【契機】と【転機】の意味の違いと使い方の例文

言葉の使い方の例文

似た意味を持つ「契機」(読み方:けいき)と「転機」(読み方:てんき)の違いを例文を使って分かりやすく解説しているページです。

どっちの言葉を使えば日本語として正しいのか、迷った方はこのページの使い分け方を参考にしてみてください。

「契機」と「転機」という言葉は、どちらも「きっかけ」を意味しているという共通点があり、本来の意味は少し違いますが混同して使われる傾向があります。




契機と転機の違い

契機と転機の意味の違い

契機と転機の違いを分かりやすく言うと、契機とは何かが起こるきっかけを表し、転機とは状況や状態が変わるきっかけを表すという違いです。

契機と転機の使い方の違い

一つ目の契機を使った分かりやすい例としては、「これを契機として個人情報保護法が制定されました」「こころの不調には契機となる出来事やストレスが潜んでいます」「この本は英語教育を考えなおす契機になりました」などがあります。

二つ目の転機を使った分かりやすい例としては、「人生の一大転機となる出来事でした」「先生との出会いが転機となりました」「これまで数多くの転機を迎えてきました」「転機が訪れる前兆を感じます」などがあります。

契機と転機の使い分け方

契機と転機という言葉は、どちらも物事を始めるきっかけを表しますが、意味や使い方には違いがあります。

契機とは、物事が起こるときの手がかりやきっかけを意味します。人が行動を起こす要因となる事柄や、物事の変化をもたらす流れを表します。また、哲学用語として、全体を構成するために不可欠な要素を意味する言葉です。

転機とは、他の状態に転じるきっかけを意味し、「転機が訪れる」「転機を迎える」などと言います。上記の例文にある「人生の転機」とは、これまでの生活していた環境から、新しいステージにシフトしていくような大きな変化を表す言葉です。

つまり、契機とは物事が起こるきっかけを表しますが、転機とはそれまでの状況や状態が一変するきっかけを意味する点に、二つの言葉の違いがあります。

契機と転機の英語表記の違い

契機を英語にすると「opportunity」「trigger」「chance」となり、例えば上記の「これを契機として」を英語にすると「taking this opportunity」となります。

一方、転機を英語にすると「turning point」「landmark」「watershed」となり、例えば上記の「人生の一大転機」を英語にすると「a major turning point in my life」となります。

契機の意味

契機とは

契機とは、きっかけ、動機を意味しています。

その他にも「ヘーゲルの弁証法の用語。全体を構成するために不可欠な要素、また、事物の動的過程において、その変化や発展を規定する本質的・必然的な通過段階」の意味も持っています。

契機の読み方

契機の読み方は「けいき」です。同じ読み方をする熟語に「景気」がありますが、意味が異なるので書き間違いに注意しましょう。

表現方法は「契機として」「契機ともなり得る」「契機になる」

「契機として」「契機ともなり得る」「契機になる」などが、契機を使った一般的な言い回しです。

契機の使い方

「産業革命を契機に工業化が急速に進みました」「受験勉強は英語力を高める契機になる」「システムの更改を契機として運用経費の削減を進めよう」「この出来事はジェンダーを考える契機となるでしょう」 などの文中で使われている契機は、「きっかけ、動機」の意味で使われています。

一方、「弁証法的思惟における自己否定の契機について論じる」「ヘーゲルは個々の契機を総括しました」「否定のなかにひそむ肯定の契機が出てくる」「市民社会は三つの契機を含む」などの文中で使われている契機は、「ヘーゲルの弁証法の用語」の意味で使われています。

契機の「契」は訓読みで「きざむ」と読み、しるしを付けることを表します。物事の起こる兆しやきっかけを表す「機」と組み合わさり、契機とは、物事が起こるきっかけや、人が意志を決めたり行動を起こしたりする直接の原因を意味します。

また、契機という言葉は、ヘーゲルの弁証法の用語として用いられています。それを欠いては事物が存在できないような要素、または、事物が発展するのに、どうしてもそこを通らねばならない点や条件を表します。

契機の類語

契機の類語・類義語としては、事態を引き起こす直接の原因を意味する「引き金」、ある事の起こる原因となることを意味する「起因」、ある事柄を誘い出す原因を意味する「誘因」、物事を引き起こすきっかけを意味する「トリガー」、物事をするのによい機会を意味する「チャンス」などがあります。

