似た意味を持つ「先入観」(読み方:せんにゅうかん)と「偏見」(読み方:へんけん)の違いを例文を使って分かりやすく解説しているページです。
どっちの言葉を使えば日本語として正しいのか、迷った方はこのページの使い分け方を参考にしてみてください。
「先入観」と「偏見」という言葉は、どちらも固定した考えや見方を意味しているという共通点があり、本来の意味は少し違いますが混同して使われる傾向があります。
先入観と偏見の違い
先入観と偏見の意味の違い
先入観と偏見の違いを分かりやすく言うと、先入観とは思い込み、偏見とは不公平な考えという違いです。
先入観と偏見の使い方の違い
一つ目の先入観を使った分かりやすい例としては、「思い込みや先入観を捨てなさい」「先入観にとらわれないようにする」「物事の正しい判断には先入観が邪魔になる」「自然と先入観を持つことがある」などがあります。
二つ目の偏見を使った分かりやすい例としては、「人々は偏見なしに仲良く暮らすべきだ」「女性は男性より劣っているなど偏見だ」「偏見が差別という社会問題を生み出す」「偏見の多い小さな島で生まれ育った」などがあります。
先入観と偏見の使い分け方
先入観と偏見という言葉は、どちらも以前から持っている固定した考えや見方を意味し、混同して使われますが厳密な意味は異なります。
先入観とは、最初に得た情報により作り上げられる固定的な観念を意味します。それによって自由な思考が妨げられる場合に用いられる言葉です。例えば、ブランド物の服を身に付けている人だから「あの人は金持ちだろう」と思い込み、実際は貧乏なことを見抜けないような固定観念です。
一方、偏見とは、かたよった物の見方や考え方を意味し、ある物事あるいは集団や個人に対して、客観的な根拠なしに抱く非好意的な判断を表します。社会通念や経験または教育によって植え付けられることもあり、「女性はおしゃべりで議論できない」など公平性に欠ける意見や考え方を表します。
つまり、先入観とは思い込みであり、偏見とは不公平な考えです。また、先入観はポジティブな考えだけでなくネガティブな考えも表しますが、偏見はネガティブな考えのみを表す、という違いがあります。
先入観と偏見の英語表記の違い
先入観を英語にすると「preconception」「preconceived notion」となり、例えば上記の「先入観を捨てる」を英語にすると「throw away preconception」となります。
一方、偏見を英語にすると「prejudice」「bias」となり、例えば上記の「偏見なしに」を英語にすると「without prejudice」となります。
先入観の意味
先入観とは
先入観とは、前もっていだいている固定的な観念であり、それによって自由な思考が妨げられるものを意味しています。
表現方法は「先入観にとらわれる」「先入観を持つ」「先入観をなくす」
「先入観にとらわれる」「先入観を持つ」「先入観をなくす」などが、先入観を使った一般的な言い回しです。
先入観の使い方
先入観を使った分かりやすい例としては、「師匠に先入観を捨てろと忠告された」「子どもに先入観を受け付けるな」「先入観にとらわれることは危険だ」「先入観に基づく社会的偏見だ」「外国に対して先入観を抱く」などがあります。
その他にも、「先入観にとらわれると自由な発想ができない」「先入観を捨てて物をみる」「先入観で人を判断するな」「正しい見方には先入観が邪魔になる」「先入観や思い込みによって誤った判断をする」などがあります。
先入観とは、特定の事物や人に関して、最初に知ったことによって作り上げられた固定的な観念や見解です。特に自由な思考が妨げられるような場合に用いられ、好意的な場合と非好意的な場合とがあります。「先入主」「先入見」とも言います。
好意的な先入観の具体例
好意的な先入観とは、「あの先輩は優しそう」「高級レストランだから美味しいはず」など、見ただけの印象や一般的に言われていることで、プラスイメージを持つことです。実際には厳しい先輩であったり、美味しくないレストランであっても、プラスイメージにより間違った評価をしてしてしまいます。
非好意的な先入観の具体例
