【議論】と【討論】の意味の違いと使い方の例文

言葉の使い方の例文

似た意味を持つ「議論」(読み方:ぎろん)と「討論」(読み方:とうろん)の違いを例文を使って分かりやすく解説しているページです。

どっちの言葉を使えば日本語として正しいのか、迷った方はこのページの使い分け方を参考にしてみてください。

「議論」と「討論」という言葉は、どちらも意見を出し論じ合うことを意味するという共通点があり、本来の意味は少し違いますが混同して使われる傾向があります。




議論と討論の違い

議論と討論の意味の違い

議論と討論の違いを分かりやすく言うと、議論というのは、意見を出し合って一つの結論を出すことを意味していて、討論というのは、意見と意見を戦わせて勝敗をつけることを意味しているという違いです。

議論と討論の使い分け方

議論と討論はどちらも話し合いですが、話し合いのやり方が異なります。

一つ目の議論というのは、様々な立場の人が集まり、あるテーマに対して多様な意見を出し合うことで、互いに見識を深めあったり、よりよい考え方や結論を導こうとするものです。議論は、英語では「ディスカッション」です。

例えば「経済的格差」というテーマが掲げられた議論を考えてみます。議論の参加者は自由に意見を出し合うことが出来ます。

「自由競争だから格差を問題にするのはおかしい」や「ある程度の是正がないと社会が混乱する」などの立場を主張してもいいですし、分からないことに対して素朴な疑問を投げかけるような態度で議論に参加することも出来ます。

二つ目の討論というのは、賛成と反対の立場に分かれて、どちらが正しいかを争うスタイルの話し合いです。お互いの見識を深め合える可能性はありますが、結論は、予め決められている二者択一のどちらかになります。討論は、英語では「ディベート」です。

「経済的格差」というテーマの場合、それを認める側と認めない側に分かれて、それぞれ「なぜ認められるのか」「なぜ認められないのか」を出し合って、論戦を繰り広げます。どちらかに分かれなければいけないため、中立的な立場や態度の保留は認められません。

そして最後に、どちらの側に分があるかが判定されることになります。様々な立場の人々の合意形成を目指す議論に対して、討論は自分の正しさを認めさせることが目的になります。

議論が皆で円形に向かい合ってより良い結論へ至ろうとするのに対して、討論は右と左に分かれてお互いが自分の正しさを主張し合うイメージです。

議論の意味

議論とは

議論とは、様々な考え方を持つ人々が集まって、よりよい結論を導くためにする話し合いを意味しています。

討論とは違い、議論では自分の正しさを主張する必要もなければ、他者の意見を否定したり論破したりする必要はありません。様々な意見を持ち寄って、相互に批判的に吟味することで、見識を深めたり、一人では思いつかない、より良い結論を導くことが目的です。

表現方法は「議論する」「議論を尽くす」「議論を呼ぶ」

「議論する」「議論を尽くす」「議論を呼ぶ」などが、議論を使った一般的な言い回しです。

議論の使い方

議論を使った分かりやすい例としては、「その問題について議論する機会は別に設けます」「十分な議論を尽くすも話がまとまらずに終わってしまった」「彼の不可解な発言は多くの議論を呼ぶこととなった」などがあります。

「ブレインストーミング」は議論の手法の1つ

議論の手法の一つとして、「ブレインストーミング」というものがあります。これだけが議論の仕方というわけではないですが、これを知っておくと、議論と討論の違いが分かりやすくなります。

ブレインストーミングとは、数人のグループになって、沢山のアイディアを出し合うことで、一人では思いつかない発想が生まれることを目指した議論や会議の手法です。

ブレインストーミングには、三つのルールがあります。これは守られなければなりません。なお、4つと紹介しているものもありますが、内容は大きく変わることはありません。

一つ目が「質より量」です。とにかく多くの意見を出す、ということです。クオリティーにこだわるとアイディアが出なくなるので、思いついたアイディアを片っ端から表明することが求められます。粗削りな意見であっても、ひらめきのタネになりえるからです。

二つ目が「他人の意見を批判しない」です。批判や批評をされると、アイディアを出しにくくなったり、アイディアを正当化する必要がありますが、そんなことに時間を費やすよりも、発想のヒントになる粗削りなアイディアを出す時間の方が有意義だと考えます。

三つめが「他人の意見への便乗歓迎」です。ブレインストーミングで出し合うアイディアは、解決策ではなく、さらなる発想のためのタネです。他の人のアイディアをダシにして考えるというのは、むしろ推奨されています。

一般的にブレインストーミングは、とても短い時間で行われます。その短時間の中でアイディアを出すことに集中し、その後、少し時間を多めにかけて議論をします。

ブレインストーミングが議論というものの全てではないですが、議論という言葉の意味を理解するためには、便利なものです。

また、一般公開して行うパネルディスカッションも、議論の典型例です。

なお、議論という言葉は、話し合う行為だけではなく、話し合われた内容のことを意味することもあります。評論や論説などの内容のことは「議論」と表現されます。「この本の議論によると」などの言い回しがあります。

議論の類語

議論の類語・類義語としては、論理を尽くして論じ合うことや、仏教で教義を明らかにするために行う問答を意味する「論議」、物事を決定するために人々が集まることや、集まりの場を意味する「会議」などがあります。

