似た意味を持つ「寝る」(読み方:ねる)と「眠る」(読み方:ねむる)の違いを例文を使って分かりやすく解説しているページです。
どっちの言葉を使えば日本語として正しいのか、迷った方はこのページの使い分け方を参考にしてみてください。
「寝る」と「眠る」という言葉は、どちらも意識が低下し、活動を休止することを意味するという共通点があり、本来の意味は少し違いますが混同して使われる傾向があります。
「寝る」と「眠る」の違い
「寝る」と「眠る」の意味の違い
寝ると眠るの違いを分かりやすく言うと、寝るとは身体を横たえるという「行動」を意味していて、眠るとは睡眠の「状態」を意味しているという違いです。
「夜に寝る」と「夜に眠る」の違い
寝ると眠るは「夜に寝る」「夜に眠る」という同じ状況を指すことが出来ますが、意味の置き方がそれぞれ異なります。寝るとは行動で、身体を横にすることを意味していて、眠るとは睡眠という状態のことです。
「寝る」と「眠る」の使い分け方
一つ目の「寝る」は「身体を横にするという行動」を表現している言葉です。この言葉は「寝転がる」「寝そべる」のように、元々は睡眠とは全く関係ない意味です。寝転がるも寝そべるも、起きている状態、つまり覚醒状態の行動です。
そして「夜に寝る」のも、実は起きているからこそ取れる行動なのです。「今から寝る」は、よく使われる言葉です。これは言い換えれば「今から睡眠状態に移行するために身体を横たえる」という意味で、横たえること自体は起きている間の行動です。
いわゆる「寝る」とは、厳密に言えば、「眠ろうと身体を横たえることから始まって、どこまでも限りなく睡眠状態に近づく」という、起きている間の行動なのです。
二つ目の「眠る」は「睡眠状態」という意味の言葉です。眠るは意識状態が低下し、活動を休止する状態のことで、「起きている間」「覚醒時」の対義語・反対語です。
覚醒と睡眠はどこかに境界線があるわけではなく、連続的に遷移してゆきます。ウトウトして気づかない間に眠ってしまうことも、逆に物音で目が覚めることも、覚醒と睡眠が連続的だからこそ起こるのです。
ただし、現代の日本語では睡眠は寝るでも眠るでも表現できるものと考えられています。ただ「これからベッドに入る」という行動は「寝る」であり、「眠る」を使うとぎこちない日本語になります。
「寝る」の意味
「寝る」とは
寝るとは、身体を横たえるという、起きている間の行動を意味しています。
「寝る」の使い方
寝るという言葉は、元々は睡眠とは何の関係もありません。例えば「寝転がってテレビを見る」は、睡眠とは無関係です。
睡眠が休息であり、身体を横たえることとセットになっていることから、寝るは睡眠とほとんど同じ意味で扱われています。「よく寝ている」も「よく眠っている」も、どちらもまったく同じことを意味しています。
しかしよく考えてみると、寝るは睡眠とは全く異なることが分かります。「寝る」は「身体を横にし、睡眠を取ろうとする行動」のことです。
この行動は、どこまでも限りなく睡眠状態に近づき、ついに眠りにつきます。しかしこの行動自体が睡眠状態なわけではありません。覚醒と睡眠が連続的に繋がっているのと同様に、寝ると眠るも連続的です。
連続的とはいえ、寝るは睡眠ではありません。寝るとは意識レベルを限りなく低下させていく覚醒状態の行動なのです。
ただし、以上の説明はあくまで言葉の意味の定義としての話です。現代の日本語では、睡眠状態は寝るでも眠るでも表現することが出来ます。ただし「これからベッドに入る」は「寝る」と表現する方が無難です。
「寝る」の対義語
寝るの対義語・反対語としては、足を使って身体を直立にすることを意味する「立つ」、睡眠から覚醒へと遷移することを意味する「起きる」などがあります。起きるとは、限りなく睡眠に近い状態から覚醒へと移っていくことです。
「寝る」の類語
寝るの類語・類義語としては、睡眠を取ろうとして布団に入ることを意味する「就寝」、起きることと寝ること、つまり日々の生活を意味する「臥する」(読み方:がする)などがあります。
寝るの寝の字を使った別の言葉としては、惰眠を貪り、なかなか起きようとしないことを意味する「寝穢い」(読み方:いぎたない)などがあります。常用外の漢字なので、普通はひらがなで「いぎたない」と表記されます。
「眠る」の意味
「眠る」とは
眠るとは、睡眠状態、比喩的に亡くなった人の状態を意味しています。
「眠る」の使い方
寝るという言葉の意味には意外性がありますが、眠るにはありません。眠るは言葉の意味と使われ方が一致しているからです。
眠るは覚醒状態の反対の状態で、意識状態が低下し、活動を休止することを意味しています。しかし、両者は全くの別物というわけではありません。
例えばウトウトしている内に気づいたら眠っていたり、逆に熟睡できずに、かすかな物音だけで目が覚めてしまうことがあります。こうしたことが可能なのは、睡眠と覚醒が別々の状態でありながらどこかで繋がっているからです。
また人が亡くなることを「永眠」(読み方:えいみん)と呼びます。睡眠状態で活動を止めている様子が亡くなった状態と近いことから生まれ表現です。永眠という言葉は、亡くなることをオブラートに包んで表現するものです。
なお、亡くなったことを寝の字を使って表現されることはありません。何故なら、寝は生きて活動している状態だからです。
このような特殊な使い方を覗けば、眠るは寝るとほぼ意味の違いはありません。寝るが現代の日本語では睡眠状態を指す言葉としても認識されているからです。
「眠る」の対義語
眠るの対義語・反対語としては、意識のはっきりした状態に戻ることを意味する「覚める」、からだを起こすことを意味する「起きる」などがあります。
「眠る」の類語
眠るの類語・類義語としては、眠たい気分や欲求を意味する「眠気」、暗示などによって、人を睡眠状態にさせたり、意識の低下した状態にすることを意味する「催眠」、気温が下がる季節に活動を休止した状態になることを意味する「冬眠」などがあります。
「寝る」の例文
この言葉がよく使われる場面としては、眠るために床に就くこと、睡眠状態を表現したい時などが挙げられます。本来の寝るの意味は、睡眠とは全く関係がありません。「寝転がる」や「寝そべる」「ごろ寝」など、全て起きていることを意味することが出来ます。
ですが、睡眠とは休息であり、休息のためには身体を横にするのが自然なことから、日本語の中で寝るが睡眠を意味していくようになりました。現代では、睡眠状態を表現するのに寝るも眠るも使うことが出来ます。
ただし、「これから床に就く、布団やベッドに入ること」を表現するのには、眠るはあまり使われず、寝るを使う傾向があります。
「眠る」の例文
この言葉がよく使われる場面としては、睡眠状態を表現したい時などが挙げられます。眠るは睡眠状態のことで、起きていることを意味する覚醒の反対の状態です。
現代では、寝るという言葉を使っても睡眠状態を表現できると認識されているので、二つの言葉の意味は限りなく同一ですが、眠るには独特の使い方もあります。
それは亡くなることを意味する「永眠」です。暗い意味ですが、あくまでも言葉の使い方の問題として、「亡くなる」という意味は「眠る」にしかなく、寝るにはないということを覚えておきましょう。