【胸中】と【心中】の意味の違いと使い方の例文

言葉の使い方の例文

似た意味を持つ「胸中」(読み方:きょうちゅう)と「心中」(読み方:しんちゅう)の違いを例文を使って分かりやすく解説しているページです。

どっちの言葉を使えば日本語として正しいのか、迷った方はこのページの使い分け方を参考にしてみてください。

「胸中」と「心中」という言葉は、どちらも心に思っていることを意味しているという共通点があり、本来の意味は少し違いますが混同して使われる傾向があります。




胸中と心中の違い

胸中と心中の意味の違い

胸中と心中の違いを分かりやすく言うと、胸中と心中は意味や使い方の違いはなく、どちらを使っても同じです。

胸中と心中の使い方の違い

一つ目の胸中を使った分かりやすい例としては、「胸中お察しいたします」「ライバル登場で胸中穏やかでない」「余命を宣告された父の胸中を推し量る」「被災者が不安な胸中を吐露した」などがあります。

二つ目の心中を使った分かりやすい例としては、「誠に心中お察し申し上げます」「親友には心中を打ち明ける」「合格発表までは心中穏やかでない」「関係者の方々の心中は察するに余りある」などがあります。

胸中と心中の使い分け方

胸中と心中という言葉は、どちらも心に思っていることや考えという共通する意味を持った言葉です。この意味では違いがなく、「胸中穏やかでない」「胸中を推し量る」「心中を察する」「心中を打ち明ける」の胸中と心中は互いに置き換えることができます。

ただし、心中は「しんじゅう」と読むこともでき、この場合は意味が変わってしまいます。「しんじゅう」は、相愛の男女が合意して一緒に死ぬことや、複数の者が一緒に死ぬことを意味します。心中は読み方によって、胸中と同じ意味になったり、全く違う意味になったりする言葉です。

胸中と心中の英語表記の違い

胸中も心中も英語にすると「one’s heart」「one’s mind」「feelings」となり、例えば上記の「胸中を察する」を英語にすると「appreciate somebody’s feelings」となります。

胸中の意味

胸中とは

胸中とは、胸のうち、心に思っていることを意味しています。

表現方法は「胸中穏やかでない」「胸中を察する」「胸中を思うと」

「胸中穏やかでない」「胸中を察する」「胸中を思うと」などが、胸中を使った一般的な言い回しです。

胸中の使い方

胸中を使った分かりやすい例としては、「この度のこと胸中お察しいたします」「娘の胸中を思うと声がかけられなかった」「悪い噂に胸中穏やかではいられない」「妻の胸中を推し量ることはできない」などがあります。

その他にも、「胸中成竹が成功の秘訣です」「生徒達の胸中を思うと胸が締め付けられた」「オリンピックを断念した選手が胸中吐露」「胸中を察するにあまりある」「複雑な胸中をうち明けた」などがあります。

胸中という言葉は、文字通り「胸の中」の意味であり、心に思っていることや思いを表します。建前としての考えではなく、その人の本当の気持ちや、心の底から思うことを表現する時に使われる言葉です。

「胸中吐露」の意味

上記の例文にある「胸中吐露」(読み方:きょうちゅうとろ)とは、新聞の見出しなどで使われる表現です。「胸中を吐露する」という言い回しの短縮形であり、ある気持ちや考えなどを包み隠さずに述べることを意味します。

四字熟語「胸中成竹」の意味

胸中という言葉を用いた四字熟語には「胸中成竹」があります。胸中成竹とは、物事を始める前に出来上がるまでの見通しを立てておくことを意味します。竹の絵を描く時に、まず胸中に生長した竹を思い浮かべ、それから枝葉根幹を見積もって筆をとることに由来する言葉です。

「胸中に収める」は誤り

胸中という言葉を用いた誤った言い回しには「胸中に収める」があります。正しくは「胸に収める」であり、心の中に秘めて口に出さないことを意味します。

胸中の対義語

胸中の対義語・反対語としては、他人との応対などに見せる顔つきや態度を意味する「外面」、内実とは違った見せかけのようすや事情を意味する「上辺」、外から見たようすや感じを意味する「見た目」などがあります。

胸中の類語

胸中の類語・類義語としては、胸のうちや心の中を意味する「胸襟」、心の中や胸のうちを意味する「胸臆」、心の中の思いや胸のうちを意味する「念頭」、胸のうちを意味する「胸間」、胸の中や心の中にある考えを意味する「胸三寸」などがあります。

心中の意味

心中とは

心中とは、心の中、胸中、内心を意味しています。

表現方法は「心中する覚悟」「心中を察する」「心中穏やかでない」

「心中する覚悟」「心中を察する」「心中穏やかでない」などが、心中を使った一般的な言い回しです。

心中の使い方

心中を使った分かりやすい例としては、「心中お察しいたします」「感染症対策に奔走する先生方の心中お察しします」「心中穏やかでない朝を迎えた」「選手が決戦へ向け心中を明かす」などがあります。

