似た意味を持つ「鬼籍」(読み方:きせき)と「冥土」(読み方:めいど)の違いを例文を使って分かりやすく解説しているページです。
どっちの言葉を使えば日本語として正しいのか、迷った方はこのページの使い分け方を参考にしてみてください。
「鬼籍」と「冥土」という言葉は、どちらも「命が絶えること」を表しているという共通点があり、本来の意味は少し違いますが混同して使われる傾向があります。
鬼籍と冥土の違い
鬼籍と冥土の意味の違い
鬼籍と冥土の違いを分かりやすく言うと、鬼籍とは死者の名前を記した帳簿を表し、冥土とは死後に行く世界を表すという違いです。
鬼籍と冥土の使い方の違い
一つ目の鬼籍を使った分かりやすい例としては、「鬼籍に入る前に会わせてあげたい人がいます」「鬼籍に入っている同級生は少なくない」「身内の者はすでに鬼籍に入る」「元気な友人が鬼籍に登り、驚くばかりでした」などがあります。
二つ目の冥土を使った分かりやすい例としては、「故人は冥土へ行くと考えられています」「冥土には亡くなった人たちの魂が彷徨っている」「私の秘密を冥土の土産に教えてやろう」「三途の川を渡って冥土に行きます」などがあります。
鬼籍と冥土の使い分け方
鬼籍と冥土という言葉は、どちらも人の死にまつわる表現であり、命が絶えることを意味しますが、意味や使い方には違いがあります。
鬼籍とは、死者の名や死亡した年月日などを記す帳面のことです。「鬼籍に入る」「鬼籍に登る」などの言い回しで、人の命が絶えて亡くなったことを意味します。死亡することの婉曲表現として使われている言葉です。
冥土とは、元来は仏教語であり、死後に行くとされている世界を意味します。「冥土の土産」とは、死ぬ前に欲する物や、聞いておきたい話、見ておきたい景色などを指します。手に入れて初めて安心して死ねるような事物をいう表現です。
鬼籍と冥土の英語表記の違い
鬼籍を英語にすると「necrology」「death register」「the ranks of the dead」となり、例えば上記の「鬼籍に入る」を英語にすると「join the ranks of the dead」となります。
一方、冥土を英語にすると「underworld」「hades」「netherworld」となり、例えば上記の「冥土へ行く」を英語にすると「go down to the netherworld」となります。
鬼籍の意味
鬼籍とは
鬼籍とは、死んだ人の名や死亡年月日を書きしるす帳面を意味しています。
鬼籍の使い方
鬼籍を使った分かりやすい例としては、「鬼籍に入る前にやりたいことが山ほどあります」「鬼籍に入っている両親が残してくた遺産がある」「病気が悪化して鬼籍に入らないことを祈る」などがあります。
その他にも、「若い英語教師が事故で鬼籍に入る」「なぜ若くして鬼籍に名前が載ってしまったのだろうか」「同年代の人々が鬼籍に登ることが多くなった」「闘病の末、とうとう鬼籍に登った」などがあります。
鬼籍とは、死者の名や死亡年月日などを記す帳面のことです。なぜ死者の台帳に「鬼」という言葉が使われているかというと、中国では死者のことを「鬼」と表現するからです。
「鬼籍に入る」「鬼籍に登る」の意味
鬼籍は「鬼籍に入る」(読み方:きせきにいる)、「鬼籍に登る」という言い回しで使われ、人が亡くなったことを表します。
「鬼籍に入る」は敬語ですが、尊敬語ではなく丁寧語のため、自分や身内、他人に関係なく使うことができます。目上の人に対しては、尊敬の助動詞「られる」を付けて「鬼籍に入られる」と表現すると、より敬った気持ちを表すことができます。
鬼籍の対義語
鬼籍の対義語・反対語としては、生きてこの世にいることや生命を存続することを意味する「生存」、人が生まれることや出生を意味する「誕生」などがあります。
鬼籍の類語
鬼籍の類語・類義語としては、寺で信徒の死者の俗名や死亡年月日や年齢などを記入しておく帳簿を意味する「過去帳」、死者の姓名を書き記した帳面を意味する「点鬼簿」、閻魔王が死者の生前の行為や罪悪を書きつけておくという帳簿を意味する「閻魔帳」などがあります。
冥土の意味
冥土とは
冥土とは、仏語で死者の霊魂の行く世界、地獄・餓鬼・畜生の三悪道をいう、あの世、冥界、冥府を意味しています。
冥土は「冥途」とも書く
冥土は「冥途」とも書き表しますが、一般的には「冥土」と表記します。
表現方法は「冥土の土産」「冥土に旅立つ」
「冥土の土産」「冥土に旅立つ」などが、冥土を使った一般的な言い回しです。
冥土の使い方
冥土を使った分かりやすい例としては、「事件の真相を冥土の土産に教えてやろう」「冥土の土産なんて失礼なことを言うな」「冥土でも恋愛しようと夫と誓っています」「浄瑠璃の演目のなかで冥途の飛脚が一番好きです」などがあります。
その他にも、「門松は冥途の旅の一里塚だから今年も大切に過ごそう」「正月は冥土の旅の一里塚めでたくもあり、めでたくもなし」「人生は冥土までの暇つぶしとはよく言ったものだ」「多くの宗教では故人の霊魂は冥土へ旅立つとされている」などがあります。
冥土とは、死者の霊魂がたどって行く道や、亡者が彷徨い赴く世界を意味する仏教用語です。主に、地獄・餓鬼・畜生の三悪道などを指します。日本では地蔵信仰と関連して、冥土には三途の川や賽の河原などがあると考えられました。
「門松は冥土の旅の一里塚」の意味
上記の例文にある「門松は冥土の旅の一里塚」とは、めでたい門松を立てるたびに年を重ねることから、次第に死に近づく標示であることを意味します。「正月は冥土の旅の一里塚」とも言います。
冥土の対義語
冥土の対義語・反対語としては、この世や現在の世を意味する「現世」、生活している現実のこの世界を意味する「この世」、この世や現世を意味する「顕界」、この世に生まれ出る以前の世を意味する「前世」などがあります。
冥土の類語
冥土の類語・類義語としては、死後その魂が行くとされている地下の世界を意味する「黄泉」、死後に行くという世界を意味する「幽界」、あの世や死後の世界を意味する「後世」、死後の世界や冥土を意味する「幽冥」などがあります。
鬼籍の例文
この言葉がよく使われる場面としては、死者の名や死亡年月日などを記しておく帳簿を表現したい時などが挙げられます。
例文2や例文5の文中にある「鬼籍に入った」は、「鬼籍に入る」の過去形です。「鬼籍に登った」と言い換えられます。
冥土の例文
この言葉がよく使われる場面としては、死者が赴く迷いの世界を表現したい時などが挙げられます。
例文1にある「冥土の土産」とは、冥土へ行く際に持参する土産のことであり、それを手に入れて初めて安心して死ねるような事物を表す言い回しです。
鬼籍と冥土という言葉は、どちらも「人の命が絶えること」を表します。どちらの言葉を使うか迷った場合、死者を記した帳簿を表現したい時は「鬼籍」を、死後に行く世界を表現したい時は「冥土」を使うようにしましょう。