似た意味を持つ「包括的」(読み方:ほうかつてき)と「網羅的」(読み方:もうらてき)の違いを例文を使って分かりやすく解説しているページです。
どっちの言葉を使えば日本語として正しいのか、迷った方はこのページの使い分け方を参考にしてみてください。
「包括的」と「網羅的」という言葉は、どちらも物事に対する捉え方を表す言葉という共通点があり、本来の意味は少し違いますが混同して使われる傾向があります。
包括的と網羅的の違い
包括的と網羅的の意味の違い
包括的と網羅的の違いを分かりやすく言うと、包括的とは一つにまとめることを表し、網羅的とは全て取り入れることを表すという違いです。
包括的と網羅的の使い方の違い
一つ目の包括的を使った分かりやすい例としては、「包括的なカリキュラムが強みの学校です」「個々の問題を包括的に考える必要がある」「包括的支援事業について区役所に問い合わせる」「アジアの包括的経済連携を検討する」などがあります。
二つ目の網羅的を使った分かりやすい例としては、「細胞内タンパク質の網羅的解析が必要です」「ライバル会社の情報を網羅的に調べ上げる」「網羅的遺伝子診断を実臨床に導入します」「各要素に分けて網羅的に評価します」などがあります。
包括的と網羅的の使い分け方
包括的と網羅的という言葉は、どちらも物事に対する捉え方や見方を表す時に用いられ、似た表現をする言葉ですが厳密には意味は異なります。
包括的とは、全てをひっくるめているさまを意味します。上記の例文の「包括的に考える」とは、個々の物事を一つにまとめたうえで総合的に考えることです。
一方、網羅的とは、幅広い範囲や分野などにわたっているさまを意味します。「網羅的に考える」とは、幅広い分野やすべての対象について抜けがないように考えることです。
つまり、包括的とはまとめることに重きをおいた表現であり、網羅的とは全て残らず取り入れることに重きをおいた表現になります。
包括的と網羅的の英語表記の違い
包括的も網羅的も英語にすると「comprehensive」「all-to-all」となり、例えば上記の「包括的なカリキュラム」を英語にすると「comprehensive curriculum」となります。
包括的の意味
包括的とは
包括的とは、全てをひっくるめているさまを意味しています。
表現方法は「包括的な視点」「包括的な支援」「包括的な社会」
「包括的な視点」「包括的な支援」「包括的な社会」などが、包括的を使った一般的な言い回しです。
包括的の使い方
包括的を使った分かりやすい例としては、「その案件は包括的に考えるべきだ」「もっと包括的な議論がしたい」「包括的自立支援プログラムのアセスメントシートを見せてください」「包括的経済機構協定に参加する」などがあります。
その他にも、「本市では包括的支援事業に力を入れて参ります」「包括的支援加算の算定方法をきく」「包括的核実験禁止条約が採択された」「包括的民間委託の対象となる施設機能を確認する」などがあります。
包括的の語源
包括的という言葉の「包括」とは、全体をひっくるめて、ひとまとめにすることを意味します。「包」は中の物をつつみこむこと、「括」は分散しているものを一つにまとめることを表す漢字です。包括的とは、全体を包み込んでいるさまや、複数の要素を束ねてひとまとめにすることを意味する言葉です。
「包括的支援事業」の意味
上記の例文にある「包括的支援事業」とは、地域のケアマネジメントを総合的に行うために、介護予防ケアマネジメントや支援、権利擁護事業などを包括的に行う事業のことです。 一般に、これらの事業は自治体からの一括委託により、地域包括支援センターが実施しています。
「包括的核実験禁止条約」の意味
包括的という言葉を用いた日本語には「包括的核実験禁止条約」があります。大気圏内外、水中、地下のあらゆる核実験を禁止する条約のことであり、略称CTBTと言います。部分的核実験禁止条約で除外された地下実験を含んだことに、この条約の主眼があります。
包括的の対義語
包括的の対義語・反対語としては、全体を構成しているものを切り離した一つ一つを意味する「個別」、物事の範囲や数量を限ることを意味する「限定」、一つ一つの物事やそれぞれを意味する「一一」、特にそれと定まっていることを意味する「特定」などがあります。
包括的の類語
包括的の類語・類義語としては、全体をとりまとめて締めくくることを意味する「総括」、一つにまとめることやまとめたものを意味する「一括」、個々別々のものを一つに合わせてまとめることを意味する「総合」などがあります。
網羅的の意味
網羅的とは
網羅的とは、物事が幅広い範囲や分野などにわたっているさまを意味しています。
表現方法は「網羅的に考える」「網羅的に把握する」「網羅的にまとめる」
「網羅的に考える」「網羅的に把握する」「網羅的にまとめる」などが、網羅的を使った一般的な言い回しです。
網羅的の使い方
網羅的を使った分かりやすい例としては、「参考文献を網羅的にリストアップする」「網羅的な調査を行う必要はない」「網羅的なセキュリティ管理をお願いしたい」「必要な知識を網羅的に学べる」などがあります。
その他にも、「毒性の定量的網羅的解析が急務だ」「網羅的思考でシステムを設計する」「資格取得について網羅的に解説します」「網羅的リスクアセスメントを実施する」「ツールの脆弱性を網羅的に把握したい」などがあります。
網羅的の語源
網羅的という言葉の「網羅」とは、魚をとる網と、鳥をとる羅(あみ)が語源となっており、残らず取り入れることを意味します。網羅的とは、ある分野や範囲のなかで目的に関係する全てのものを残らずに集めたり取り入れたりすることを意味する言葉です。
「網羅的解析」の意味
上記の例文にある「網羅的解析」とは、調べようとしているデータや情報を残らずにすべて測定して分析することを意味します。分析しようとするサンプルについて余すところなくカバーしているさまや、一つのサンプル性質について多角的に取りこぼしがないないように分析しているさまを表します。
網羅的の対義語
網羅的の対義語・反対語としては、書物や作品からすぐれた部分や必要な部分を抜き出すことを意味する「抜粋」、無作為にするさまや任意に選び出すさまを意味する「アトランダム」などがあります。
網羅的の類語
網羅的の類語・類義語としては、範囲が広いことを意味する「広範囲」、交際や仕事などで関係している範囲が広いことを意味する「手広い」、行き渡らないところがないことを意味する「万遍ない」、関係者全部にまんべんなく恩恵を与えることを意味する「総花」などがあります。
包括的の例文
この言葉がよく使われる場面としては、全体を包み込んでいるさま、総括的、総合的を表現したい時などが挙げられます。
例文1にある「包括的な視点」とは、個々の物事をひっくるめて考えることを意味し、「総合的な観点」とも言い換えることができます。例文4の「包括的民間委託」とは、地方公共団体が効率的な公共サービスを提供することために、運転や維持管理を一括して民間事業者に任せる委託方式です。
網羅的の例文
この言葉がよく使われる場面としては、残らず取り入れるさまを表現したい時などが挙げられます。
例文3にある「網羅的一般的」とは、憲法で用いられている表現です。網羅的とは残らず取り入れるさま、一般的とは広く認められ行き渡っているさまであり、特定の事物だけでなく全てについて対象にすることを表す言葉です。
包括的と網羅的という言葉は、どちらも物の見方や捉え方を表す言葉です。どちらの言葉を使うか迷った場合、全体を一つにまとめることを表現したい時は「包括的」を、幅広く残らず収集することを表現したい時は「網羅的」を使うようにしましょう。