似た意味を持つ「一朝一夕」(読み方:いっちょういっせき)と「一長一短」(読み方:いっちょういったん)の違いを例文を使って分かりやすく解説しているページです。
どっちの言葉を使えば日本語として正しいのか、迷った方はこのページの使い分け方を参考にしてみてください。
「一朝一夕」と「一長一短」という言葉は、似ていても意味は大きく異なりますので、ご注意下さい。
一朝一夕と一長一短の違い
一朝一夕と一長一短の意味の違い
一朝一夕と一長一短の違いを分かりやすく言うと、一朝一夕とは非常に短い期間を表し、一長一短とは長所も短所もある性質を表すという違いです。
一朝一夕と一長一短の使い方の違い
一つ目の一朝一夕を使った分かりやすい例としては、「職人の技は一朝一夕には学べぬ」「一朝一夕に出来るものではありません」「人手不足の解消は一朝一夕にはいかない」「働き方改革は一朝一夕ではできない」などがあります。
二つ目の一長一短を使った分かりやすい例としては、「その考えには一長一短があるよね」「あらゆる物事には一長一短あります」「どちらも一長一短あって迷ってしまう」「社会保障改革は一長一短あります」などがあります。
一朝一夕と一長一短の使い分け方
一朝一夕と一長一短という言葉は、字面や音の響きが似ているため混同して使われる四字熟語ですが、意味や使い方には大きな違いがあります。
一朝一夕とは、わずかな時間や非常に短い期間を意味します。ほどんどの場合、「一朝一夕にはいかない」のように下に打ち消し表現を伴い、時間を要することを意味します。「改革は一朝一夕ではできない」とは、改革はそう簡単には遂行できず、時間がかかることを意味します。
一長一短とは、長所がある一方で短所もあることを意味します。人や物事について表す四字熟語であり、良い面もあり悪い面もあって完全でないことを表します。「改革は一長一短あります」とは、改革を実行するにはメリットだけでなくデメリットも伴うことを表します。
一朝一夕と一長一短の英語表記の違い
一朝一夕を英語にすると「in a day」「in a brief space of time」となり、例えば上記の「一朝一夕には学べぬ」を英語にすると「can not learn it in a day」となります。
一方、一長一短を英語にすると「merits and demerits」「advantage and disadvantage」となり、例えば上記の「一長一短がある」を英語にすると「have both merits and demerits」となります。
一朝一夕の意味
一朝一夕とは
一朝一夕とは、わずかな時間、非常に短い時間を意味しています。
一朝一夕の読み方
一朝一夕の読み方は「いっちょういっせき」です。誤って「いっちょういちゆう」「ひとあさひとゆう」などと読まないようにしましょう。
表現方法は「一朝一夕では身につかない」「一朝一夕にはいかない」
「一朝一夕では身につかない」「一朝一夕にはいかない」などが、一朝一夕を使った一般的な言い回しです。
一朝一夕の使い方
一朝一夕を使った分かりやすい例としては、「英語の習得は一朝一夕にはいかない」「短文を書く力も一朝一夕には身に付かない」「一朝一夕ではできないプロの仕事です」「一朝一夕の努力ではなく不断の努力が必要だ」などがあります。
その他にも、「弱点克服は一朝一夕にはいかない」「状況は一朝一夕に変わることはありません」「一朝一夕に解決できる問題ではない」「一朝一夕ではできないことが多々あります」「脱炭素は一朝一夕に達成できるものではない」などがあります。
一朝一夕とは、期間が短くて速いことや、ほんの少しの間のことです。「一朝」は一日、「一夕」は一晩のことであり、「一日か一晩か」の意味から、極めてわずかな期間を表す言葉になりました。「朝一夕にはいかない」のように、打消しの言い回しで用いられることが多い言葉です。
一朝一夕の由来
一朝一夕という言葉の由来は、古代中国の書物「易経」にあります。この一節に「一朝一夕」があり、短期間では成し得ないものの言い回しで伝わったとされています。
一朝一夕の対義語
一朝一夕の対義語・反対語としては、欠点や不足がなくて非のうちどころのないことを意味する「完全無欠」、欠点が何一つなく善と美を極めていることを意味する「尽善尽美」などがあります。
一朝一夕の類語
一朝一夕の類語・類義語としては、わずかな期間や短い時間を意味する「一旦一夕」、わずかな時間を意味する「一刻」、ほんのしばらくの間を意味する「片時」などがあります。
一長一短の意味
一長一短とは
一長一短とは、人も物事も、それぞれに長所も短所も持ち合わせていることを意味しています。
表現方法は「一朝一夕で身につく」「一朝一夕では身につかない」
「一朝一夕で身につく」「一朝一夕では身につかない」などが、一長一短を使った一般的な言い回しです。
一長一短の使い方
一長一短を使った分かりやすい例としては、「どの方法も一長一短であります」「各候補が一長一短で条件を満たすものがない」「SNSには一長一短あるので上手に活用しよう」「英語の早期教育には一長一短がある」などがあります。
その他にも、「どちらにするか一長一短あって選べません」「十人十色の選択肢、いずれも一長一短あります」「類語を多用するのも一長一短があります」「テレワークは一長一短あると思います」「一長一短があり決められません」などがあります。
一長一短の由来
一長一短とは、中国後漢時代の思想書「論衡」が由来となっています。架空の動物である竜について「あるときは長くあるときは短い」と表現し、のちに「良い所もあれば悪い所もある」という意味で使われるようになりました。「長」は長所や良い部分、「短」は短所や悪い部分を表します。
「一長一短にはいかない」は誤り
一長一短という言葉の誤った使い方には「一長一短にはいかない」があります。物事の性質を表す一長一短にはこのような言い回しは誤用であり、似た四字熟語の「一朝一夕にはいかない」の誤りだと考えられます。
一長一短の対義語
一長一短の対義語・反対語としては、きわめて長い年月のことを意味する「千秋万歳」、永遠の歳月や長い長い年月のことを意味する「千秋万古」などがあります。
一長一短の類語
一長一短の類語・類義語としては、良いことがある一方で悪いこともあることを意味する「一利一害」、利益と損失が背中合わせにある関係を意味する「一得一失」、手に入れたものと失ったものを意味する「利害得失」などがあります。
一朝一夕の例文
この言葉がよく使われる場面としては、期間が短くて速いこと、ほんの少しの間を表現したい時などが挙げられます。
上記の例文にあるように「一朝一夕」という言葉は、ほとんどの場合が打消しを伴う表現となり、事柄が簡単ではない様子を表します。
一長一短の例文
この言葉がよく使われる場面としては、長所もあるが短所もあって完全ではないことを表現したい時などが挙げられます。
例文4にある「一長一短で身につくものではない」という言い回しは不適切です。正しくは「一朝一夕で身につくものではない」であり、短期間で習得できるものではないことを意味します。
一朝一夕と一長一短という言葉は似ていますが、意味は大きく異なります。どちらの言葉を使うか迷った場合、極めて短い期間を表現したい時は「一朝一夕」を、長所と短所を持ち合わせた性質を表現したい時は「一長一短」を使うようにしましょう。