その他にも、「株価の乱高下が続きそうで心中穏やかでない」「ご心中お察し申し上げます」「当事者の心中察するに余りある出来事だ」「就職先が決まるまでは心中穏やかでない」「心中を思うと胸が痛む」などがあります。

心中の読み方

心中という熟語には「しんちゅう」「しんじゅう」という二つの読み方があります。「しんちゅう」と読む場合、心の中や内心を意味します。「しんじゅう」と読む場合、相愛の男女や複数の者が合意のうえで一緒に死ぬことを意味します。読み方により意味が大きく異なるので、注意しましょう。

「心中お察しします」の意味

上記の例文にある「心中お察しします」という言い回しは、悲しい出来事が起こった人に対して気遣いを表す時に用いられる言葉です。ただし、目上の人に使う場合や改まった表現をしたい時は、「心中お察しいたします」「心中お察し申し上げます」と丁寧な敬語を使った方が良いでしょう。

心中の対義語

心中の対義語・反対語としては、外側から見たようすを意味する「外見」、表向きの考えを意味する「建前」、見せかけることや外見を意味する「見せ掛け」などがあります。

心中の類語

心中の類語・類義語としては、考えていることや心づもりを意味する「腹」、 思いや心の中を意味する「胸」、胸のうちや心を意味する「胸懐」、胸のうちや心の中を意味する「胸裏」、心の中に思っていることを意味する「意中」などがあります。

胸中の例文

1.彼が浮気しているという噂を気にしていないふりをしているが、正直なところ胸中穏やかでない。
2.今回の災害で亡くなられた方々やご遺族の方々の胸中を思うと、胸を引き裂かれるばかりです。
3.大地震による被災状況を目の当たりにし、被災者の方々の胸中を察するに、誠に心痛にたえません。
4.大会中止の決定は、日々練習に取り組んできた選手の皆さんの胸中を思うと、お詫びを申し上げるほかありません。
5.オリンピック開催について賛否が議論されていることについて、選手がツイッターで胸中をつづった。
6.いままで沈黙を守っていた政治家が例の疑惑の事件の胸中を明かしたことで、翌日のテレビの情報番組でも大きく取り上げられていた。
7.わたしは根も葉もない悪い噂が世間に広まることに胸中穏やかではいられないこともあったが、ある時から何もやましいとことはしていないと胸を張ることにしていた。
8.息子はあれだけ一生懸命やってきたのに志望校に落ちてしまい、親としても息子の胸中を思えば思うほどに励ましの言葉が見つけられないでいた。
9.男は信じている人に自身の胸中を包み隠さず打ち明けたが、やはり理解されることはなかったので、男はふたたび心を閉ざしてしまった。
10.職人たちは胸中成竹の意識があるので、素人のわたしたちを尻目に躊躇なく斧を振り下ろして、大胆に木を削り取っていた。

この言葉がよく使われる場面としては、心に思っていること、胸の思いを表現したい時などが挙げられます。

例文1にある「胸中穏やかでない」とは、落ち着かない心理状態にあるさまを表す言い回しです。例文3の「胸中を察する」の意味は人の気持ちや事情を推し量ることであり、相手への思いやりを示します。

上記の例文の「胸中」は「心中」と置き換えることができます。

心中の例文

1.ご遺族皆さまの悲しみはいかばかりと心中お察し致します。
2.よき伴侶に先立たれたご主人の心中を察するに余りあるものがあります。
3.感染症流行が長引くなかで、日々奔走しておられる医療従事者の皆様の心中をお察しします。
4.将来の約束をした恋人に振られた友人の心中を思うと、かける言葉が見つかりません。
5.カウンセリングでは、周囲の人には言えない苦悩や心中を明かすことが出来ました。
6.テレビで芸能人の不倫騒動の話題をやっていると、もしかしたら妻から自身の不倫を感づかれるのではないかと心中穏やかではいられなかった。
7.ご家庭や大黒柱を失われた家族の皆様の悲しみは、心中を察するに余りあるものがあります。謹んでお悔やみ申し上げます。
8.今まで心を開いてくれなかった下の娘が、被災生活をきっかけにその心中を明かしてくれたことが、わたしは何よりうれしかったのだ。
9.こんなことをいうと通俗的だと言われるかもしれないが、わたしは親になってはじめて自分の両親の心中がわかった気がしたのだ。
10.あの時は、人生に絶望しているからと言って無理心中なんて早まったことはしてはいけないよと知らないおばさんが引き留めてくれたのだ。

この言葉がよく使われる場面としては、心のうち、心の底を表現したい時などが挙げられます。

例文1のように、「心中お察しします」「心中お察し致します」という言葉は、葬式の場や弔電のお悔やみの言葉で使われることが多くあります。例文3の「心中を察するに余りある」とは、困難にある人の気持ちの程度が、簡単には想像できないほど甚だしいだろうことを表現しています。

上記の例文の「心中」は「胸中」と置き換えることができます。

胸中と心中という言葉は、思いや考えどちらも心にある思いや考えを表します。この意味では、どちらの言葉を使っても構いません。ただし、心中を「しんじゅう」と読む場合には、一緒に死ぬことという全く別の意味になることを覚えておきましょう。

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