似た意味を持つ「顕著」(読み方:けんちょ)と「顕在」(読み方:けんざい)の違いと使い方を分かりやすく解説しているページです。
どっちの言葉を使えば日本語として正しいのか、このページの使い方を参考にしてみて下さい。
「顕著」と「顕在」という言葉は、どちらも一目で分かるようにハッキリしていることを意味するという共通点があり、本来の意味は少し違いますが混同して使用される傾向があります。
顕著と顕在の違い
顕著と顕在の意味の違い
顕著と顕在の違いを分かりやすく言うと、顕著というのは、ある物の性質や特徴がハッキリしていることを意味していて、顕在というのは、ある物が存在することがハッキリしていることを意味しているという違いです。
顕著と顕在の使い分け方
顕著というのは、ある物事の持つ性質や特徴がハッキリしていることを表現する言葉です。例えば「この児童は昆虫に興味を示す傾向が顕著である」という文言は、児童には昆虫に興味を示す性質ないし特徴がハッキリと見て取れるということを意味します。
次に、顕在というのは、ある物事が存在することがハッキリしていることを意味しています。主に「顕在化する」という形で使われます。「顕在的」や「顕在的な」などの表現が使われると説明されることがありますが、実はこのような形ではあまり使われません。
例えば「社会の矛盾が顕在化する」という文言は、社会に矛盾が存在することがハッキリするようになることを意味します。ちなみに、もしも矛盾を社会の性質や特徴と捉えるなら、「この社会には矛盾が顕著である」というように表現することが出来ます。
ここまで「顕著は性質や特徴」で「顕在は存在」と説明してきましたが、使い分けに迷った時は、「性質や特徴はある物事が備え持つもの」で「存在は物事そのもの」と考えてみて下さい。
例えば「食べ物の好き嫌いが顕著だ」という場合、「食べ物の好き嫌い」とは、誰かの性質や特徴です。また「違いが顕著になる」という場合、「違い」とは、何かに備わる特徴と別の何かに備わる特徴がハッキリと異なるということです。
次に、例えば「対立が顕在化する」というのは、誰かと別の誰かの間に対立がハッキリ存在するということですが、この対立そのものは、二人の(どちらかの)持つ特徴ではありません。
「二人の考え方の違いが顕著なことによって、対立が顕在化する」というような場合を考えてみると、今述べてきたことが分かりやすくなります。
顕著の意味
顕著とは
顕著とは、物事の備える性質や特徴がハッキリしていることを意味しています。
表現方法は「顕著である」「顕著に見て取れる」「顕著に表れる」
「顕著である」「顕著に見て取れる」「顕著に表れる」「顕著に感じる」などが、顕著を使った一般的な言い回しです。
顕著の使い方
例えば「顕著に表れる」と言う場合、物事がハッキリと存在していることではなく、物事の性質や特徴がハッキリしているという意味です。
詳しく説明します。例えばクラスの中で成績が良くて目立つ人のことを「顕著」と表現することは出来ません。しかし「彼の成績の良さは顕著だ」というように、「彼」の性質や特徴として同じ「成績の良いこと」を表現するなら、顕著を使うことが出来ます。
以上のことを、漢字の成り立ちからも考えてみることにしましょう。
顕著の語源
顕著の顕という字は「しるし」という意味で、もう一つの著という字は、「きわだっている」という意味です。つまり顕著という漢字は、物事を特徴づける「際立った印」という意味です。
自分の持ち物に名前という印を付けるように、物とそれに刻まれる印は同じではありません。物は「存在する」ものですが、印は「存在する」物事の「性質や特徴」です。
顕著の対義語
顕著の対義語・反対語としては、ぼんやりとしていて不明瞭なことを意味する「漠然」「朧気」、表から見るだけでは分からないが、背後で強い勢力や影響力、権力などを持っている様子を意味する「隠然」などがあります。
顕著の類語
顕著の類語・類義語としては、見間違えることが出来ないほどハッキリしていることを意味する「歴然」、光に照らされたようにハッキリと見えることを意味する「明瞭」、二つ以上の物事の違いがハッキリしていることを意味する「画然」などがあります。
顕著の著の字を使った別の言葉としては、功績などによって名前が世の中に広く知られていることを意味する「著名」、名前や功績などが世の名に広く知られていることを意味する「著聞」などがあります。
顕在の意味
顕在とは
顕在とは、ある物事が存在することがハッキリしていることを意味しています。顕在の在という字は、「存在」という字に使われていることからも明らかなように、「ある」ことを意味します。つまり顕在とは、「際立って/目立って存在する」ことを意味する言葉です。
表現方法は「顕在する」「顕在している」「顕在した」
「顕在する」「顕在している」「顕在した」などが、顕在を使った一般的な言い回しです。
顕在の使い方
ほとんどの場合「顕在化」という形で使われますが、「顕在意識と潜在意識」「顕在需要と潜在需要」のように、ある種の専門用語の中でも使われる言葉です。「顕在意識」や「顕在需要」の場合は、「潜在」の対義語・反対語であることが強調されていることに注意しましょう。
逆に「顕在的な」という形で使われることは、実はほとんどありません。時々、この形で使われることも多いという説明を見かけることもありますが、それは間違いです。
「顕在化」と「顕在的な」の使い方
「顕在化」が良く使われる形で、「顕在的な」がほとんど使われない形ですが、その理屈を以下で説明します。
例えば「そこに机がある」と言った時に、机があることは既にハッキリしていて、つまり「顕在的」です。わざわざ「顕在的な机」と言う必要がないのです。「顕在的な」というのは、「馬に乗馬する」のような重言になる表現なのです。
逆に「顕在化」は、とても理にかなった表現です。一般に「〇〇化」は、今まで無かったものが形を取ってハッキリと存在するようになることを意味する接尾辞です。「製品化に成功する」と言った時、今までに無かった新しい物が存在するようになります。
「顕在化」という言葉は、今までには見えなかったものが見えるようになることを表現する言葉です。見えなかったものが見えるようになるという「化」の意味と、物がハッキリと存在するという「顕在」の意味は、とてもよくマッチするのです。
顕在の対義語
顕在の対義語・反対語としては、表には表れず内側に存在することを意味する「潜在」があります。
顕在の類語
顕在の類語・類義語としては、ハッキリと現れることを意味する「顕然」、その場に現れるようにハッキリしていることを意味する「端的」などがあります。
顕著の例文
この言葉がよく使われる場面としては、ある物事の持つ性質や特徴がハッキリしていることを表現したい時などが挙げられます。性質や特徴に対して使う言葉なので、「顕著な」や「顕著に」のような修飾表現として多く使われる傾向があります。
この言葉を使う時には、表現される対象が何の性質や特徴なのかを意識するようにしましょう。
顕在の例文
この言葉がよく使われる場面としては、ある物事がハッキリと存在していることを表現したい時などが挙げられます。ほとんどの場合「顕在化」という形で使われます。「顕在化」とは、今まで見えなかった物事が見えるようになるという意味の言葉です。
あるいは「顕在意識と潜在意識」や「顕在顧客と潜在顧客」のように、専門用語として用いられます。これらの場合には、「潜在」の対義語であるということが強調されている点に注意してみて下さい。
「顕在的」や「顕在的な」という形で使われることは、実はほとんどありません。仮に「顕在的な家屋」という表現があったと考えてみましょう。しかし、家屋と名指しして表現できる時点で家屋が存在することはハッキリしています。「車に乗車する」のような重言なので使われないのです。