似た意味を持つ「コミュ障」(読み方:こみゅしょう)と「人見知り」(読み方:ひとみしり)の違いと使い方を分かりやすく解説しているページです。
どっちの言葉を使えば日本語として正しいのか、このページの使い方を参考にしてみて下さい。
「コミュ障」と「人見知り」という言葉は、どちらもコミュニケーションに支障をきたす性格を意味するという共通点があり、本来の意味は少し違いますが混同して使用される傾向があります。
「コミュ障」と「人見知り」の違い
「コミュ障」と「人見知り」の意味の違い
コミュ障と人見知りの違いを分かりやすく言うと、コミュ障というのは、あらゆる人とのコミュニケーションが苦手なことを意味していて、人見知りというのは、知らない人に対して上手くコミュニケーションが取れないことを意味しているという違いです。
「コミュ障」はすべての人に対してコミュニケーションが苦手
コミュ障もといコミュニケーション障害と人見知りは、「どういう人に対して」コミュニケーションが取れないかという点が大きく異なります。「コミュ障」はありとあらゆる人に対して意志疎通が取れず、「人見知り」は知らない人に対してだけ取れません。
もともと「コミュニケーション障害」という言葉があり、それが略されて「コミュ障」という言葉が出来上がりました。コミュニケーション障害という言葉の歴史は、2000年前後にまで遡ることが出来ます。
「日本コミュニケーション障害学会」が2002年に「日本聴能言語学会」からの改称により発足し、さらに、英語でコミュニケーション障害を意味する「communication disorder」の基礎的定義は2000年から2001年にかけて、まとまった形で世に出されています。
対人関係に関する全般的な支障の原因を、聴覚・発声器官といった身体的原因に求めたり、発達障害や自閉症などの心的原因に求められたりしていますが、平行してインターネットを通じて、コミュニケーションが苦手な人間を揶揄する言葉として流通し始めました。
今日では、「コミュ障」というネットスラングは、発達障害やアスペルガー症候群、自閉症、吃音症など(に近い症状)を一括する言葉として、揶揄や侮辱、罵倒や悪ノリ、自虐などの感情と共にインターネットに書き込まれることの多い言葉です。
コミュ障もといコミュニケーション障害は、専門用語かネットスラングという位置づけなので、一般的な辞書、辞典類には個別の項目が設けられていないことが大多数です。
「人見知り」は知らない人だけに対してコミュニケーションが苦手
次に、人見知りというのは、知らない人に対して気恥ずかしさや恐怖感などからコミュニケーションがうまく取れないこと、またそういう人を意味する言葉です。こちらはコミュ障とは異なり、国語辞書などに普通に載っている言葉です。
かつてはいわゆる「子供」に対して使われると考えられていましたが、今日では青年や成人、壮年など年齢を問わず使われ始めている言葉です。この変化には、コミュニケーションの多様化が作用していると考えられています。
一般に、「人見知り」と呼ばれる人たちは、コミュ障とは異なり、初対面では話せなくとも、相手に慣れることで自然と打ち解けて、通常のコミュニケーションが取れるようになります。
「コミュ障」と「人見知り」の使い分け方
まとめると、コミュ障が全ての人に対して意思疎通がうまく取れず、慣れることがないのに対して、人見知りは初対面など慣れていない人に対してのみ意思疎通がうまく取れないが、相手に慣れることで普通の意思疎通が出来るようになる、という違いです。
「コミュ障」の意味
「コミュ障」とは
コミュ障とは、あらゆる人に対する正常なコミュニケーションに支障をきたしていることを意味しています。
「コミュ障」の使い方
専門用語としてのコミュニケーション障害と、ネットスラングとしてのコミュ障では、次の二つの点で意味が違います。
まず、対象の範囲が違います。コミュニケーション障害は、その原因に精神的なものだけではなく身体的な原因も含む広いものですが、コミュ障はある種の精神疾患の患者やそれに近い人々を対象とし、一般に身体的原因による支障については除外します。