転機の意味

転機とは

転機とは、他の状態に転じるきっかけを意味しています。

表現方法は「転機が訪れる」「人生の転機」「転機の年」

「転機が訪れる」「人生の転機」「転機の年」「転機が来る」などが、転機を使った一般的な言い回しです。

転機の使い方

転機を使った分かりやすい例としては、「娘が結婚という転機を迎える」「転職は生活を変える転機となり得ます」「英語が人生の転機になりました」「海外赴任する来年は転機の年となりそうです」などがあります。

その他にも、「彼との別れは転機を迎えるきっかけになりました」「いつ人生の転機が訪れるのだろう」「転機にはスピリチュアルな前兆があります」「手相占いによると今年中に転機が訪れるようだ」などがあります。

転機とは、新たな状態や状況に変わるきっかけを意味します。転機の「転」は訓読みで「ころがる」と読み、方向を変えることや変化することを表し、「機」は物事の起こるきっかけを表す漢字です。

「一転機」の意味

転機を用いた日本語には「一転機」があります。一転機とは、「いってんき」または「いちてんき」と読み、物事が大きく変わる重大な境目を意味します。「大震災が人生の一転機になった」などと言います。

転機の類語

転機の類語・類義語としては、新しい状態などに変化する変わりめを意味する「曲がり角」、物事がどうなるかの分かれ目を意味する「分岐点」、その後の方向を決定づける一つの大きな変わりめを意味する「一転機」、変わり目や転換期を意味する「ターニングポイント」などがあります。

契機の例文

1.外国人観光客の受け入れは、インバウンド需要の回復が始まる契機となるでしょう。
2.英語のテキストにある例文を契機として、海外の文化に興味を持つ生徒もいます。
3.このワークショップに参加すれば、ビジネスモデル立案の契機を得ることができるだろうか。
4.好きがきっかけとなった仕事と、勧められたことが契機になった仕事では、やりがいに違いが出るだろう。
5.ヘーゲルが論理学で扱う諸概念は、すべて対立しあう二つの契機から成り立っています。
6.我が社は中小企業なので今後のために「インボイス制度導入を契機としたDX推進策」というセミナーに参加することにした。
7.節約ブームは何も昨今の物価高を契機にしたものではなく、いつの時代も普遍的にあったものだ。
8.仕事をクビになったことは痛手であったが、新たなスタートを切る契機となりました。
9.彼のような若手起業家の成功は多くの若者に起業への志を持たせる契機となりました。
10.思い立ったが吉日というが、それが何かの契機となるかもしれない。 直感が人生を動かすこともある。

この言葉がよく使われる場面としては、動機や原因、 ヘーゲルの弁証法の用語で本質的構成要素を表現したい時などが挙げられます。

例文2にある「契機として」の意味は、前述の事柄を手掛かりすることであり、「○○を機に」と言い換えることができます。例文4の「契機」と「きっかけ」の違いは、契機はきっかけよりも改まった表現になる点です。

転機の例文

1.興味を持つ対象が変わる時が、人生の転機が来る前兆と言われています。
2.病気や災害などネガティブな変化も、人生の転機の一つとなり得ます。
3.昨年は、ずっと想い描いていたことが動き始めた転機の年となりました。
4.転機が訪れるときのスピリチュアルなサインを、決して逃してはいけません。
5.転職は人生の一大転機なのだから、転職先の給与だけでなく評判や口コミも確認すべきだろう。
6.病気で入院したことが転機となり、これまでの仕事一辺倒の生き方を改善しワークライフバランスを考えるようになった。
7.科学の発展は医療の分野においても革命的な転機をもたらし、多くの難病に対処できるようになりました。
8.廃部寸前の映画部に、突如女子部員が入ることが転機になり、コンペティションに出品するための映画を撮ることとなった。
9.彼は怪我で運動部を退部してから浮かない学校生活を過ごしていたが、転機となったのは、美術部の顧問と出会ったことであった。
10.その女優さんは舞台を中心に活動していたが、2012年にテレビ出演をしたことで転機が訪れる。

この言葉がよく使われる場面としては、別の状態に移るきっかけ、変わり目を表現したい時などが挙げられます。

例文1にある「転機が来る」とは、変わるきっかけが起きることを意味します。特に、大きく今までの人生の流れを変えるような節目を迎えるときに使われます。「転機が訪れる」 「転機を迎える」などと言い換えることが可能です。

契機と転機という言葉は、どちらも「きっかけ」を表します。どちらの言葉を使うか迷った場合、何かが起こるきっかけを表現したい時は「契機」を、状況や状態が変わるきっかけを表現したい時は「転機」を使うようにしましょう。

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