似た意味を持つ「社会主義」(読み方:しゃかいしゅぎ)と「共産主義」(読み方:きょうさんしゅぎ)の違いを例文を使って分かりやすく解説しているページです。
どっちの言葉を使えば日本語として正しいのか、迷った方はこのページの使い分け方を参考にしてみてください。
「社会主義」と「共産主義」という言葉は、どちらも平等な社会を実現しようとする思想を意味しているという共通点があり、本来の意味は少し違いますが混同して使われる傾向があります。
社会主義と共産主義の違い
社会主義と共産主義の意味の違い
社会主義と共産主義の違いを分かりやすく言うと、共産主義は社会主義が更に進化した思想という違いです。
社会主義と共産主義の使い方の違い
一つ目の社会主義を使った分かりやすい例としては、「多数の社会主義者が弾圧された時期があった」「18世紀に社会主義の思想が生まれた」「日本は世界で最も成功した社会主義国と揶揄された」などがあります。
二つ目の共産主義を使った分かりやすい例としては、「共産主義という思想は社会主義が発展したものだ」「共産主義社会の実現をめざす政党を支持する」「共産主義国家では皆が平等である」などがあります。
社会主義と共産主義は資本主義と対の思想
社会主義と共産主義という言葉は、どちらも資本主義と対となる思想であり、平等な社会を実現しようとする思想や運動を表します。同じ方向性の社会思想ですが、それぞれの定義は異なります。
社会主義と共産主義の使い分け方
社会主義は、資本主義の社会的不平等や矛盾を批判し、新たな社会を建設しようとする考えから生まれました。市場経済を国家によって統制する思想が柱になっています。利益は働いた人に均等に分配し、それをどのように使うかは個人の自由です。
一方の共産主義は、利益を均等に分配するのはもちろん、消費活動にも差をつけるべきではなく、財産の私有を否定する考えが柱になっています。すべての財産を共有することによって貧富の差のない社会を実現しようとする思想であり、社会主義のような国家による統制も必要でないとする考え方です。
つまり、共産主義は社会主義が更に進化したものであり、あらゆる面において平等である社会を実現しようとする思想であることが、社会主義と共産主義の違いになります。
社会主義と共産主義の英語表記の違い
社会主義を英語にすると「socialism」となり、例えば上記の「社会主義者」を英語にすると「socialist」となります。一方、共産主義を英語にすると「communism」となり、例えば上記の「共産主義という思想」を英語にすると「doctrine called Communism」となります。
社会主義の意味
社会主義とは
社会主義とは、生産手段の社会的共有・管理によって平等な社会を実現しようとする思想・運動を意味しています。
その他にも、マルクス主義で、資本主義から共産主義へと続く第一段階としての社会体制の意味も持っています。
社会主義の使い方
「キューバは社会主義国です」「中国は1980年代に社会主義市場経済を導入した」「社会主義のメリットデメリットを簡潔に述べなさい」「社会主義国を一覧にまとめる」などの文中で使われている社会主義は、「社会的共有によって平等な社会を実現しようとする思想」の意味で使われています。
一方、「マルクスの社会主義論を読み解く」「社会主義は共産主義への過渡期だと位置づけた」「社会主義は共産主義の未完成形とも言える」などの文中で使われている社会主義は、「資本主義から共産主義へと続く社会体制」の意味で使われています。
社会主義とは、労働力を含む商品の自由競争という資本主義社会の原則を批判して、生産手段の共有と共同管理や、計画的な生産と平等な分配を要求する思想や運動を表す言葉です。社会主義には「科学的社会主義」と「空想的社会主義」があります。
「科学的社会主義」の意味
科学的社会主義とは、歴史や社会構造の科学的分析に基づいて、社会主義社会への移行は歴史的必然であると主張す社会主義思想のことです。
「空想的社会主義」の意味
空想的社会主義とは、資本主義のはらむ矛盾を直観的に指摘し未来社会の理想像を描いた思想です。ユートピア社会主義とも言います。
社会主義の対義語
