似た意味を持つ「占有」(読み方:せんゆう)と「所有」(読み方:しょゆう)の違いを例文を使って分かりやすく解説しているページです。
どっちの言葉を使えば日本語として正しいのか、迷った方はこのページの使い分け方を参考にしてみてください。
「占有」と「所有」という言葉は、どちらも自分の物として持つことを意味しているという共通点があり、本来の意味は少し違いますが混同して使われる傾向があります。
占有と所有の違い
占有と所有の意味の違い
占有と所有の違いを分かりやすく言うと、占有とは事実上の所有を意味し、所有とは自分のものとして持つことを意味するという違いです。
占有と所有の使い方の違い
一つ目の占有を使った分かりやすい例としては、「占有権を主張して立ち退きしないつもりだ」「マンション所有者と占有者の仲が悪い」「一企業の市場占有率が高い業界だ」「公然と他人の物を占有する行為は犯罪です」などがあります。
二つ目の所有を使った分かりやすい例としては、「私が乗っている車の所有者は父です」「所有権移転登記申請書を提出する」「地主は土地の所有権を持っています」「所有権移転登記に関する費用を算出する」などがあります。
占有と所有という言葉は、どちらも不動産などを自分のものとして持つことを表しますが、厳密な意味や使い方には違いがあります。
「マンションの所有者」と「マンションの占有者」の違い
占有とは、人が物を支配していることを意味し、所有とは自分の物として持っていることを意味します。上記の例文にある「マンションの所有者」とは、マンションの所有権を持っている貸主のことです。一方、「マンションの占有者」とは、マンションを借りて使用している借主を意味します。
また、マンションを購入して自分でそこに住むことは、「所有」して「占有」していると表現することができます。
つまり、占有とは名義は違っても事実上の所有を表し、所有とは名義を含めて自分のものとして持っていることを表します。占有と所有という言葉を比べると、所有の方が広い意味を持ち、幅広く使える言葉だと言えるでしょう。
占有と所有の英語表記の違い
占有を英語にすると「occupancy」「possession」となり、例えば上記の「占有権」を英語にすると「the right of possession」となります。一方、所有を英語にすると「property」「ownership」となり、例えば上記の「所有者」を英語にすると「an owner」となります。
占有の意味
占有とは
占有とは、自分の所有にすることを意味しています。
その他にも、「民法上、自己のためにする意思をもって物を所持すること」の意味も持っています。
表現方法は「占有する」「占有を侵奪」「占有権を有する」
「占有する」「占有を侵奪」「占有権を有する」などが、占有を使った一般的な言い回しです。
占有の使い方
「コールセンターの占有率と稼働率を計算する」「施設内での遺失物は施設占有者が管理します」「業界別に市場占有率を分析する」「占有屋に立退料を要求された」などの文中で使われている占有は、「自分の所有にすること」の意味で使われています。
一方、「契約書で占有改定条項を設ける」「友人が占有離脱物横領罪に問われている」「占有者の遵守義務を確認する」「土地の賃借人は占有権を有している」などの文中で使われている占有は、「民法上、意思をもって物を所持すること」の意味で使われています。
占有とは、ある人が特定の物を事実上支配している状態を意味します。自分のものとして持つことであり、民法上では、自己のためにする意思で物を所持することを意味します。また、刑法上では、意思を伴わない単なる所持の意味で使われています。
「コールセンターの占有率」の意味
上記の例文にある「コールセンターの占有率」とは、オペレーターの稼働時間に対し、実際に電話で顧客対応に従事していた割合のことを言います。また、「コールセンターの稼働率」とは、勤務時間のうち、電話着信の待機時間を含む顧客対応にかけられる時間の割合です。
「自主占有」「他主占有」の意味
占有という言葉を用いた日本語には「自主占有」と「他主占有」があります。法律上の言葉であり、自主占有は所有の意思をもってする占有のことを意味します。一方、他主占有は、所有の意思をもたない占有のことであり、賃借人や質権者などを指します。
占有の対義語
占有の対義語・反対語としては、一つのものをいくつかに分けて所有することを意味する「分有」、各共同所有者は各持ち分を有するが持ち分の処分や分割には一定の制限があることを意味する「合有」などがあります。
占有の類語
占有の類語・類義語としては、一定の場所を独り占めすることを意味する「占領」、ある場所を占有して他人を寄せつけないことを意味する「占拠」、自分ひとりだけのものにすることを意味する「独占」などがあります。
所有の意味
所有とは
所有とは、自分のものとして持っていることを意味しています。
表現方法は「所有する」「所有権をめぐるトラブル」「所有権解除の手続き」
「所有する」「所有権をめぐるトラブル」「所有権解除の手続き」などが、所有を使った一般的な言い回しです。
所有の使い方
所有を使った分かりやすい例としては、「不動産の所有権をめぐるトラブルで争う」「所有権移転登記に必要な書類を取り寄せる」「所有と経営の分離は株式会社の原則です」「登録完了時に所有権が発生します」などがあります。
その他にも、「多くの不動産を所有する資産家だ」「市が所有者不明土地対策に乗り出した」「所有する喜びのある車です」「オートローン完済時に所有権解除の手続きをする」「英語の所有格とは何かを習った」などがあります。
所有という言葉は、自分のものとして持っていることを意味し、様々な場面で使われる言葉ですが、特に財産的な価値のある物について使われることが多くあります。「山を所有している」とは言いますが、「玩具を所有している」とは使われません。
「所有権」の意味
上記の例文にある「所有権」とは、法令の範囲内で自由にその所有物の使用したり、利益を得たり、処分したりできる権利のことです。
「区分所有」の意味
所有という言葉を用いた日本語には「区分所有」があります。分譲マンションなど、1棟の建物を部分的に区分し、区分された各部分について所有することを意味します。それぞれ独立して住居や事務所などに利用できるものです。
所有の対義語
所有の対義語・反対語としては、一つの物を二人以上が共同で持つことを意味する「共有」、共同でもつことを意味する「シェア」などがあります。
所有の類語
所有の類語・類義語としては、自分のものとして持っていることを意味する「保有」、ひとりだけで所有することを意味する「専有」、法律で物を事実上支配していると認められる状態を意味する「所持」、自分の所有物としてしまってあることを意味する「所蔵」などがあります。
占有の例文
この言葉がよく使われる場面としては、すっかり自分の所有とすること、民法において自己のためにする意思をもって物を所持することを表現したい時などが挙げられます。
例文5にある「占有訴権」とは、占有を妨害されたり、その恐れがある場合に妨害者に侵害の排除を請求できる権利のことです。
所有の例文
この言葉がよく使われる場面としては、自分の物として持っていることを表現したい時などが挙げられます。
例文3にある「英語の所有格」とは、その後に続く名詞を修飾するものです。人称の所有格には、my、your、hisなどがあります。例文4の「所有期間利回り」とは、債券投資において償還期限まで保有せずに途中で売却した場合の利回りのことです。
占有と所有という言葉は、どちらも自分の物として持つことを表します。どちらの言葉を使うか迷った場合、事実上の所有を表現したい時は「占有」を、事実上だけでなく権利としても自分の物として持つことを表現したい時は「所有」を使うようにしましょう。