似た意味を持つ「厳格」(読み方:げんかく)と「厳粛」(読み方:げんしゅく)の違いを例文を使って分かりやすく解説しているページです。
どっちの言葉を使えば日本語として正しいのか、迷った方はこのページの使い分け方を参考にしてみてください。
「厳格」と「厳粛」という言葉は、どちらも「おごそかなさま」を意味しているという共通点があり、本来の意味は少し違いますが混同して使われる傾向があります。
厳格と厳粛の違い
厳格と厳粛の意味の違い
厳格と厳粛の違いを分かりやすく言うと、厳格とはルールに厳しいさまを表し、厳粛とは心が引き締まるさまを表すという違いです。
厳格と厳粛の使い方の違い
一つ目の厳格を使った分かりやすい例としては、「私は厳格な父に育てられました」「本人確認の方法が厳格化されます」「厳格な成績評価を行う仕組みを導入します」「感染者の隔離ルールを厳格に運用する」などがあります。
二つ目の厳粛を使った分かりやすい例としては、「教会の厳粛な雰囲気が好きです」「素行の悪い生徒に対しては厳粛に対応します」「厳粛な場所で騒いではいけません」「命に終わりがあることは厳粛な真実です」などがあります。
厳格と厳粛の使い分け方
厳格と厳粛という言葉は、どちらも重々しくおごそかなさまを表しますが、意味や使い方には違いがあります。
厳格とは、不正やごまかしを少しも許さない厳しい態度や様子を意味します。「厳格に運用する」のように規律ルールに厳しいさまを表したり、「厳格な父」のように怠慢を許さない厳しい態度を表します。
厳粛とは、重々しくおごそかで心が引き締まるさまを意味します。「厳粛な雰囲気」「厳粛な場所」のように漂うムードであったり、「厳粛に対応」のように真面目で厳しい行いを表す時に用いられています。
厳格と厳粛の英語表記の違い
厳格を英語にすると「strict」「severe」「stern」となり、例えば上記の「厳格な父」を英語にすると「a strict father」となります。
一方、厳粛を英語にすると「serious」「solemn」「grave」となり、例えば上記の「厳粛な雰囲気」を英語にすると「a solemn atmosphere」となります。
厳格の意味
厳格とは
厳格とは、規律や道徳にきびしく、不正や怠慢を許さないことを意味しています。
表現方法は「厳格化する」「厳格な人」「厳格な態度」
「厳格化する」「厳格な人」「厳格な態度」などが、厳格を使った一般的な言い回しです。
厳格の使い方
厳格を使った分かりやすい例としては、「亡くなった祖父は厳格な人でした」「英語の文法に厳格でなくても通じます」「加害者の厳格な処分を求めます」「いかなる不正も認めない厳格監査を行います」などがあります。
その他にも、「実験データを厳格に管理する」「校則の厳格さで有名な学校です」「授業中は厳格な雰囲気が漂っています」「きちんとした厳格な英語教師が苦手です」「個人情報取り扱いの厳格化が進んでいる」などがあります。
厳格という言葉の「厳」は訓読みで「きびしい」と読み、いい加減な対処が許されないさまを表し、「格」は基準や地位など一定の枠を表します。厳格とは、正しくない物事を許さないさまを意味する言葉です。特に、しつけの面などでの怠慢を許さない厳しい態度を表す時に用いられています。
「厳格化傾向」の使い方
厳格を用いたビジネス用語には「厳格化傾向」があります。人事評価において、厳しい評価に傾いていく傾向を意味します。厳格化傾向は、人事評価時における正当な評価との乖離であり、評価者が留意する事項の一つとなっています。
厳格の対義語
厳格の対義語・反対語としては、他の罪や欠点などをきびしく責めないことを意味する「寛容」、度量が大きくむやみに人を責めないことを意味する「寛大」、きちんとしていないことや整っていないことを意味する「だらしない」などがあります。
厳格の類語
厳格の類語・類義語としては、規準を厳格に守って公正に行うことを意味する「厳格」、おごそかなさまや厳めしいさまを意味する「厳重」、非常にきびしいことを意味する「峻厳」、非常に厳しいさまや過酷なさまを意味する「シビア」などがあります。
厳粛の意味
厳粛とは
厳粛とは、おごそかで心が引き締まるさまを意味しています。
その他にも、「真面目で厳しいさま、真剣なさま」、「重大で動かしがたいさま」の意味も持っています。
表現方法は「厳粛に執り行う」「厳粛に受け止める」「厳粛な態度」
「厳粛に執り行う」「厳粛に受け止める」「厳粛な態度」などが、厳粛を使った一般的な言い回しです。
厳粛の使い方
「近所に厳粛な雰囲気の神社があります」「厳粛な気持ちで今日を迎えました」「厳粛な会場に野良猫が紛れ込んでしまった」「国政は国民の厳粛な信託によるものであって」などの文中で使われている厳粛は、「おごそかで心が引き締まるさま」の意味で使われています。
一方、「国民の判断を厳粛に受け止める」「厳粛に仕事に打ち込む」などの文中で使われている厳粛は、「真面目で厳しいさま」の意味で、「いつかはこの世を去るという厳粛な事実を実感した」などの文中で使われている厳粛は「重大で動かしがたいさま」の意味で使われています。
厳粛という言葉には複数の意味があり、それぞれの意味で使われているため文脈により語意を捉える必要があります。厳粛の「粛」は、身が引き締まるほど厳しい様子を表し、礼儀正しく心が引き締まるほど厳しいさまが原義となっています。
「国政は国民の厳粛な信託によるものであって」の意味
上記の例文にある「国政は国民の厳粛な信託によるものであって」は、日本国憲法の前文の一節です。国政というものは、国民がおごそかに信頼して託しているものであることを意味しています。
「厳粛主義」の意味
厳粛という言葉を用いた日本語には「厳粛主義」があります。厳粛主義とは、原理原則や法則をきわめて厳格に尊重し、守る立場のことです。ストア学派の倫理説や、カントの倫理学の立場などがこれに当たります。
厳粛の対義語
厳粛の対義語・反対語としては、粗末なさまや重々しさがないことを意味する「軽々しい」、言葉や態度が軽々しくて誠実さが感じられないことを意味する「軽薄」、あさはかで軽々しいことを意味する「浮薄」などがあります。
厳粛の類語
厳粛の類語・類義語としては、重々しくいかめしいさまを意味する「厳か」、威厳をもって物事を行うさまを意味する「粛々」、動かしがたい威厳のあるさまを意味する「厳然」、静かで行儀正しいさまを意味する「粛然」などがあります。
厳格の例文
この言葉がよく使われる場面としては、不正や怠慢を少しも許さない厳しい態度や様子を表現したい時などが挙げられます。
例文1にある「厳格な人」とは、正しい行いを優先する自分にも他人にも厳しい人のことです。「ストイックな人」とも言います。
厳粛の例文
この言葉がよく使われる場面としては、おごそかで心が引き締まるさま、真剣なさま、重大で動かしがたいさまを表現したい時などが挙げられます。
例文5にある「厳粛に受け止める」とは、ある物事を真剣に考えて、気を引き締めて対応したり、取り組みをするという意味で使われています。
厳格と厳粛という言葉は、どちらもを表します。どちらの言葉を使うか迷った場合、規律や規範に厳しいさまを表現したい時は「厳格」を、礼儀正しく身が引き締まるさまを表現したい時は「厳粛」を使うようにしましょう。