社会主義の対義語・反対語としては、資本家が労働者から労働力を商品として買いそれを上回る価値を持つ商品を生産して利潤を得る経済構造を意味する「資本主義」、国家などによる干渉や規制を受けない経済体制を意味する「自由経済」などがあります。
社会主義の類語
社会主義の類語・類義語としては、初期の社会主義思想の総称を意味する「空想的社会主義」、経済の資源配分を国家の物財バランスに基づいた計画によって配分される体制を意味する「計画経済」などがあります。
社会主義の社の字を使った別の言葉としては、人と人とのつきあいや世間での交際を意味する「社交」、国の全額出資によって設立される特殊法人を意味する「公社」、同じ神仏を信仰している人々で結成している団体を意味する「講社」などがあります。
共産主義の意味
共産主義とは
共産主義とは、財産の私有を否定し、生産手段・生産物などすべての財産を共有することによって貧富の差のない社会を実現しようとする思想・運動を意味しています。
その他にも、マルクス主義で、プロレタリア革命によって実現される人類史の発展の最終段階としての社会体制の意味も持っています。
共産主義の使い方
「1950年代にカンボジアで共産主義運動が広がった」「赤い星は共産主義のシンボルである」「彼は共産主義国家を目指す革命家だ」などの文中で使われている共産主義は、「全ての財産を共有することによって貧富の差のない社会を実現しようとする思想」の意味で使われています。
一方、「カールマルクスは共産主義の父と呼ばれている」「マルクスとエンゲルスは共産主義思想を体系化した」「共産主義の元となった資本論を読破した」などの文中で使われている共産主義は、「人類史の発展の最終段階としての社会体制」の意味で使われています。
共産主義という言葉は、広義には、私有財産を否定して財産の共有を主張する思想を指しますが、狭義には、マルクス主義の唱える、社会主義社会の究極的段階である無搾取・無階級の社会を理想とする考え方のことです。
「反共」「防共」「容共」は共産主義の言葉
共産主義に関する言葉に「反共」「防共」「容共」があります。反共とは共産主義に反対すること、防共とは共産主義の侵入や拡大を防ぎとめること、容共とは共産主義を容認することを意味します。
共産主義の対義語
共産主義の対義語・反対語としては、社会のあらゆる領域における個人の自由な活動を重んずる思想的立場を意味する「自由主義」、各個人の私的所有権を広く認め市場において取引し資源配分を行うことを意味する「市場経済」などがあります。
共産主義の類語
共産主義の類語・類義語としては、私有財産制を廃止し生産手段を社会の共有にすることによって経済的平等を図る思想を意味する「コミュニズム」、共産主義思想や機構を認め受け入れることを意味する「赤化」などがあります。
共産主義の共の字を使った別の言葉としては、社会全体あるいは国や公共団体がそれにかかわることを意味する「公共」、二つ以上のものが同時に生存・存在することを意味する「共存」、複数の組織・団体が共同して闘争することを意味する「共闘」などがあります。
社会主義の例文
この言葉がよく使われる場面としては、社会的共有によって平等な社会を実現しようとする思想を表現したい時などが挙げられます。
例文3にあるように社会主義国家の数は少なく、2020年現在では中華人民共和国、北朝鮮、ベトナム、ラオス、キューバの5か国です。例文3や例文5について、社会主義というしくみが崩壊した理由には、平等な社会ゆえに経済成長が難しいことが挙げられます。
共産主義の例文
この言葉がよく使われる場面としては、財産の私有を否定し、全ての財産を共有することによって平等な理想社会をつくろうとする思想を表現したい時などが挙げられます。
例文3にある「共産主義者宣言」はドイツの経済学者であるマルクスと、思想家のエンゲルスによって書かれた本です。例文4にあるように共産主義のシンボルカラーは「赤」であり、その理由は世界各国の共産党が「血による革命」を掲げていたことからと言われています。
社会主義と共産主義という言葉は、どちらも平等な社会を実現しようとする思想を表す言葉です。共産主義は社会主義が更に進化したものであり、あらゆる面において平等である社会を実現しようとする思想であることが、社会主義と共産主義の違いであることを覚えておきましょう。