似た意味を持つ「綺麗事」(読み方:きれいごと)と「正論」(読み方:せいろん)の違いを例文を使って分かりやすく解説しているページです。
どっちの言葉を使えば日本語として正しいのか、迷った方はこのページの使い分け方を参考にしてみてください。
「綺麗事」と「正論」という言葉は、どちらも現実的ではない意見を表すという共通点があり、本来の意味は少し違いますが混同して使われる傾向があります。
綺麗事と正論の違い
綺麗事と正論の意味の違い
綺麗事と正論の違いを分かりやすく言うと、綺麗事とは表面的に取り繕った意見、正論とは筋の通った正しい意見という違いです。
綺麗事と正論の使い方の違い
一つ目の綺麗事を使った分かりやすい例としては、「そんなのただの綺麗事だろう」「綺麗事ばかり言う人は嫌いです」「綺麗事の何が悪いんだ」「ビジネスは綺麗事だけで済まされない」「無責任な綺麗事としか思えない」などがあります。
二つ目の正論を使った分かりやすい例としては、「それは正論だけど現実的ではないよ」「正論ばかり言う人は一緒にいて疲れる」「正論だけど厳しい評価だな」「上司からの正論ハラスメントが辛い」「いつも正論を振りかざす人だ」などがあります。
綺麗事と正論という言葉は、どちらも現実的でない主張や意見を表しますが、意味や使い方には違いがあります。
綺麗事とは、体裁ばかりで現実味のない事柄を意味します。「努力は必ず報われる」のような、表面だけを立派にとりつくろって、理想的ではあるけれど現実にその通り行うことができないようなことを指す言葉です。
正論とは、道理にかなった正しい理論や主張を意味します。「嘘をついてはいけない」のような、物事の正しい筋道や人として行うべき正しい道を示すような考えを指す言葉です。こうあるべきだとする規範や政策など、社会的な要素に対して使わることが多くあります。
つまり、綺麗事とは表面的に取り繕った意見であり、正論とは筋の通った正しい意見という違いがあります。どちらも現実的ではない意見ですが、正論よりも綺麗事の方がマイナスイメージのある言葉だと言えるでしょう。
綺麗事と正論の英語表記の違い
綺麗事を英語にすると「high‐sounding talk」「fine-sounding talk」となり、例えば上記の「ただの綺麗事」を英語にすると「just fine-sounding talk」となります。
一方、正論を英語にすると「right argument」「fair argument」となり、例えば上記の「それは正論だ」を英語にすると「that’s a fair argument」となります。
綺麗事の意味
綺麗事とは
綺麗事とは、実情にそぐわない、体裁ばかりを整えた事を意味しています。
その他にも、手際よく美しく仕上げることの意味も持っています。
表現方法は「綺麗事ばかり」「綺麗事の何が悪い」「綺麗事が好き」
「綺麗事ばかり」「綺麗事の何が悪い」「綺麗事が好き」などが、綺麗事を使った一般的な言い回しです。
綺麗事の使い方
「理想論や綺麗事は大嫌いです」「綺麗事で何が悪いのか」「綺麗事ばかり言う人の心理が知りたい」「商売は綺麗事ばかりじゃないよ」「客の前で綺麗事を並べる」などの文中で使われている綺麗事は、「実情にそぐわない体裁ばかりを整えた事」の意味で使われています。
一方、「熟練の技術と感性で綺麗事が出来る」「綺麗事に感嘆の声が上がる」「基本を押さえたテクニックで綺麗事にする」などの文中で使われている綺麗事は、「手際よく美しく仕上げること」の意味で使われています。
綺麗事とは、上記の例文のように二つの意味がありますが、一般的には「実情にそぐわない体裁ばかりを整えた事」の意味で使われてます。聞こえは良いけれど現実とはかけ離れており、実際には役に立たなそうな意見や考えを指して言うマイナスイメージの言葉です。
「綺麗事を並べる」の意味
上記の例文にある「綺麗事を並べる」とは、体裁ばかりで現実味のない事柄を次々と言うことを表します。「並べる」とは、物を隣り合わせに置くことという意味の他に、次々といくつもあげて言うことの意味も持っています。
綺麗事の対義語
綺麗事の対義語・反対語としては、本心からいう言葉を意味する「本音」、誠実でかげひなたのないことを意味する「実直」などがあります。
綺麗事の類語
綺麗事の類語・類義語としては、付き合いをうまく進めるための儀礼的なほめ言葉や挨拶を意味する「社交辞令」、人の気に入るような口先だけのうまい言葉を意味する「甘言」、口先だけでうまく言うことを意味する「巧言」、美しい言葉や巧みな文句を意味する「美辞」などがあります。
正論の意味
正論とは
正論とは、道理にかなった正しい意見や議論を意味しています。
表現方法は「正論を振りかざす」「正論を言う」「正論が通じない」
「正論を振りかざす」「正論を言う」「正論が通じない」などが、正論を使った一般的な言い回しです。
正論の使い方
正論を使った分かりやすい例としては、「彼は正論で人を追い込む人だ」「正論を振りかざす夫の対応に困っている」「正論という雑誌の最新号を買った」「正論ハラスメントの対策はありますか」などがあります。
その他にも、「正論ばかり言う人の対処法が知りたい」「正論が正しいとは限らないでしょう」「正論パンチで論破する」「別冊正論のバックナンバーを取り寄せる」「正論は人を傷つけることがあります」などがあります。
正論という言葉は、道理にかなった議論や主張を意味し、「こうあるべきだ」と物事の正しい筋道を他者に認めさせようとして強く言い張ることを表します。使い方によって、プラスイメージにもマイナスイメージにもなる言葉です。
「正論ハラスメント」の意味
上記の例文にある「正論ハラスメント」とは、相手の立場や気持ちを考えずに正論ばかり突きつけて、相手を困らせたり精神的に追い詰めることを意味します。「ロジカルハラスメント」「ロジハラ」とも言います。
正論の対義語
正論の対義語・反対語としては、道理を曲げて論じることや間違いを正しいものとする議論を意味する「曲論」、とるに足らない論議や愚かな議論を意味する「愚論」、乱暴な議論や意見を意味する「暴論」、人を惑わすまちがった論を意味する「邪論」などがあります。
正論の類語
正論の類語・類義語としては、すぐれた論や立派な議論を意味する「名論」、すぐれた議論や立派な意見を意味する「高論」、すぐれた議論や立派な論説を意味する「卓論」、道理にかなっていて正しいことを意味する「正当」などがあります。
綺麗事の例文
この言葉がよく使われる場面としては、体裁ばかりで現実味のない事柄、手際よく美しく仕上げることを表現したい時などが挙げられます。
例文1から例文4の文中にある綺麗事は、体裁ばかりで現実味のない事柄の意味で使われています。例文5の文中にある綺麗事は、手際よく美しく仕上げることの意味で使われています。
正論の例文
この言葉がよく使われる場面としては、 道理にかなった議論や主張を表現したい時などが挙げられます。
例文1では、道理にかなった議論である「正論」に対して、道理を曲げて論じることを意味する「曲論」が対比表現として使われています。例文5にある「正論を振りかざす」とは、立派で反対しようのない主張を厳かに示すことを表します。
綺麗事と正論という言葉は、どちらも実情を無視した意見を表します。どちらの言葉を使うか迷った場合、表面を取り繕った意見を表現したい時は「綺麗事」を、 筋の通った正しい意見を表現したい時は「正論」を使うようにしましょう。