似た意味を持つ「疎んじる」(読み方:うとんじる)と「疎んずる」(読み方:うとんずる)の違いを例文を使って分かりやすく解説しているページです。
どっちの言葉を使えば日本語として正しいのか、迷った方はこのページの使い分け方を参考にしてみてください。
「疎んじる」と「疎んずる」という言葉は、どちらも遠ざけてよそよそしくするという共通点があり、使う場面は少し違いますが混同して使われる傾向があります。
疎んじると疎んずるの違い
疎んじると疎んずるの意味の違い
疎んじると疎んずるの違いを分かりやすく言うと、辞書に載っている現代風の読み方か、古い読み方かの違いです。「疎んじる」と「疎んずる」は、どちらも同じ意味を持つ言葉で、現代では「疎んじる」の方を一般的な読み方として使用しています。
疎んじると疎んずるの使い方の違い
一つ目の疎んじるを使った分かりやすい例としては、「この地域の人は部外者を疎んじる」「飲み仲間から疎んじられている」「難しい外国語は疎んじられる傾向がある」などがあります。
二つ目の疎んずるを使った分かりやすい例としては、「主人を疎んずる嫁」「今を疎んずると将来困る」「他人を疎んずる」などがあります。
疎んじると疎んずるの2つが存在する理由
なぜ、疎ん「じる」と疎ん「ずる」という二種類の語尾が存在するのか。これは、日本語の口語文法と文語文法の決まりによる違いがあるからです。口語文法とは、しゃべり言葉のことで、文語文法とは、文章で書く際の言葉という意味です。
これらの日本語文法には「活用法」という考え方があります。活用法とは、文章の流れによって単語の語尾を違和感のないように変えることを意味します。
まさしく「疎んじる」「疎んずる」のように、最初の言葉は同じであっても語尾が違う言葉が存在するのは、活用法によって文脈に合うかたちで語尾が変えられているからです。
疎んじる、疎んずるという言葉は「サ行変格活用」という活用法によって、語尾を変えています。サ行変格活用では、文章の流れによって語尾をサ行の言葉である「さしすせそ」を元にして変えていきます。
「疎んじる」「疎んずる」という言葉の場合、「疎ん」という先頭の言葉はそのままに、語尾を「未然形:じ」「連用形:じ」「終止形:じる・ずる」「連体形:じる・ずる」「仮定形:じれ・ずれ」「疎ん令形:じろ・じよ・ぜよ」という風に変化させます。
語尾の変化の形である未然形や連用形などの名称は、その言葉がどのような文脈で使われているかの形のことを指しています。例えば「未然形」というのは「まだそうなってはいない」という意味を持ち、否定形と一緒に使われます。
つまり、疎んじるの未然形の表現は「疎んじない」となります。変化しない先頭の「疎ん」に未然形の「じ」をつけて、最後に否定形の「ない」を付けた形です。
このように、日本語には、様々な文法上の決まりがあります。「疎んじる」「疎んずる」というのは、両方ともこの文法で言うところの「終止形」です。
終止形というのは、言い切りの形という意味があります。文章ではなく、ひとつの単語として使う際には終止形を使います。
疎んじると疎んずるの使い分け方
「疎ん」の終止形には「じる」と「ずる」の二種類があります。これが「疎んじる」と「疎んずる」の違いです。二種類の語尾がある場合、どちらを使っても間違いではありませんが、どちらか一方が、一般的に使われているものであることがほとんどです。
「疎ん」の場合、辞書に記載されているのは「疎んじる」という言葉です。こちらが、現代では一般的に使用されている言葉であり、「疎んずる」というのは古い言い方になります。
しかし、意味に違いはありませんし、どちらも文法的には使えるものですので、個々人の好みや文章の前後の文脈などを考えて、自由に使い分けが出来るものであると言えます。
疎んじるの意味
疎んじるとは
疎んじるとは、遠ざけてよそよそしくすることを意味しています。
表現方法は「仲間から疎んじられる」「同僚を疎んじる」「部外者を疎んじる」
「仲間から疎んじられる」「同僚を疎んじる」「部外者を疎んじる」などが、疎んじるを使った一般的な言い回しです。
疎んじるの使い方
疎んじるを使った分かりやすい例としては、「仕事ができない同僚を疎んじる」「おじさんは女子高生から疎んじられる傾向がある」「人を憎んで疎んじる」などがあります。
疎んじるの類語
疎んじるの類語・類義語としては、嫌って遠ざけることを意味する「疎む」、除け者にすることを意味する「疎外する」などがあります。
疎んじるの疎の字を使った別の言葉としては、知識が不十分であることを意味する「疎い」、関係が薄くなったことを意味する「疎遠」、災害等により地方に逃げることを意味する「疎開」、いいかげんに扱うことを意味する「疎か」(読み方:おろそか)などがあります。
疎んずるの意味
疎んずるとは
疎んずるとは、疎んじるという言葉の少し古い言い方を意味しています。疎んずるというのは「疎んず」という言葉のサ行変格活用の終止形です。
疎んずるの使い方
疎んずるを使った分かりやすい例としては、「自分と意見が違う者を疎んずる」「疎んずる理由を聞かせてほしい」「疎んずる結果を招いた」などがあります。
疎んずるは辞書に載っていない
意味としては、疎んじると全く同じものであり、文章の前後の文脈などによって使い分けることが出来るものです。辞書には「疎んじる」は載っていても、「疎んずる」という言葉は載っていないことが多く、疎んずるは現代語よりも少し古い表現です。
しかし、意味は同じであるので、「疎んじる」「疎んずる」のどちらを使っても間違いではありません。古風な雰囲気を出したい時などには、あえて「疎んずる」という言葉を使うのも良いでしょう。
他にも、例えば「疎んず」という言葉の疎ん令形を考えてみると、現代風の言い方であれば「疎んじろ」となりますが、古風な言い回しになると「疎んじよ」または「疎んぜよ」となります。
この「疎んじよ」「疎んぜよ」と同じ雰囲気を持つのが「疎んずる」であると考えると、わかりやすいでしょう。
疎んじるの例文
この言葉がよく使われる場面としては、遠ざけてよそよそしくすることを表現で表したい時などが挙げられます。
今日の日常生活やビジネスシーンの中ではこの言葉を使う人は少なく、口で言われても理解をしてもらえない可能もあるため、代わりに「遠ざける」や「よそよそしくする」といったよく耳にする言葉を代用した方が無難でしょう。
疎んずるの例文
この言葉がよく使われる場面としては、疎んじるという言葉を少し古風な表現で表したい時などが挙げられます。
上記の例文を見れば分かる通り、「疎んずる」を「疎んじる」に置き換えても文章としての問題は全くありません。