似た意味を持つ「傾奇者」(読み方:かぶきもの)と「数奇者」(読み方:すきしゃ)の違いを例文を使って分かりやすく解説しているページです。
どっちの言葉を使えば日本語として正しいのか、迷った方はこのページの使い分け方を参考にしてみてください。
「傾奇者」と「数奇者」という言葉は、どちらも「物好きな変わり者」を意味しているという共通点があり、本来の意味は少し違いますが混同して使われる傾向があります。
傾奇者と数奇者の違い
傾奇者と数奇者の意味の違い
傾奇者と数奇者の違いを分かりやすく言うと、数奇者よりも傾奇者の方が変わり者である度合いが大きいという違いです。
傾奇者と数奇者の使い方の違い
一つ目の傾奇者を使った分かりやすい例としては、「兄はド派手な傾奇者で、妹として恥ずかしい」「傾奇者を思わせる風変りなファッションだ」「昔は傾奇者だった彼が今は立派なイクメンです」などがあります。
二つ目の数奇者を使った分かりやすい例としては、「クラスに一人くらい言動が理解できない数奇者はいるだろう」「数奇者はそれぞれの流派に入門し、茶道の技術を磨きます」「数奇者の前で露出の多い服はやめた方がいい」などがあります。
傾奇者と数奇者の使い分け方
傾奇者と数奇者という言葉は、物好きな人や変わり者を意味します。どちらも普通と違っている人物を指すため、使い分けが難しい言葉ですが、あえて違いを言うならば風変りさの度合いでしょう。
傾奇者とは、戦国時代から江戸時代にかけての社会風潮であり、異風を好み、派手な身なりをして常識を逸脱した行動に走る者たちを表しました。茶道などの芸道を好む者を数寄者と呼びましたが、数寄者よりさらに数寄に傾いた者を表す言葉です。つまり、傾奇者は数寄者を誇張した表現になります。
また、数奇者という言葉は変わり者の意味だけでなく、風流を好む人や色好みの人という意味も持っています。この点も二つの言葉の違いになります。
傾奇者と数奇者の英語表記の違い
傾奇者も数奇者も英語にすると「eccentric person」「curious fellow」となり、例えば上記の「私の兄は傾奇者です」を英語にすると「My younger brother is a eccentric person」となります。
傾奇者の意味
傾奇者とは
傾奇者とは、派手な身なりをしたり、異様な言動をしたりする者を意味しています。
傾奇者の読み方
傾奇者の読み方は「かぶきもの」です。誤って「けいきしゃ」「けいきもの」などと読まないようにしましょう。また、傾奇者は「歌舞伎者」とも書きますが、歌舞伎者という言葉には踊り子や役者の意味が加わるという違いがあります。
傾奇者の使い方
傾奇者を使った分かりやすい例としては、「彼は変わり者というより傾奇者だ」「ラーメン店に毒々しい雰囲気の傾奇者がいた」「村一番の傾奇者はいつも25kgの荷物を背負っている」「松本駅前で奇抜なファッションの傾奇者を見た」などがあります。
その他にも、「天下御免の傾奇者と呼ばれた武将がいました」「傾奇者として有名な前田慶次をご存知ですか」「傾奇者は庶民には迷惑な存在だった」「江戸時代の傾奇者と現代のヤンキーには通じるものがある」などがあります。
傾奇者とは、周囲とは違った思考や言動をする変わり者を意味します。派手な身なりを好んだり、常識外れな言動をする人を表す言葉です。傾奇者という言葉は、もともと戦国時代から江戸時代にかけての社会風潮を指しましたが、いつしか普通の人とは異なる行動をとる者をいうようになりました。
傾奇者として最も知られるのは前田慶次
傾奇者として最も知られる歴史上の人物には、戦国武将の「前田慶次」がいます。加賀百万石の祖であり叔父である前田利家を騙して水風呂へ入れたり、愛馬を贅沢に装飾したりするなど、破天荒な逸話が多数あります。
傾奇者の由来
傾奇者の由来は諸説ありますが、茶道や和歌などを好む人を意味する「数奇者」が語源である説が有力です。数奇者の傾向がさらに強まり「傾く」ことから、この言葉が生まれたと言われています。
傾奇者の対義語
傾奇者の対義語・反対語としては、常識的な言動をする人のことを意味する「常識人」、平凡な人や普通の人を意味する「凡夫」などがあります。
傾奇者の類語
傾奇者の類語・類義語としては、人目を引くしゃれた身なりの男を意味する「伊達男」、普通の人とは変わったところのある人や変わり者を意味する「変人」、正統から外れ特異な存在とみられている人を意味する「異端児」、奇抜で奔放な生き方を好む者を意味する「婆娑羅者」などがあります。
数奇者の意味
数奇者とは
数奇者とは、物好きな人を意味しています。
その他にも、「数寄の道に専念する人、特に茶道についていう」「色好みの人」の意味も持っています。
数奇者の読み方
数奇者の読み方は「すきしゃ」ですが、「すきもの」と読む場合もあります。
数奇者の使い方
「数奇者として近所で有名な人です」「数奇者は独特な世界観を持っています」「どうやら私は数奇者だと思われているようだ」「彼女は美人だけど数奇者だよ」などの文中で使われている数奇者は、「物好きな人」の意味で使われています。
一方、「近代数寄者たちは日本美術にも精通しています」「グローバルな数奇者として茶の湯を英語で説明する」などの文中で使われている数奇者は「数寄の道に専念する人」の意味で、「英雄には数奇者が多いそうです」などの文中で使われている数奇者は「色好みの人」の意味で使われています。
数奇者とは、上記の例文にあるように複数の意味を持つ言葉です。それぞれの意味で使われているので、言葉の表す内容を判断する必要があります。
数奇者の語源
数奇者の語源は「好き者」であり、平安時代の歌物語である「伊勢物語」などでは好色な男を指しましたが、中世になって風流を好む人を意味するようになりました。現代では、本業とは別に茶の湯に熱心な人、茶の湯の名物道具を所有する人物として用いられています。
数奇者の対義語
数奇者の対義語・反対語としては、才能や考え方などが普通の人や並みの人を意味する「常人」、ただの人や普通の人を意味する「平人」、普通の人やただの人を意味する「凡人」などがあります。
数奇者の類語
数奇者の類語・類義語としては、物好きな人を意味する「好事家」、風流の趣味を解する人や風流を好む人を意味する「風流人」、茶の湯を好む人や茶道に通じた人を意味する「茶人」、色事の好きな人を意味する「好色家」などがあります。
傾奇者の例文
この言葉がよく使われる場面としては、異風を好み、華美な風体をしたり、異様な言動をしたりする者を表現したい時などが挙げられます。
例文1や例文2にあるように、傾奇者という言葉は戦国時代から使われている言葉です。例文3から例文5のように、現在では、派手で破天荒な服装言動をする風変りな人を指す言葉になっています。
数奇者の例文
この言葉がよく使われる場面としては、物好きな人、風流を好む人、好色な人を表現したい時などが挙げられます。
例文1や例文2の数奇者は「物好きな人」の意味で、例文3や例文4の数奇者は「風流を好む人」の意味で用いられています。例文5の数奇者は、好色な人の意味で用いられています。
傾奇者と数奇者という言葉は、どちらも「物好きな変わり者」を表します。どちらの言葉を使うか迷った場合、より変わり者であることを誇張したい時は「傾奇者」を使うようにしましょう。