逆に非好意的な先入観とは、「あの人は仕事ができなそう」「安いから粗悪な品だろう」など、実際にコミュニケーションを取ったり、経験したり使ってみる前にマイナスイメージを持つことです。マイナスイメージにとらわれて、接触を避けたり、試してみないなどの弊害をもたらすこともあります。
先入観の類語
先入観の類語・類義語としては、いつも頭から離れないでその人の思考を拘束するような考えを意味する「固定観念」、深く信じこむことや固く心に決めることを意味する「思い込み」、ある立場にとらわれた見方を意味する「成心」などがあります。
偏見の意味
偏見とは
偏見とは、かたよった見方や考え方であり、ある集団や個人に対して客観的な根拠なしに抱かれる非好意的な先入観や判断を意味しています。
表現方法は「偏見をなくす」「偏見をもつ」「偏見だ」
「偏見をなくす」「偏見をもつ」「偏見だ」などが、偏見を使った一般的な言い回しです。
偏見の使い方
偏見を使った分かりやすい例としては、「偏見や差別は無知から生まれる」「根拠のない偏見にとらわれるな」「偏見を社会心理学からアプローチする」「彼は頭が固くて偏見が強い人だ」「彼女の考えに偏見はない」「正常化の偏見により避難が遅れた」などがあります。
その他にも、「世の中の偏見をなくしたい」「医療従事者が世間からの偏見に悩む」「独断と偏見により面白いネタを集めました」「強い潜在的な偏見があるコミュニティだ」「見た目からの偏見に苦しめられてきた」などがあります。
偏見とは、文字通り「偏った見方」であり、公平を欠いている考えや意見を意味します。ある種の事物あるいは特定の個人や集団に対して、客観的な事実の裏づけや合理的根拠がないのに示す非好意的な偏った判断や意見を表す言葉です。
「正常化の偏見」の意味
上記の例文にある「正常化の偏見」とは「正常性バイアス」とも言われ、異常事態に直面しても正常の範囲内であると判断し、平静を保とうとする人間の心理傾向のことです。これが作用すると、災害時の避難や初期対応が遅れる可能性が指摘されています。
「人種的偏見」の意味
偏見を用いた日本語には「人種的偏見」があります。理論的または客観的根拠がないにも関わらず、特定の人種ないしは民族的集団に対して持つ態度や感情を意味します。多くの場合、特定集団に対する好意的な態度よりも、憎悪や悪意などを含んだ態度を指します。
「偏見報道」は誤り
偏見という言葉の誤った言い回しには「偏見報道」があります。正しくは「偏向報道」であり、特定の立場からの主張を否定もしくは肯定する意図をもって情報操作が行われる報道のことです。
偏見の対義語
偏見の対義語・反対語としては、仏語で正しく真実を見ることを意味する「正見」、特定の思想や立場をとらず中間に立つことを意味する「中立」などがあります。
偏見の類語
偏見の類語・類義語としては、公平でないかたよった見解を意味する「僻見」、かたよった考えをかたくなに守って他の意見に耳をかさないことを意味する「偏執」、偏った物の見方や先入観にとらわれた物の見方を意味する「色眼鏡」などがあります。
先入観の例文
この言葉がよく使われる場面としては、自由な思考が妨げられるような、最初に知ったことによって形成された固定的な観念や見解を表現したい時などが挙げられます。
例文5にある「先入観にとらわれる」とは、予め持っている見方が頭から離れずに、その人の思考を拘束しているさまを意味し、「とらわれる」の漢字は「囚われる」「捕らわれる」であり、自由に考えることが出来なくなるさまを表します。「バイアスが掛かる」とも言い換えられます。
偏見の例文
この言葉がよく使われる場面としては、かたよったものの見方や考え方、公平を欠いている意見を表現したい時などが挙げられます。
例文4にある「無意識の偏見」とは「アンコンシャス・バイアス」とも言われ、自分自身が気づいていないものの見方や捉え方の偏りを表します。例文5にあるように、偏見と差別は密接な関係があると言われています。人種的偏見と人種差別の関係性もその一つです。
先入観と偏見という言葉は、どちらも固定した考えや見方を意味する言葉です。どちらの言葉を使うか迷った場合、予め持っている思い込みを表現したい時は「先入観」を、公平を欠いている偏った考えを表現したい時は「偏見」を使うようにしましょう。