似た意味を持つ「そもそも」と「もともと」の違いと使い方を分かりやすく解説しているページです。
どっちの言葉を使えば日本語として正しいのか、このページの使い分け方を参考にしてみて下さい。
「そもそも」と「もともと」という言葉は、どちらも始め、始まりを意味するという共通点があり、本来の意味は少し違いますが混同して使用される傾向があります。
「そもそも」と「もともと」の違い
「そもそも」と「もともと」の意味の違い
「そもそも」と「もともと」の違いを分かりやすく言うと、「そもそも」というのは、話を仕切りなおすために使う言葉を意味していて、「もともと」というのは、物事の最初を意味するという違いです。
「そもそも」と「もともと」の使い分け方
「そもそも」と「もともと」は、意味としてはどちらも最初を意味する言葉ですが、日本語としての役割では全く異なります。
最初の「そもそも」というのは、話を仕切りなおすために使われる言葉です。話には、必ず流れ、調子があります。この流れ、調子のことを、少し難しく言うと「論旨」(読み方:ろんし)と言います。
論旨のことを英語にすると「テーマ」だと考える人もいますが、「テーマ」は「主題」です。論旨はもう少し広く漠然とした概念で、話の展開全体の流れのようなものだと考えて下さい。
「そもそも」の使い方としては、例えば次のようなものが挙げられます。「多くの人々は、ダーウィンにならって人間はサルから進化したと考えている。しかしそもそもダーウィン自身のミッシングリンクとは、進化の痕跡が見つからないことを問題にしている」。
あるいは、二人が言い争ってお互いの立場を譲らないとき、第三者が「そもそも喧嘩しているのが悪い」と言って仲裁することもあります。
このように、「そもそも」という言葉は、話や状況の流れを変えるために、始めに立ち返ることを表現する言葉です。
次に、「もともと」というのは、物事の始めを意味する言葉です。「もともと」には、論旨を仕切りなおすという役割はありません。単に「初めの頃、初めの方」を意味する言葉です。
例えば「キリスト教はもともとはユダヤ教から派生した」と言えば、キリスト教は最初はユダヤ教だったということが含意されています。また「もともと視力が悪い」と言えば、以前から目が悪いという意味です。
「もともと」を使っている文が、「した」のように過去形で終わっていれば、「今はそういう状態ではない」ことを意味します。キリスト教は今ではユダヤ教とは別の宗教です。
対して、「もともと」を使っている文が、「です」のように現在形で終わっていれば、「以前からずっと」という意味になります。「もともと視力が悪い」というのは、視力は今も昔も変わらず悪いことを表現しています。
「そもそも」の意味
「そもそも」とは
「そもそも」とは、話の流れを変えるために、始めに立ち返ることを意味しています。
「そもそも」の使い方
話の流れのことを「論旨」(読み方:ろんし)と言います。「論調」(読み方:ろんちょう)が主張を強めに言うか、弱めに言うかという意味なのに対して、論旨は話の筋道という意味がありますが、どちらも全くの別物ではありません。
「そもそも」という言葉は、その論旨を変えるために使われます。
例えば「日本人はアメリカ人とは違うから究極的には分かり合えない」という意見に対して、「そもそも、日本人もアメリカ人の人類だ」と言って、「分かり合える」という方向に話を持っていきたい場合などが、この言葉の使用状況として考えられます。
注意しなければいけないのは、単に話を変えるだけではなく、「物事の始めに立ち返る」という点です。上の例では、日本人とアメリカ人などの人種や国籍という違いよりも前に、人類という共通性がある、ということになります。
物事の始めに立ち返ることなく論旨を変える場合には、「しかし」や「しかしながら」などの表現を使います。「高齢者の交通事故が増えている。しかし、免許更新に制限を設けるのには反対だ」などが、「しかし」の使用例として挙げられます。
また、こうした論旨を変えるという機能から、「そもそも」という言葉には、いましめるようなニュアンスが含まれることになります。
「そもそも問題は君が作ったんだよ」と「もともと問題は君が作ったんだよ」では、「そもそも」を使った方が怒気がこもっています。
「そもそも」の類語
そもそもの類語・類義語としては、根本的な性質に関わることを意味する「本質的には」、元々そうであることを意味する「本来」、実際にそうであることを意味する「本当は」などがあります。
「もともと」の意味
「もともと」とは
「もともと」とは、物事の始めのこと、以前を意味しています。
「もともと」の使い方
「そもそも」には論旨を整えるという機能がありましたが、「もともと」にはそのような機能はなく、単に「物事の始め」を意味しています。
例えば、「彼はハーフだから、今はアメリカ人だけど、もともとは日本に住んでいたんだよ」と言えば、以前は日本に住んでいたという意味です。また、「もともとここに住んでいたんだよ」と言えば、以前から住んでいたという意味です。
「もともと」を含む文の文末が過去形なら、「今は昔と違う」という意味で、現在形なら「以前からずっと」という完了形に近い意味になります。
なお、「もともと」と「以前」の違いですが、以前というのが時間の流れにのみ着目しているのに対して、「もともと」というのがルーツにも着目しているという違いです。
「アメリカ人だけど、もともとは日本に住んでいた」というのは、そこで生まれ育ったという意味で、自分のルーツとして日本を捉えています。対して、「アメリカ人だけど、以前は日本に住んでいた」は、単に昔住んでいたという程度の意味になります。
「もともと」の対義語
「もともと」の対義語・反対語としては、枝分かれしたように、大元から離れた様子を意味する「派生的に」などがあります。
「もともと」の類語
「もともと」の類語・類義語としては、以前を意味する「かねて」「あらかじめ」「まず」「まえもって」などがあります。
「もともと」を使った別の言葉としては、成功の可能性の低いことに対して、失敗しても仕方ない、何もしないよりは良いと割り切って考えることを意味する「駄目でもともと」などがあります。「ダメ元」は、この言葉を略した表現です。
「そもそも」の例文
この言葉がよく使われる場面としては、話の流れを変えて、問題の起こりから話をしたいことを表現したい時などが挙げられます。
「そもそも論」という言葉があります。物事の始めに立ち返って論じなおすことを意味することですが、この言葉には、「これまでの問題の立て方、論じ方が全部間違ってる」というニュアンスがあります。
例えば例文1の「君がそもそも全部おかしい」は、君には君の理屈はあるだろうが、全部最初からおかしいという意味で、例文2の「そもそもの問題を作ったのは君」というのは、弁明の余地は最初からないという意味です。
「そもそも」という言葉には、話の流れを変えるという機能がありますが、もっと言えば、理屈を全部ひっくり返すということです。なので、この言葉には時として、攻撃的なニュアンスが混じります。
「そもそも」は、日常的についつい口にしがちな言葉ではありますが、実はしっかり考えてから使った方がいい言葉だということを覚えておきましょう。
「もともと」の例文
この言葉がよく使われる場面としては、物事の始め、開始時点を表現したい時などが挙げられます。「もともと」は、「そもそも」とは違って、話の流れを変える機能を持っていません。状況を描写するのが「もともと」という言葉の役割です。
例文1から例文3は、「もともと」を含む文が過去形なので、「今と昔は違う」ことを意味していて、例文4と5は現在形なので、「以前からずっと」という意味になります。
「もともと」は「そもそも」と日本語としての使い方が全く異なるので、混同は禁物です。注意するようにして下さい。