似た意味を持つ「愛想」(読み方:あいそ)と「愛嬌」(読み方:あいきょう)の違いを例文を使って分かりやすく解説しているページです。
どっちの言葉を使えば日本語として正しいのか、迷った方はこのページの使い分け方を参考にしてみてください。
「愛想」と「愛嬌」という言葉は、どちらも「人当たりの良さ」を表しているという共通点があり、本来の意味は少し違いますが混同して使われる傾向があります。
愛想と愛嬌の違い
愛想と愛嬌の意味の違い
愛想と愛嬌の違いを分かりやすく言うと、愛想とは意図的な人当たりの良さを表し、愛嬌とは生来の人当たりの良さを表すという違いです。
愛想と愛嬌の使い方の違い
一つ目の愛想を使った分かりやすい例としては、「よく周りの人から愛想がないと言われます」「お前にはつくづく愛想が尽きる」「つまらない冗談に愛想笑いで返す」「閉店の時間なのでお愛想願います」などがあります。
二つ目の愛嬌を使った分かりやすい例としては、「愛嬌のある子どもは可愛がられる」「あの子は娘はお世辞でも愛嬌があるとは言えない」「英語の先生は愛嬌があって生徒から人気です」「ご愛敬ということで大目に見てください」などがあります。
愛想と愛嬌の使い分け方
愛想と愛嬌という言葉は、どちらも人当たりの良さや、相手に好印象を与えるような態度などを表しますが、厳密な意味や使い方には違いがあります。
愛想とは、「愛想笑い」「お愛想で挨拶する」のような使い方で、意識的に他人に良い印象を与えようとする様子や、相手の機嫌をとろうとする振る舞いを表します。意識して他人に好かれようとするニュアンスがある言葉です。
一方の愛嬌とは、にこやかでかわいらしいことや、ひょうきんで憎めない表情やしぐさを意味します。愛想という言葉のような意図的なニュアンスはなく、自然と人当たりの良さがにじみ出る様子を表す言葉です。
愛想と愛嬌の英語表記の違い
愛想を英語にすると「amiability」「friendliness」「hospitality」となり、例えば上記の「愛想の悪いウエイトレス」を英語にすると「unfriendly waitress」となります。
一方、愛嬌を英語にすると「attractiveness」「cuteness」「charm」となり、例えば上記の「愛嬌のある」を英語にすると「charming」となります。
愛想の意味
愛想とは
愛想とは、人に接するときの態度、人当たりのいい態度を意味しています。
その他にも、「人に対する好意や信頼感」「多くお愛想の形で、相手の機嫌をとるため言動、客などに対するもてなしや心遣い、飲食店などの勘定」の意味も持っています。
愛想の読み方
愛想の読み方は、「あいそ」「あいそう」の二通りありますが、「あいそ」と読まれることが普通です。ただし、不愛想は「ぶあいそう」読み、「ぶあいそ」と読むことはありません。
表現方法は「愛想が尽きる」「愛想を尽かされる」「お愛想お願いします」
「愛想が尽きる」「愛想を尽かされる」「お愛想お願いします」などが、愛想を使った一般的な言い回しです。
愛想の使い方
「嫁はいつも愛想笑いを浮かべている」「誰にでも愛想がいい女だ」の文中で使われている愛想は「人当たりのいい態度」、「言い訳ばかりで愛想を尽かす」「わがままばかり言ってたら愛想尽かされるよ」の文中で使われている愛想は「人に対する好意」の意味で使われています。
一方、「お愛想を言って機嫌をとる」の文中で使われている愛想は「相手の機嫌をとるため言動」の意味で、「何のお愛想もなくて失礼しました」の文中で使われている愛想は「もてなし」の意味で、「お愛想をお願いします」の文中で使われている愛想は「飲食店などの勘定」の意味で使われています。
愛想という言葉は、複数の意味を持っているため、文脈により意味を捉える必要があります。愛想の「愛」は可愛がり慈しむこと、「想」は心に思い浮かべることを表し、愛想とは、基本的に他人を喜ばせるための振る舞いや言動などを表現します。
「愛想がいい」「愛想がない」の意味
上記の例文にある「愛想がいい」とは、人が好感をもてる態度や表情をしている様子を意味します。反対に、「愛想がない」とは、人に接する対応が冷たいさまや、態度がそっけないさまを意味します。
「愛想笑い」の意味
愛想を用いた日本語には「愛想笑い」があります。愛想笑いとは、人の機嫌を取るための笑いを意味します。相手に良い印象や好感を与えようとして浮かべる、ちょっとした笑いのことです。