議論の論の字を使った言葉としては、思考や議論の筋道や、それらの組み立て方を意味する「論理」、口喧嘩を意味する「口論」、相手の主張を難じ、反対意見を表明することを意味する「駁論」(読み方:ばくろん)などがあります。

討論の意味

討論とは

討論とは、あるテーマに対して賛成と反対に分かれ、自分の立場の正しさを認めさせるスタイルの話し合いを意味しています。

表現方法は「討論する」「討論をする」「討論会」

「討論する」「討論をする」「討論会」などが、討論を使った一般的な言い回しです。

討論の使い方

討論の討という字には、「打ち負かす」という意味合いがあることを知っておくと、討論が相手を言い負かすスタイルの話し合いであることが分かりやすくなります。

議論とは異なり、討論に参加する時には、自分の立場を明確にする必要があります。自分の主張に対していくつか根拠を述べたり、相手の主張の根拠をいわば「論破」するなどして自分の立場を正当化し、審判や観客にどちらが正当性があるか判定をしてもらいます。

議論とは異なり、討論には最終的な勝者がいます。そのため、相手の意見を尊重するよりも、言い負かすことが必要になります。

討論は学校の授業などで取り入れられることも増えてきていますが、上手く行わないと失敗し、喧嘩別れに終わることがある点に、注意が必要です。

討論の類語

討論の類語・類義語としては、聴衆などの大勢の前で意見を述べたり、複数人で論じ合うことを意味する「弁論」、意見を重ね合うことを意味する「討議」、言い争うことを意味する「論争」などがあります。

討論の討の字を使った言葉としては、反対する勢力などを武力で鎮圧することを意味する「討伐」、悪いものを一つ残さず排除することを意味する「掃討」、物事の良し悪しを多方面からじっくり考えることを意味する「検討」などがあります。

議論の例文

1.時間がかかったが、議論が煮詰まってきた感がする。
2.みんな議論の方法が分かっておらず、お互いの主張に文句をつける場になってしまった。
3.議論を交わす相手を間違えたのか、自分の言い分を全く理解してもらうことが出来なかった。
4.議論のテーマから脱線したが、かえって有意義な話し合いになったと思う。
5.議論百出で、とても2時間や3時間の会合では結論が出せない状況だった。
6.うちの若手は議論が苦手なのか特定の人間だけが発言し、あまり内容もなくしらけた雰囲気のまま終わってしまった。
7.日本人は議論することを好まないので、談合することで物事を決めることが多いようだ。
8.私はその頃はまだ若かったので、教授にも臆することなく議論をふっかけてはよく返り討ちにあっていました。
9.彼のやり方は一部で議論を呼んだが、うまく行っているうちは表立って反対を表明する者はいなかった。
10.その法案については、私はまだ国会で議論し尽くされてはいないと考えているので、今国会で可決することには反対だ。

この言葉がよく使われる場面としては、様々な人がお互いの意見を尊重しながら話し合うことを表現したい時などが挙げられます。

議論とは、勝ち負けをつけるものではなく、お互いの意見を知り、尊重し、そうして自分の考えを深めるためにするものです。

例文1の「議論が煮詰まる」とは、そのように「議論が深まる」という意味ですが、近年は「議論が行き詰まる」ことを意味する表現だと理解する人も増えてきています。ぜひ、正しい意味で使えるようにしましょう。

他方で、例文2のように、議論には言い負かし合いになってしまう危険性があります。自分の意見を一方的に押し付けるのではなく、相手の意見を尊重することが議論の大切な要素だということを、きちんと理解するようにしましょう。

討論の例文

1.目的を事前にはっきりさせておかないと、討論会は喧嘩別れに終わるよ。
2.授業で討論会をやることになったのだが、何か面白いテーマはないかなぁ。
3.集団討論を有意義なものにするには、進め方が特に重要になってくる。
4.討論のやり方にもコツがあるから、単に意見の内容が素晴らしいだけじゃダメだよ。
5.よく見るテレビのジャンルに討論番組を挙げるのって、そんなに変かなぁ。
6.有名な討論番組については、司会者が独断と偏見で論客に好き嫌いをしているので、あまり好きではない。
7.候補者の中で彼だけが討論会に参加しなかったので、一部の有権者からは敵前逃亡したと揶揄された。
8.今の中学校の授業では、生徒に討論する場を設けて、自分で意見を述べる経験を積ませているようです。
9.私は私を批判する評論家に公開討論を持ちかけるも、色々理由をつけて逃げられてしまいました。
10.日本人は議論が下手というがそんなことはなくて、江戸時代には会読という討論形式の読書会をしていました。

この言葉がよく使われる場面としては、賛成と反対に分かれて意見を表明しあう状況を表現したい時などが挙げられます。議論に比べて、討論という言葉は使われる頻度が少ないです。「討論会」などの特別な機会でないと、討論をすることがないからです。

討論に触れる一番身近な機会は、テレビの討論番組ですが、政治的な話題に特化しているのが難点です。

討論は、議論と違ってお互いに言い負かすという要素があります。なので、喧嘩別れにならないように、慎重に行う必要があります。「討論会」では、通常は司会ないし審判がつくものなので、その人の技量も試されることになります。

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