【彼我】と【自他】の意味の違いと使い方の例文

言葉の使い方の例文

似た意味を持つ「彼我」(読み方:ひが)と「自他」(読み方:じた)の違いを例文を使って分かりやすく解説しているページです。

どっちの言葉を使えば日本語として正しいのか、迷った方はこのページの使い分け方を参考にしてみてください。

「彼我」と「自他」という言葉は、どちらも「自分と他人」を意味しているという共通点があり、本来の意味は少し違いますが混同して使われる傾向があります。




彼我と自他の違い

彼我と自他の意味の違い

彼我と自他の違いを分かりやすく言うと、彼我とは自分と他人を意味し、自他とは自分と他人の意味だけでなく仏教用語としても用いられているという違いです。

彼我と自他の使い方の違い

一つ目の彼我を使った分かりやすい例としては、「何とか彼我両全の策を講じます」「彼我の力関係を逆転させたい」「全く勝負にならず彼我の差を痛感した」「こちらが他社モーターとの彼我比較です」などがあります。

二つ目の自他を使った分かりやすい例としては、「彼は自他共に認めるお調子者だ」「自他の区別がつかない人がいます」「自分は自他境界があいまいだと思う」「自他不二とは絶対的な平等のことです」などがあります。

彼我と自他の使い分け方

彼我と自他という言葉は、「自分と他人、自分の方と相手方」という共通する意味があります。この意味で使われている「彼我両全の策」は「自他両全の策」と言い換えることが出来ます。

さらに自他には、自力と他力という仏教用語の意味も持っています。仏教における自力とは、自分だけの力で修行し悟りを得ようとすることであり、他力とは、人々を悟りに導く仏の力のことです。この意味で用いられている「自他不二」の自他は、彼我に置き換えることは出来ません。

彼我と自他という言葉を比べると、自他の方が広い意味持ち、汎用性のある言葉だと言えるでしょう。

彼我と自他の英語表記の違い

彼我を英語にすると「both sides」「he and I」となり、例えば上記の「彼我両全の策」を英語にすると「a plan advantageous to both sides」となります。

一方、自他を英語にすると「oneself and others」「subject and object」となり、例えば上記の「自他共に認める」を英語にすると「recognize oneself and others」となります。

彼我の意味

彼我とは

彼我とは、相手と自分、あちらとこちらを意味しています。

彼我の読み方

彼我の読み方は「ひが」です。誤って「かれが」「かれわれ」などと読まないようにしましょう。

彼我の使い方

彼我を使った分かりやすい例としては、「彼我の戦力差は絶望的だった」「彼我の境を仕切るアクリル板があった」「浜公園内の彼我庭園を散策する」「SNSの彼我比較に嫌気がさす」「冷静な彼我比較が必要です」などがあります。

その他にも、「彼我の差を縮めるために猛特訓する」「彼我の関係を強固なものにするための政略結婚でした」「同業他社と自社の彼我分析を行う」「彼我の価値観を大切にある」「彼我の経済力は大きく違っている」などがあります。

彼我という言葉の「彼」は三人称で、ある人や物をさす語です。「我」は一人称で、自分を指します。彼我とは、「他人と自分」「人と我」「彼らと私」を意味する言葉であり、日常会話ではあまり使われない文語的表現です。

「彼我の差」の意味

上記の例文にある「彼我の差」とは、両者の差異やあちら側とこちら側の違いを意味します。相手と自分との間に乖離がみられる時に用いられる表現です。

「彼我不明」の意味

また、中国語には「彼我不明」という成句があり、明らかになっていないことや、把握できていないさまを意味します。

表現方法は「彼我の関係」「彼我の戦力差」「彼我の境」

上記以外では「彼我の関係」「彼我の戦力差」「彼我の境」などが、彼我を使った一般的な言い回しです。

彼我の対義語

彼我の対義語・反対語としては、自分や自己を意味する「自我」、他と区別された個人としての自我を意味する「個我」、自分みずからを意味する「自分自身」などがあります。

彼我の類語

彼我の類語・類義語としては、関係するものの両方を意味する「双方」、両方の者を意味する「両者」、一つの物事に関係する両方の立場を意味する「相互」などがあります。

自他の意味

自他とは

自他とは、自分と他人、自分と自分以外の者を意味しています。

その他にも、「仏教用語で自力と他力」「自動詞と他動詞」の意味も持っています。

自他の使い方

「私は自他ともに認める食いしん坊です」「自他共栄の考えを大切にする」「自分の自他境界をチェックする」「幼児期に自他尊重の心を育む」などの文中で使われている自他は、「自分と自分以外の者」の意味で使われています。