次に、対象の取り扱い方が違います。コミュニケーション障害は、意志疎通の支障をきたしている原因の特定、分類、そして根治などを目的とするものですが、コミュ障は揶揄、侮辱、中傷、自虐などの目的で用いられる言葉であり、治る・治すことは想定しません。
表現方法は「コミュ障な男」「コミュ障になった」「コミュ障が好き」
「コミュ障な男」「コミュ障になった」「コミュ障が好き」などが、コミュ障を使った一般的な言い回しです。
「コミュ障」の類語
コミュ障の類語・類義語としては、陰気なキャラクター(性格のこと)を意味する「陰キャ」(読み方:いんきゃ)、性格が暗いことを意味する「根暗/ネクラ」などがあります。
「コミュ障」の対義語
コミュ障の対義語・反対語としては、陽気なキャラクターを意味する「陽キャ」(読み方:ようきゃ)、リアル(ネットやゲームと異なる実生活)の充実を意味する「リア充」、「ウェーイ」と陽気に騒いでいる(とされる)人間たちを意味する「ウェイ系」などがあります。
「人見知り」の意味
「人見知り」とは
人見知りとは、知らない人に対するコミュニケーションが苦手なことを意味しています。
「人見知り」の使い方
人見知りにおける意思疎通の不全は、知らない人に対する羞恥や恐れなどの感情から来ているので、相手に慣れることで通常のコミュニケーションが取れるようになります。これがネットスラングとしての「コミュ障」との違いです。
また、見知った人、親しい人とは通常のコミュニケーションが取れることから、身体的な障がいによって人見知りが生じるとは考えられていません。原因は精神的なものと考えられています。
かつてはいわゆる「子供」だけを対象とする言葉でしたが、近年はコミュニケーションの形態が多様化し、また直接顔と顔を突き合わせてのコミュニケーションが少なくなってきていることから、大人の人見知りということも考えられるようになってきています。
コミュ障とは異なり、こちらは昔からある日本語で、国語辞典などにも記載されています。また、コミュ障が人間以外に使われるのが稀な言葉なのに対して、人見知りは犬や猫の動物に使用することも珍しくありません。
表現方法は「人見知りする」「人見知りに見えない人見知り」
「人見知りする」「人見知りに見えない人見知り」などが、人見知りを使った一般的な言い回しです。
「人見知り」の類語
人見知りの類語・類義語としては、人前に出て行動したがらない性格を意味する「引っ込み思案」、人と付き合うのが嫌いで下手なことを意味する「非社交的」、特に人前で気が弱くは気のないことを意味する「内気」などがあります。
「人見知り」の対義語
人見知りの対義語・反対語としては、物事を怖がらないことを意味する「物怖じしない」、初対面でもすぐに打ち解けて親しみを持つことができる人柄を意味する「人懐っこい」、遠慮のないことを意味する「馴れ馴れしい」「図々しい」などがあります。
「コミュ障」の例文
この言葉がよく使われる場面としては、コミュニケーションが満足に取れないことを、おちょくったり、馬鹿にしたり、自虐したりしたい時などが挙げられます。ネットスラングの「コミュ障」は、もはや日常単語にさえなっていますが、こうした意味合いを持ちます。
この言葉を使う時には、専門用語としてのコミュニケーション障害とは別物だということをしっかりと意識するようにしましょう。
「人見知り」の例文
この言葉がよく使われる場面としては、気恥ずかしさや恐怖心などから初対面でうまく意思疎通が出来ないことを表現したい時などが挙げられます。
人見知りも、広い意味はコミュ障に含まれるという考えから、近年では人見知りという言葉を聞く機会は少なくなっています。
ネットスラングのコミュ障が「病気だ」と揶揄する(当然本当に病気かどうかは分からない)意図があるのに対して、人見知りにはそうした攻撃的な意味合いは少ないです。コミュ障よりも人見知りの方が、言葉のトゲが少ないので、こちらを使ってみるのも一つの手です。