言葉がよく使われる場面としては、警戒や注意を促すために鳴らす笛、警音器を表現したい時などが挙げられます。
上記の例文にある警笛は、注意を促すために鳴らす笛の意味ではなく、警音器や警笛音の意味で使われています。例文2から例文4にある「警笛」は車のクラクションを表しています。「警笛鳴らせ」では鳴らさなければいけませんが、「警笛区間」で見通しがいいところでは鳴らしてはいけません。
警鐘と警笛という言葉は、どちらも警戒を促すために鳴らすものを表す言葉です。どちらの言葉を使うか迷った場合、警戒を促す鐘や、危険を予告し警戒を促すものを表現したい時は「警鐘」を、警戒を促す笛や、警音器を表現したい時は「警笛」を使うようにしましょう。