似た意味を持つ「稚拙」(読み方:ちせつ)と「幼稚」(読み方:ようち)の違いを例文を使って分かりやすく解説しているページです。
どっちの言葉を使えば日本語として正しいのか、迷った方はこのページの使い分け方を参考にしてみてください。
「稚拙」と「幼稚」という言葉は、どちらも十分なレベルに達していないことを意味しているという共通点があり、本来の意味は少し違いますが混同して使われる傾向があります。
稚拙と幼稚の違い
稚拙と幼稚の意味の違い
稚拙と幼稚の違いを分かりやすく言うと、稚拙とは技能的なことに用いられ、幼稚とは精神的なことに用いられるという違いです。
稚拙と幼稚の使い方の違い
一つ目の稚拙を使った分かりやすい例としては、「私の稚拙な英語で相手を混乱させてしまった」「こんな稚拙な表現では伝わらないよ」「いつも稚拙な文章になってしまう」「稚拙な言葉しか出てこなかった」などがあります。
二つ目の幼稚を使った分かりやすい例としては、「息子は幼稚な考えしか出来ない」「弟は幼稚園に通っている」「そんな幼稚な遊びはしたくない」「幼稚な発想しか浮かばない」「幼稚な大人が増えている」などがあります。
稚拙と幼稚の使い分け方
稚拙と幼稚という言葉は、どちらも成長の程度や、技術などが十分なレベルに達していないことを表しますが、二つの言葉には違いがあります。
稚拙とは、幼稚で未熟なことを意味し、「稚拙な英語」とは文法や語彙などが不完全な英語であることを表します。「拙」には、つたないことの意があり、技能などが子どもじみていて下手なことを表す時に使われる言葉です。
一方、幼稚とは、子どもっぽいことを意味し、「幼稚な考え」とは子供っぽい、実際の年齢にふさわしくない短絡的な考えを表します。技能的なことよりも、精神的な未熟さを表す時に使われています。
稚拙と幼稚の英語表記の違い
稚拙も幼稚も英語にすると「immature」「poor」「childish」となり、例えば上記の「稚拙な英語」を英語にすると「poor English」となります。
稚拙の意味
稚拙とは
稚拙とは、幼稚で未熟なことを意味しています。
表現方法は「稚拙な考え」「稚拙な文章」「稚拙な発言」
「稚拙な考え」「稚拙な文章」「稚拙な発言」「稚拙な人」「稚拙ではありますが」などが、稚拙を使った一般的な言い回しです。
稚拙の使い方
稚拙を使った分かりやすい例としては、「稚拙な字で恥ずかしい」「稚拙な嘘はすぐにバレる」「言葉遣いに稚拙な印象を受けた」「彼は稚拙な考え方をする人だ」「表現に稚拙さが目立つ文になっている」などがあります。
その他にも、「稚拙な文章ですみません」「大人とは思えない稚拙な動機からの犯行だった」「手口の稚拙な犯行であった」「他人を不愉快にする稚拙な行為はやめなさい」「稚拙ながら趣味で小説を書いています」などがあります。
稚拙という言葉の「稚」とは、年が若いことや成熟していないことを表し、「拙」とは、つたないことや不味いことを表します。稚拙とは、幼稚で未熟なことや、子どもじみていて下手なことを意味する言葉です。
稚拙は、他人の作品や技能などが十分なレベルに達していないと批判的に表現する時に用いられます。また、自分の作品などを謙遜していう時にも使われています。
「稚拙美」の意味
稚拙を用いた日本には「稚拙美」があり、幼稚でつたない一方で、素朴さや純粋さが感じられる美のことを意味します。特に、古代ギリシアのアルカイック彫刻のもつ古拙な美しさを指すことがあります。
稚拙の対義語
稚拙の対義語・反対語としては、非常に巧みであることを意味する「巧妙」、経験を積んで物事をするのに巧みで抜け目のないことを意味する「老巧」、物事に慣れて手際よく上手にできることを意味する「熟練」、人格や技術などが円満に発達し豊かであることを意味する「円熟」などがあります。
稚拙の類語
稚拙の類語・類義語としては、十分に熟達していないことを意味する「生熟れ」、人格や言動などが未熟であることを意味する「青臭い」、考え方などが幼稚で未熟であることを意味する「乳臭い」、世慣れていないことや経験が少なく未熟であることを意味する「若い」などがあります。
幼稚の意味
幼稚とは
幼稚とは、年齢が幼いこと、子供であることを意味しています。
その他にも、考え方・やり方などが未発達なことや、子供っぽいことの意味も持っています。
表現方法は「幼稚な人」「幼稚な女」「幼稚さ」
「幼稚な人」「幼稚な女」「幼稚さ」などが、幼稚を使った一般的な言い回しです。
幼稚の使い方
「幼稚な弟がいます」「うちの幼稚園お弁当はキャラ弁禁止です」「幼稚園と保育園の違いは預かる時間だけではありません」「幼稚園児の甥っ子が可愛い」などの文中で使われている幼稚は、「年齢が幼いこと」の意味で使われています。
一方、「高校生にもなって幼稚な遊びをしている」「考えが幼稚な人だ」「分かりやすい幼稚なからくりだった」「ネットスラングが幼稚化している」などの文中で使われている幼稚は、「子供っぽいこと」の意味で使われています。
幼稚の語源
幼稚という言葉の「幼」「稚」は、どちらも幼いこと、年が若いことを表します。幼稚とは、年齢が低く、子供であることが原義となる言葉です。転じて、実年齢よりも未発達であることや、子供じみていることの意味も持ち、この意味で使われることが多くなりました。
「幼稚産業」の意味
幼稚という言葉を用いた日本語には「幼稚産業」があり、自由貿易のもとでは外国との競争に耐えられない未発達の産業のことを意味します。このような幼稚産業について、海外からの輸入品などを規制や関税などで保護することで守ろうとする考えを「幼稚産業保護論」と言います。
幼稚の対義語
幼稚の対義語・反対語としては、多く経験を積み物事に慣れ巧みであることを意味する「老練」、年をとり経験を積んで熟達していることを意味する「老成」、年とっていることや高齢を意味する「老齢」、人の心や身体などが十分に成長することを意味する「成熟」などがあります。
幼稚の類語
幼稚の類語・類義語としては、幼少であることや幼稚であることを意味する「幼い」、学問や技術などの経験や修練がまだ十分でないことを意味する「未熟」、年齢の若いことを意味する「年若」「年少」「若年」、少年より年若い年齢を意味する「幼年」などがあります。
稚拙の例文
この言葉がよく使われる場面としては、子どもじみていて下手なことを表現したい時などが挙げられます。
例文2にあるように、稚拙という言葉は、謙遜の気持ちを表す時にも使われています。「拙」には、自分のことを謙遜していう語の意味もあり、「拙者」とは自分を指すことをへりくだって言う語です。
幼稚の例文
この言葉がよく使われる場面としては、年齢が幼いこと、考え方などが未発達なことを表現したい時などが挙げられます。
例文1にある「幼稚園」とは、満3歳から小学校就学までの幼児を教育する目的で、年齢に相応しい適切な環境を整えた教育施設のひとつです。幼稚園は文部科学省の管轄下にあり、保育園は厚生労働省の管轄下にあるという違いがあります。
稚拙と幼稚という言葉は、どちらも十分なレベルに達していないことを表す時に使われています。どちらの言葉を使うか迷った場合、技能的なレベルの低さを表現をしたい時は「稚拙」を、精神的なレベルの低さを表現したい時は「幼稚」を使うようにしましょう。