一方、「仏教の自他不二を説く」「自他一如の心を持って他人に接する」などの文中で使われている自他は「自力と他力」の意味で、「日本語も英語も自他の見分け方が分かりません」などの文中で使われている自他は「自動詞と他動詞」の意味で使われています。

自他とは、上記の例文にあるように、複数の意味を持ちますが、一般的には「自分と他人、自分と自分以外の者」の意味で用いられています。この意味では「自他ともに…」の言い回しで用いられることが多く、自分自身にも他人も同様であることを表します。

「自他境界」の意味

上記の例文にある「自他境界」とは、自分と他者を区分する意識的な境界線のことです。「バウンダリー」とも言い、自分に対して行動をとってくる他人に対して、許容可能であるかを判別するために各個人が作成するルールを意味します。

「自他不二」の意味

自他を用いた日本語には「自他不二」という大乗仏教用語があります。自己と他人とは別人でありながら、ただ一つである存在であるという考え方です。仏教において誰もが絶対平等であることを説いています。

表現方法は「自他ともに」「自他の精神」「自他の境界線」

上記以外では「自他ともに」「自他の精神」「自他の境界線」などが、自他を使った一般的な言い回しです。

自他の類語

自他の類語・類義語としては、そこにいる人すべてを意味する「皆」、その団体などに属するすべての人員を意味する「全員」、そこにいる人々全部や仲間の者全体を意味する「一同」などがあります。

彼我の例文

1.試合の前から彼我の差は明らかであったが、悔いのないように全力で戦いました。
2.彼我一体をスローガンとする我が校は、英語教育にも力を入れています。
3.ライバル製品と自社製品の彼我比較を、コストの観点から行いました。
4.戦略や戦術は、彼我の戦力差を考慮して臨機応変に変えなければならなりません。
5.現在議論されている経済協定が締結されると、彼我の関係は強化されるだろう。
6.進学校に無理して入ったら、授業を聞いていなくても成績上位な奴が普通にいて彼我の差を思い知らされた。
7.わたしがいくらテスト勉強を頑張っても、彼我の差が縮まることはなかったが、あきらめない気持ちを育むことができた。
8.いちいち彼我の違いなど気にしていたら、チームとしてうまく仕事を進めることが出来るはずがないだろう。
9.彼我の主張は双方食い違ったまま、交渉は決裂かと思われたが、ある女性社員の一言で事態は好転した。
10.彼我の正義が違うからこそ争いが起こり、強いものが弱いものに一方的に正義を押し付けてしまうのだろう。

この言葉がよく使われる場面としては、他人と自分、相手方と自分の方を表現したい時などが挙げられます。

例文2にある「彼我一体」とは、相手方と自分たちは一つにまとまっていることを意味し、教師と生徒はともにあることを表しています。

自他の例文

1.私たちは自他ともに認める円満夫婦でしたが、今では離婚を考えるようになりました。
2.柔道は自他共栄と精力善用を指針とするスポーツであり、人間教育としての価値もあります。
3.私の学校は、自他の敬愛を建学の精神とするミッションスクールです。
4.仏教には、すべての命のつながりを自他不二とする考えが根底にあります。
5.英語の文法がよく分からず、自他によって前置詞をつけるかどうかが迷います。
6.彼女は相手の話をすべて受け入れてしまったり、なんでもない会話でもすぐ泣き出したりと自他の境が曖昧なようで少し心配になる。
7.同僚は自他ともに認める食いしん坊なので、平日の昼間でも社食を使わずにわざわざ外のレストラン街に繰り出していくほどだ。
8.昨今マスクを巡って殺伐としているが、自他一如のこころをもって人と接することを忘れ、だいぶいい加減になっているのではないか。
9.親としてこどもには自他尊重の心を育めるように、おおくの人と触れ合い、社会性を身につけるように心がけている。
10.自他の境界線があいまいになると、他人に自分の価値観を押し付けたり、逆に他人の価値観に無批判に受け入れたりと精神が不安定になりやすいのだ。

この言葉がよく使われる場面としては、自分と他人、自力と他力、自動詞と他動詞を表現したい時などが挙げられます。

例文1の文中にある「自他ともに認める」は、自認すると共に周囲もそれと認めているさまを表します。「自他ともに許す」とも言い換えることが出来ます。例文2の「自他共栄」とは、互いに信頼して助け合い、自分も世の中の人も共に栄えることを意味します。

例文5の「自他」は、動詞の自動詞と他動詞を意味しています。

彼我と自他という言葉は、どちらも「自分と他人」を表します。さらに「自他」には、仏教における自力と他力、文法における自動詞と他動詞の意味もあることを覚えておきましょう。

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