似た意味を持つ「惰性」(読み方:だせい)と「慣性」(読み方:かんせい)の違いを例文を使って分かりやすく解説しているページです。
どっちの言葉を使えば日本語として正しいのか、迷った方はこのページの使い分け方を参考にしてみてください。
「惰性」と「慣性」という言葉は、どちらも「物体がその運動を維持しようとする性質」を意味しているという共通点があり、本来の意味は少し違いますが混同して使われる傾向があります。
惰性と慣性の違い
惰性と慣性の意味の違い
惰性と慣性の違いを分かりやすく言うと、惰性とは物体が運動を維持しようとする性質だけでなく今までの習慣も表し、慣性とは物体が運動を維持しようとする性質のみを表すという違いです。
惰性と慣性の使い方の違い
一つ目の惰性を使った分かりやすい例としては、「惰性走行を適度に行い燃料消費を抑える」「惰性で進む速度を調べる」「彼女とは惰性で付き合っているだけです」「惰性で生きるのをやめる」などがあります。
二つ目の慣性を使った分かりやすい例としては、「慣性は物体が持っている性質です」「慣性モーメントの公式を覚える」「慣性力低下に対応する」「テーブルクロス引きは慣性の法則に基づく」などがあります。
惰性と慣性の使い分け方
惰性と慣性という言葉は、「物体がその運動を維持しようとする性質」という共通する物理的な意味を持っています。この意味で使われている「惰性で進む速度を調べる」の惰性は、慣性という言葉に置き換えることが出来ます。
さらに惰性は、「これまでの習慣や勢い」という意味も持ちます。この意味で使われている「惰性で生きる」の惰性は、慣性という言葉に置き換えることは出来ません。
このような意味の違いから、惰性は物体や人に対して用いられる言葉ですが、慣性は物体に対してのみ用いられる言葉です。これらが、惰性と慣性という言葉の明確な違いになります。
惰性と慣性の英語表記の違い
惰性も慣性も英語にすると「inertia」「momentum」となり、例えば上記の「惰性走行」を英語にすると「inertia running」となります。
惰性の意味
惰性とは
惰性とは、これまでの習慣や勢いを意味しています。
その他にも、「外力が働かなければ、物体はその運動状態を保つという性質」の意味も持っています。
表現方法は「惰性で生きる」「惰性で仕事」「惰性になる」
「惰性で生きる」「惰性で仕事」「惰性になるなどが、惰性を使った一般的な言い回しです。
惰性の使い方
「人生は一度きり、惰性で生きるな」「惰性で付き合う彼から結婚を申し込まれた」「英語の習い事を惰性的に続けています」「単純作業を惰性で行う」などの文中で使われている惰性は、「これまでの習慣や勢い」の意味で使われています。
一方、「アクセルから足を離して惰性走行する」「惰性で行う回転運動です」「惰性を測定する装置を購入する」などの文中で使われている惰性は、「外力が働かなければ、その運動状態を保つ性質」の意味で使われています。
惰性という言葉は、上記の例文にあるように二つの意味を持ちますが、日常会話では「これまでの習慣や勢い」の意味で使われることが多い言葉です。一方の「外力が働かなければ、その運動状態を保つ性質」の意味は、「慣性」という言葉と同義になります。
「惰性的」の意味
上記の例文にある「惰性的」とは、 惰性にまかせて、それまでの習慣から、無意識に同じような行為を繰り返しているさまを意味します。
「惰性走行」の意味
惰性という言葉を用いた日本語には「惰性走行」があります。自動車において、走行中にアクセルから足を外した状態で走行することです。車はエンジンの力で加速したあと、アクセルを戻すと減速はしますが、惰性で直ぐに止まりません。この状態を惰性走行と言います。
惰性の対義語
惰性の対義語・反対語としては、意志が強くしっかりしていて物事に動じないさまを意味する「毅然」、意味や価値があると考えられることを意味する「有意義」などがあります。
惰性の類語
惰性の類語・類義語としては、ぼんやりとして心にとめないさまを意味する「漫然」、意義のないことや価値がなくつまらないことを意味する「無意義」、なんの進歩も成果も得られないことを意味する「不毛」などがあります。
慣性の意味
慣性とは
慣性とは、外力が働かなければ、物体はその運動状態を保つという性質を意味しています。
表現方法は「慣性が働く」「慣性が大きい」「慣性の法則」
「慣性が働く」「慣性が大きい」「慣性の法則」などが、慣性を使った一般的な言い回しです。
慣性の使い方
慣性を使った分かりやすい例としては、「ニュートン力学の慣性の法則について説明します」「逆向きに慣性力が働く」「慣性の法則とは何か例を挙げてください」「ブレーキングドリフトより慣性ドリフトが好きです」などがあります。
その他にも、「慣性モーメントの求め方を教えて下さい」「慣性モーメントの単位は何になりますか」「運動している質点には慣性力が発生する」「質量に比例して慣性が大きい」「回転慣性を考慮する」などがあります。
慣性とは、物体の性質を表す言葉です。物体は、外部から力を受けなけない時、初めに静止していればそのまま静止を続け、初めにある速度をもっていればその速度を保持して等速度運動を続けます。この性質を慣性と言います。
「慣性モーメント」の意味
上記の例文にある「慣性モーメント」とは、軸のまわりを回転する物体の慣性の大きさを表す量のことです。ピッチング、ローリングなど、クルマの回転運動に対する慣性の大きさを示す物理量を言います。
「慣性の法則」の意味
慣性という言葉を用いた日本語には「慣性の法則」があります。ニュートンの運動の第一法則であり、物体は外力の作用を受けない限り、静止または等速度運動の状態を続けるという法則です。
慣性の対義語
慣性の対義語・反対語としては、ある状態や性質などが他の状態や性質に変わることを意味する「変化」、物質や物事の性質が変わることを意味する「変質」などがあります。
慣性の類語
慣性の類語・類義語としては、物事の状態をそのまま保ち続けることを意味する「維持」、保ちつづけることを意味する「保持」などがあります。
惰性の例文
この言葉がよく使われる場面としては、今までの習慣や勢い、物体がその速度を維持し続けようとする性質を表現したい時などが挙げられます。
例文1から例文4の文中にある惰性は、「今までの習慣や勢い」の意味で使われています。例文5の文中にある惰性は、「物体がその速度を維持し続けようとする性質」の意味で使われています。
慣性の例文
この言葉がよく使われる場面としては、物体がその速度を維持し続けようとする性質を表現したい時などが挙げられます。
例文1から例文3の文中にある慣性は、外力が加わらない限りはその状態を持続するという物体の性質を表しています。例文4や例文5では、慣性という言葉が比喩的に用いられており、状態を維持することを表しています。
惰性と慣性という言葉は、どちらも「物体が同一の運動を維持しようとする性質」を表します。さらに惰性には、「今までの習慣や勢い」の意味があり、この意味で使われることが多いことを覚えておきましょう。