似た意味を持つ「措置」(読み方:そち)と「処置」(読み方:しょち)の違いを例文を使って分かりやすく解説しているページです。
どっちの言葉を使えば日本語として正しいのか、迷った方はこのページの使い分け方を参考にしてみてください。
「措置」と「処置」という言葉は、どちらも「物事に対処すること」意味しているという共通点があり、本来の意味は少し違いますが混同して使われる傾向があります。
措置と処置の違い
措置と処置の意味の違い
措置と処置の違いを分かりやすく言うと、措置とは物事に対処することを意味し、処置とは物事に対する当座の手当てを表すという違いです。
措置と処置の使い方の違い
一つ目の措置を使った分かりやすい例としては、「寄付をすると税制上の優遇措置が受けられるはずです」「景品表示法に基づく措置命令が出された」「万全の措置を講じなければならない」などがあります。
二つ目の処置を使った分かりやすい例としては、「再発防止を図るために是正処置をとる」「漏えいを防ぐための適切な処置を講じる」「応急処置や薬剤の使い方についてご説明します」などがあります。
措置と処置の使い分け方
措置と処置という言葉は、どちらも事態や状況に応じて対処することを表し、「措置を取る」「処置を取る」のように同じような表現をします。二つの言葉はとても似ていますが、厳密な意味や使い方には違いがあります。
措置とは、事態に応じて取り計らい、始末をつけることを意味します。物事の状態や成り行きに対応して、それが上手く運ぶように考えて手当てすることを表し、「テロ対策特別措置法」「租税特別措置法」「措置命令」など法令の名称にも数多く用いられています。
処置とは、その場や状況に応じて始末をつけることを意味します。移り変わる物事に対応して取りさばき、きちんと処理することを表す言葉です。また、傷や病気の手当てをすることの意味を持ち、「応急処置」とは急場の間に合わせに取り合えず施す処置や手当てのことです。
つまり、二つの言葉は物事に対処することを表しますが、処置という言葉には一時的な当座の手当ての意味合いが強くあります。この点が、措置と処置という言葉の明確な違いになります。
措置と処置の英語表記の違い
措置も処置も英語にすると「measures」「step」となり、例えば上記の「優遇措置」を英語にすると「privilege measures」となります。
措置の意味
措置とは
措置とは、事態に応じて必要な手続きをとること、取り計らって始末をつけること、処置を意味しています。
表現方法は「措置入院」「措置を講じる」「措置をとる」
「措置入院」「措置を講じる」「措置をとる」などが、措置を使った一般的な言い回しです。
措置の使い方
措置を使った分かりやすい例としては、「対抗措置をとる構えを示す」「法人税の税制上の優遇措置があります」「次回の英語のテストに救済措置はありません」「措置入院の期間はどれぐらいですか」などがあります。
その他にも、「必要な措置を講じることが義務付けられています」「児童養護施設は措置制度によって運営されている」「租税特別措置法41の18の3を確認してください」「宅建法における手付金の保全措置について解説します」などがあります。
措置の「措」は訓読みで「はからう」と読み、考え合わせて適切に処置することを表し、「置」は物事に決まりをつけることを表します。措置とは、事態の解決をつけるために取り計らうこと、物事を取り計らって始末することを意味する言葉です。
「措置制度」の意味
措置を用いた日本語には、「措置制度」があります。措置制度とは、行政の権限と責任によって行う行政処分のことです。特に、福祉サービスを必要としている人に対して、行政が必要性を判断して利用者のサービスを決定することを表します。
措置の対義語
措置の対義語・反対語としては、そのままにして放っておくことを意味する「放置」などがあります。
措置の類語
措置の類語・類義語としては、相手の態度や事件の状況に対応するための方法や手段を意味する「対策」、周囲の状況などに合わせて事をすることを意味する「対応」、ある事柄や状況に合わせて適当な処置をとることを意味する「対処」などがあります。
処置の意味
処置とは
処置とは、その場や状況に応じた判断をし手だてを講じて、物事に始末をつけることを意味しています。
その他にも、「傷や病気の手当てをすること」の意味も持っています。
表現方法は「怪我の処置」「適切な処置をとる」「ご処置」
「怪我の処置」「適切な処置をとる」「ご処置」などが、処置を使った一般的な言い回しです。
処置の使い方
「すみやかに適切な処置を講じる」「必要な処置をとるように請求する」「セキュリティー処置をお勧めします」「万策尽きて処置なしの状態です」などの文中で使われている処置は、「状況に応じて物事に始末をつけること」の意味で使われています。
一方、「未処置歯が3本ありました」「傷を洗ってから処置をします」「外来処置室はどちらですか」「適切な処置のために数日間の入院が必要です」「点滴処置台を持ってきてください」などの文中で使われている処置は、「傷や病気の手当てをすること」の意味で使われています。
処置の「処」は物事をしかるべく取りさばくことを表す漢字です。始末することを表す「置」と結びつき、処置とは、物事を取り計らって肩を付けることを意味する言葉です。また、「応急処置」のような使い方で、傷や病気の手当てをすることも意味します。
「処置歯」の意味
処置を用いた日本語には「処置歯」があります。処置歯とは、むし歯の治療が済んでいる歯のことです。反対に、すぐに治療を必要とする状態の歯は「未処置歯」と言い、歯の健診では「健全歯」「未処置歯」「処置歯」の3つに分類することが一般的です。
「処置入院」は誤用
処置を用いた誤った表現には「処置入院」があります。正しくは「措置入院」であり、措置入院とは、精神科病院への強制的入院を意味します。
処置の対義語
処置の対義語・反対語としては、手をつけないでそのままに放っておくことを意味する「野放し」などがあります。
処置の類語
処置の類語・類義語としては、物事を取りさばいて始末をつけることを意味する「処理」、物事の締めくくりをつけることを意味する「始末」、取り扱いを決めて物事の決まりをつけることを意味する「処分」などがあります。
措置の例文
この言葉がよく使われる場面としては、判断を下して物事を取り計らうことを表現したい時などが挙げられます。
例文3にある「租税特別措置」とは、特定の政策目標を達成するため、税制上の特例として租税を減免あるいは増徴する措置のことです。
処置の例文
この言葉がよく使われる場面としては、判断を下して物事の取り扱い方を決めること、傷や病気の手当てをすることを表現したい時などが挙げられます。
例文1や例文2にある「処置」は、物事の取り扱い方を決めることの意味で用いられています。例文3から例文5の「処置」は、傷や病気の手当てをすることを意味します。例文2の処理と処置の違いは、処理は物に対して使用され、処置は物だけでなく人に対しても用いられる点にあります。
措置と処置という言葉は、どちらも「事態や状況に応じて物事に対処すること」を表します。どちらの言葉を使うか迷った場合、物事に対する当面の手当てを表現したい時には「処置」を使うようにしましょう。