似た意味を持つ「可塑性」(読み方:かそせい)と「可逆性」(読み方:かぎゃくせい)の違いを例文を使って分かりやすく解説しているページです。
どっちの言葉を使えば日本語として正しいのか、迷った方はこのページの使い分け方を参考にしてみてください。
「可塑性」と「可逆性」という言葉は、似ていても意味は大きく異なりますので、ご注意下さい。
可塑性と可逆性の違い
可塑性と可逆性の意味の違い
可塑性と可逆性の違いを分かりやすく言うと、可塑性とは元に戻らない性質、可逆性とは元に戻りうる性質という違いです。
可塑性と可逆性の使い方の違い
一つ目の可塑性を使った分かりやすい例としては、「合成可塑性樹脂でできたアクセサリーです」「弾力性と可塑性に富む素材です」「人類の脳は可塑性に富むと言われている」「人間発達の可塑性は大きい」などがあります。
二つ目の可逆性を使った分かりやすい例としては、「可逆性圧縮ファイルをダウンロードして復元する」「分子運動における微視的可逆性を説明する」「歯科医院で可逆性歯髄炎と言われた」「可逆性と非可逆性は熱力学の基本的な性質です」などがあります。
可塑性と可逆性の使い分け方
可塑性と可逆性という言葉は、字面が似ており、どちらも物質の状態変化や医療の分野で使われ、混同して使われる傾向がありますが、意味は異なります。可塑性とは、変化させた後に元に戻らない状態や性質を意味します。可逆性とは、変化させた後に元に戻ることができる状態や性質を意味します。
可塑性という言葉は、粘土をイメージすると分かりやすくなります。粘土は、好きな形に変形させても、戻ろうとせずに変形を維持できます。一方、可逆性という言葉は、氷のイメージです。水を凍らせると氷に変化しますが、氷に熱を加えると水に戻ります。
つまり、可塑性も可逆性も変化する性質を表しますが、可塑性は元の状態とは異なり、可逆性は元の状態に戻ることなので、相反する性質を表す言葉なのです。
可塑性と可逆性の英語表記の違い
可塑性を英語にすると「plasticity」「plastic property」となり、例えば上記の「合成可塑性樹脂」を英語にすると「synthetic plastic resin」となります。
一方、可逆性を英語にすると「reversibility」「reversible」となり、例えば上記の「可逆性圧縮」を英語にすると「reversible data compression」となります。
可塑性の意味
可塑性とは
可塑性とは、固体に外力を加えて変形させ、力を取り去ってももとに戻らない性質、塑性を意味しています。
表現方法は「可塑性がある」「可塑性のある」「可塑性に富む」
「可塑性がある」「可塑性のある」「可塑性に富む」などが、可塑性を使った一般的な言い回しです。
可塑性の使い方
可塑性を使った分かりやすい例としては、「脳には可塑性があると言われている」「脳の可塑性と記憶の関係を書いた文献だ」「シナプスの可塑性についての講義を受けた」「学童期の子供は可塑性に富む」などがあります。
その他にも、「可塑性に富む粉末の粘土です」「この部品は熱可塑性エラストマーを原料に含みます」「これは可塑性を欠いた素材だ」「ろうや粘土は可塑性物質です」「プラスチックは造形が容易な可塑性物質だ」などがあります。
可塑性という言葉の「塑」とは、土をこねたり削ったりして物の像を作ることを表します。可塑性とは、固体が外力を受けたとき、その力がある程度以上になると連続的に変形するようになる性質のことです。単に塑性とも言います。
「可塑性物質」の意味
可塑性という言葉を用いた言葉には「可塑性物質」があり、可塑性を有する物質を意味します。具体的には、セルロイドや合成樹脂、プラスチックなどの物質です。可塑物とも言い表します。
可塑性の対義語
可塑性の対義語・反対語としては、外力で変形した物体が力を取り去るともとに戻ろうとする性質を意味する「弾性」などがあります。
可塑性の類語
可塑性の類語・類義語としては、衝撃や圧力で破壊されることなく変形できる固体の性質を意味する「可鍛性」、形や状態が変わることを意味する「変形」、薄く広げのばすことや広がりのびることを意味する「展延」などがあります。
可逆性の意味
可逆性とは
可逆性とは、逆に戻りうる性質、もとの状態に戻りうる性質を意味しています。
表現方法は「可逆性の原理」「可逆性がある」
「可逆性の原理」「可逆性がある」などが、可逆性を使った一般的な言い回しです。
可逆性の使い方
可逆性を使った分かりやすい例としては、「可逆性の原理に基づいた筋トレプログラムです」「可逆性脳血管攣縮症候群のMRI画像を集める」「可逆性後頭葉白質脳症を発症した」「幼児期に可逆性思考を鍛える」などがあります。
その他にも、「時間の可逆性と不可逆性について考察する」「自然法則には可逆性と不可逆性がある」「組立手順の可逆性を確保しましょう」「人生も時間も不可逆性、後戻りできないんだ」などがあります。
可逆性という言葉にある「逆」とは、方向や事態などが反対であることを意味し、可逆性とは、別の状態に変化したものを元の状態に戻すことができる性質のことです。可逆性という言葉は、物理学から心理学、医療の分野にまで使われています。
「微視的可逆性の法則」の意味
可逆性という言葉を用いた日本語には「微視的可逆性の法則」があります。微少可逆則とも言い、正反応と逆反応において変化分がきわめて微小である限り、経路と移行状態はいずれに関しても同一であり、可逆変化が可能であることを意味します。
可逆性の対義語
可逆性の対義語・反対語としては、再びもとの状態にもどれないことを意味する「不可逆」、元に戻すことができないような性質のことを意味する「非可逆」などがあります。
可逆性の類語
可逆性の類語・類義語としては、他からの力を跳ね返すことや跳ね返ることを意味する「反発」、やわらかくしなやかな性質を意味する「柔軟性」などがあります。
可塑性の例文
この言葉がよく使われる場面としては、物体に力が加わえた時に、その力が除かれても物体に変形がそのまま残る性質を表現したい時などが挙げられます。
例文2にある「熱可塑性樹脂」とは、加熱し軟化したものを冷却して硬化させる樹脂のことです。対する「熱硬化性樹脂」とは、加熱し軟化したものを加熱し続けて硬化させる樹脂のことです。例文4にある「脳の可塑性」とは、神経系が変化する能力を意味します。
可逆性の例文
この言葉がよく使われる場面としては、逆に戻りうる性質や、元の状態に戻りうる性質を表現したい時などが挙げられます。
例文1にある「可逆性の原理」とは、トレーニングでつけた筋肉は、トレーニングをしなくなると徐々に減ってしまい、トレーニングの効果がなくなってしまう基本法則のことです。例文4にある「不可逆性歯髄炎」とは、神経が元に戻らない状態であり、疼痛が自発的に生じることがあります。
可塑性と可逆性という言葉は、どちらも変化する性質を表しますが、意味は異なります。どちらの言葉を使うか迷った場合、元に戻らない性質を表現したい時は「可塑性」を、元に戻りうる性質を表現したい時は「可逆性」を使うようにしましょう。