「愛想をふりまく」は誤り
愛想を用いた誤った言い回しには「愛想をふりまく」があります。正しくは「愛嬌をふりまく」であり、誰にでもにこやかな態度をとることや、周囲の人みんなに愛想よくすることを意味します。「愛想をふりまく」はよく見かける表現ですが、本来の言い方ではありません。
愛想の対義語
愛想の対義語・反対語としては、そっけなくつっけんどんなことを意味する「無愛想」などがあります。
愛想の類語
愛想の類語・類義語としては、よい感じや好ましい印象を意味する「好感」、かわいらしく守ってあげたくなる気持ちを起こさせることを意味する「可憐」、親切で真心を尽くした心くばりを意味する「懇情」、心のこもったもてなしを意味する「ホスピタリティー」などがあります。
愛嬌の意味
愛嬌とは
愛嬌とは、にこやかで、可愛らしいことを意味しています。
その他にも、「ひょうきんで憎めない表情やしぐさ」「相手を喜ばせるような言葉や振る舞い」「ちょっとしたサービス、座興」の意味も持っています。
愛嬌は愛敬とも表記可能
愛嬌は「愛敬」とも書きますが、一般的には「愛嬌」と表記されています。
愛嬌の読み方
愛嬌の読み方は「あいきょう」です。古くは「あいぎょう」と読まれていましたが、清音化し「あいきょう」となりました。
表現方法は「愛嬌を振りまく」「愛嬌がある」「愛嬌がない」
「愛嬌を振りまく」「愛嬌がある」「愛嬌がない」などが、愛嬌を使った一般的な言い回しです。
愛嬌の使い方
「愛嬌がある女性はモテます」「愛嬌がある男性は女性に人気です」の文中で使われている愛嬌は「にこやかで可愛らしいこと」の意味で、「この犬は愛嬌のある顔をしている」「愛嬌たっぷりの笑顔」の文中で使われている愛嬌は「憎めない表情やしぐさ」の意味で使われています。
一方、「だれ彼かまわず愛嬌を振りまく」の文中で使われている愛嬌は「相手を喜ばせるような言動」の意味で、「へたな歌でもご愛嬌」「うっかりミスはご愛嬌で見逃してください」などの文中で使われている愛嬌は「ちょっとしたサービス」の意味で使われています。
愛嬌という言葉は、複数の意味があるため、文脈により意味を判別する必要があります。愛嬌の「愛」は可愛がること、「嬌」は可愛らしいことを表し、愛嬌とは、相手に感じのいい印象を与える態度や言動などを表現するプラスイメージの言葉です。
ことわざ「男は度胸、女は愛嬌」の意味
愛嬌を用いたことわざには、「男は度胸、女は愛嬌」があります。「男は度胸、女は愛嬌」とは、男にとっては物怖じしない度胸が、女には可愛らしくにこやかな愛嬌が大切だという意味です。男女それぞれに相応しい資質を、「度胸」「愛嬌」と韻を踏んで示したことわざです。
愛嬌の対義語
愛嬌の対義語・反対語としては、かわいげのないことを意味する「無愛嬌」などがあります。
愛嬌の類語
愛嬌の類語・類義語としては、可憐かれんさや愛おしさが感じられる様子を意味する「愛らしい」、活発でかわいらしいさまを意味する「キュート」、魅力的で人の心をひきつけるさまを意味する「チャーミング」などがあります。
愛想の例文
この言葉がよく使われる場面としては、人当たりのいい態度、人に対する好意、相手の機嫌をとるための言葉や振る舞い、客などに対する心遣い、飲食店などの勘定を表現したい時などが挙げられます。
例文3の「愛想が尽きる」とは、好意や信頼が持てなくなることを意味し、好意や愛情がすっかりなくなってしまうことを表します。
例文5の「お愛想」は、勘定の意味で用いられています。この「お愛想」は、もともと店側がお客に勘定を支払ってもらうときに「愛想尽かしなことで申し訳ありません」と言っていたことから、「お勘定」を指すようになりました。そのため、客側が使用するのは間違いとする考えがあります。
愛嬌の例文
この言葉がよく使われる場面としては、にこやかで可愛らしいこと、憎めない表情やしぐさ、相手を喜ばせるような言葉や振る舞い、座に興を添えるものを表現したい時などが挙げられます。
例文5の「ご愛嬌」は、「座に興を添えるもの」の意味で用いられ、その場かぎりの冗談や戯れを表しています。この意味で使用する場合、「ご」という接頭語を付けることがほとんどです。
愛想と愛嬌という言葉は、どちらも「人当たりの良さ」を表します。どちらの言葉を使うか迷った場合、意図的な人当たりの良さを表現したい時は「愛想」を、生まれながらの人当たりの良さを表現したい時は「愛嬌」を使うようにしましょう。