似た意味を持つ「掌握」(読み方:しょうあく)と「把握」(読み方:はあく)の違いを例文を使って分かりやすく解説しているページです。
どっちの言葉を使えば日本語として正しいのか、迷った方はこのページの使い分け方を参考にしてみてください。
「掌握」と「把握」という言葉は、物事を自分のものにすることを表すという共通点があり、本来の意味は少し違いますが混同して使われる傾向があります。
掌握と把握の違い
掌握と把握の意味の違い
掌握と把握の違いを分かりやすく言うと、掌握とは支配することを表し、把握とは理解することを表すという違いです。
掌握と把握の使い方の違い
一つ目の掌握を使った分かりやすい例としては、「大統領が軍隊を掌握する」「共和党が政権を掌握している」「問題を掌握する理論を学んだ」「子供のすべてを掌握できると思うな」などがあります。
二つ目の把握を使った分かりやすい例としては、「私はその状況を把握していなかった」「文脈を正確に把握する」「把握可能感を高める」「購買行動把握のための調査です」「把握運動のリハビリを始めた」などがあります。
掌握と把握という言葉は、どちらも手で握るという意味が元になっており、物事を自分のものにすることを表す言葉ですが、意味や使い方には違いがあります。
掌握と把握の使い分け方
掌握は自分の思いどおりにすることを意味し、人や物事を支配する様子を表します。把握は物事を手に入れる意味もありますが、しっかり理解することの意味で使われることが多い言葉です。掌握と把握を比べると、掌握には強引に物事を行う意味合いがあるので、使う時には注意しましょう。
掌握と把握の英語表記の違い
掌握を英語にすると「holding」「commanding」「having control over」となり、例えば上記の「軍隊を掌握する」を英語にすると「command the army」となります。
一方、把握を英語にすると「grasp」「catch」「understanding」となり、例えば上記の「状況を把握する」を英語にすると「grasp the situation」となります。
掌握の意味
掌握とは
掌握とは、自分の思いどおりにすること、全面的に自分の支配下に置くことを意味しています。
表現方法は「把握する」「掌握される」「掌握力」
「把握する」「掌握される」「掌握力」などが、掌握を使った一般的な言い回しです。
掌握の使い方
掌握を使った分かりやすい例としては、「軍は北東部を完全掌握したと発表した」「部下を掌握したつもりになっている」「権力を掌握した者は尊大な態度をとるものだ」「女心を掌握する術を知りたい」などがあります。
その他にも、「人心掌握術を身につけたい」「リーダーに掌握力がなくチームがバラバラだ」「昇進して担当部門が大きくなり掌握範囲が広がった」「試合の流れは掌握した」「強い者の掌握下に入る」などがあります。
掌握の語源
掌握という言葉の「掌」は手のひらを表し、「握」はにぎる、しっかり自分のものにすることを表します。掌握は手ににぎる意から、自分の思いどおりにすること、全面的に自分の支配下に置くことを意味する言葉です。
「人心掌握」の意味
掌握を用いた言葉に「人心掌握」があり、他人の心を掴み、自分が意図した方向へと他人を誘導することを意味します。また、他人の心をつかんで自分の思い通りにする方法を「人心掌握術」と言います。人心掌握術は、独裁者のカリスマ性の一要素に挙げられています。
掌握の類語
掌握の類語・類義語としては、団体や組織を支配し思いのままに動かすことを意味する「牛耳る」、地域や組織に権力を及ぼして自分の意のままに動かせる状態に置くことを意味する「支配」などがあります。
掌握の掌の字を使った別の言葉としては、てのひらの中を意味する「掌中」、ある仕事を担当してとりまとめることを意味する「掌理」、自分の管轄の職務として責任をもって取り扱うことを意味する「管掌」などがあります。
把握の意味
把握とは
把握とは、しっかりと理解することを意味しています。
その他にも、しっかりとつかむこと、手中におさめることの意味も持っています。
表現方法は「把握できる」「把握する」「把握していない」
「把握できる」「把握する」「把握していない」などが、把握を使った一般的な言い回しです。
把握の使い方
「問題解決には現状把握が重要だ」「社員の勤怠時間を正確に把握する」「税の仕組みを把握して税金対策をする」「顧客のニーズを把握する」「言葉の意味を把握する」などの文中で使われている把握は、「しっかりと理解すること」の意味で使われています。
一方、「社内の実権を把握する」「宝くじで大金を把握した」などの文中で使われている把握は、「手中におさめること」の意味で使われています。
把握の語源
把握という言葉は、上記の例のように二つの意味がありますが、「しっかりと理解すること」の意味で使われることが多く、「手中におさめること」の意味ではあまり使われません。把握の「把」は、にぎる、つかむを表し、把握という言葉は、しっかりと認識することや理解することを意味します。
「現状把握」の意味
把握を用いた日本語には「現状把握」があり、現在の状態やありさまを客観的かつ定量的に認識することを意味します。問題解決の手法として、「理想の姿」に対して現在はどのようなギャップがあるのか詳細に検討するためには現状把握が重要になります。
把握の類語
把握の類語・類義語としては、かたく握り持つことを意味する「把持」、しっかりとつかまえることや理解することを意味する「把捉」、意味や内容をのみこむことを意味する「理解」などが把持あります。
把握の把の字を使った別の言葉としては、手に握る部分を意味する「把手」、銃床の一部で射撃の際に引き金を引く手で握る部分を意味する「銃把」、細部にわたらず全体を大きくとらえるさまを意味する「大雑把」などがあります。
掌握の例文
この言葉がよく使われる場面としては、自分の思いどおりにすること、全面的に自分の支配下に置くことを表現したい時などが挙げられます。
例文3にある「掌握反射」は誤りです。正しくは「把握反射」と言い、何かが触れると握ろうと指を曲げる握り反射のことです。例文4にある「掌握膿疱症」は誤り、正しくは「掌蹠膿疱症」であり、掌や足底に白い小膿疱がみられる病気です。
把握の例文
この言葉がよく使われる場面としては、しっかりと理解すること、手中におさめることを表現したい時などが挙げられます。
例文2から例文4にあるように、把握という言葉には敬意が含まれないので、目上の人や取引先に対しては使えません。例文2の「把握お願いします」は、「ご承知願います」「ご確認ください」等と言い換えると良いでしょう。
掌握と把握という言葉は、物事を自分のものにすることを表す言葉です。どちらの言葉を使うか迷った場合、自分の思いどおりにすることを表現したい時は「掌握」を、しっかりと理解することを表現したい時は「把握」を使うようにしましょう。