似た意味を持つ「折檻」(読み方:せっかん)と「虐待」(読み方:ぎゃくたい)の違いを例文を使って分かりやすく解説しているページです。
どっちの言葉を使えば日本語として正しいのか、迷った方はこのページの使い分け方を参考にしてみてください。
「折檻」と「虐待」という言葉は、どちらも体罰行為を表しているという共通点があり、本来の意味は少し違いますが混同して使われる傾向があります。
折檻と虐待の違い
折檻と虐待の意味の違い
折檻と虐待の違いを分かりやすく言うと、折檻とは相手を正そうとする意味合いがあり、虐待とは相手を正そうとする意味合いはないという違いです。
折檻と虐待の使い方の違い
一つ目の折檻を使った分かりやすい例としては、「しつけのために子供を折檻する」「折檻により命が奪われる事件が発生しました」「遊郭には折檻部屋がありました」「子供のころ厳しい親から折檻されました」などがあります。
二つ目の虐待を使った分かりやすい例としては、「児童虐待の悲しいニュースが絶えない」「児童相談所に虐待の通報がありました」「高齢者虐待防止法はいつ施行されましたか」「虐待を防ぐためには何が必要だろうか」などがあります。
折檻と虐待の使い分け方
折檻と虐待という言葉は、どちらも子供が親に受ける体罰事件などで用いられていますが、厳密な意味や使い方には違いがあります。
折檻とは、臣下が主君を厳しく諫める出来事に由来する故事成語です。現代では、厳しく叱ることや、二度としないように体刑を加えたりすることの意味で使われています。言動のよくない点などを指摘して、正そうとする行為のことです。
虐待とは、むごい扱いをすることを意味し、特に、子供や高齢者、動物など立場の弱い者を苦しめ、痛めつけることに対して用いられる言葉です。具体的には、殴る蹴るの暴力行為や、育児を放棄するネグレクトなどが日常的に行われていることを指します。
つまり、折檻とは相手を正そうと叱ることであり、虐待とは自分の感情から弱い者を痛めつけることを表します。虐待という言葉には、折檻が持つ相手を正すという意味合いはないことを覚えておきましょう。
折檻と虐待の英語表記の違い
折檻を英語にすると「torture」「physical punishment」「chastisement」となり、例えば上記の「子供を折檻する」を英語にすると「discipline a child」となります。
一方、虐待を英語にすると「abuse」「ill‐treatment」「cruelty」となり、例えば上記の「児童虐待」を英語にすると「child abuse」となります。
折檻の意味
折檻とは
折檻とは、厳しく叱ったり、懲らしめの体刑を加えたりすることを意味しています。
その他にも、「強くいさめること、厳しく諫言すること」の意味も持っています。
折檻の読み方
折檻の読み方は「せっかん」です。誤って「せつらん」「しゃくかん」などと読まないようにしましょう。
折檻の使い方
「行儀が悪い息子を折檻する」「実の子を折檻して逮捕された事例はありますか」「親は暴力ではなく折檻だと言い逃れをした」「信長は19条におよぶ折檻状を信盛に突きつけた」などの文中で使われている折檻は、「厳しく叱ったり、体刑を加えたりすること」の意味で使われています。
一方、「家臣が折檻諫言したものの将軍は聞く耳を持たなかった」「タイミングを見計らって部長に折檻しようと思う」「後輩から折檻されて情けなくなった」などの文中で使われている折檻は、「強くいさめること」の意味で使われています。
折檻の由来
折檻という言葉の由来は、古代中国の歴史書「漢書」に収められている「朱雲伝」の故事にあります。朱雲は帝の政治に厳しく忠告したため、宮殿から追い出されることになりました。ところが、朱雲は檻(手すり)に掴まって動こうとしなかったため、檻は折れてしまいました。
この事から、過ちを厳しく指摘すること、転じて、懲らしめの体刑を与えたりすることを「折檻」と言い表すようになりました。
「折檻諫言」の意味
折檻を用いた日本語には「折檻諫言」があります。折檻諫言とは、仕えている主君に対して、臣下が厳しく意見することを意味します。「諫言」は、目上の人を諫める言葉のことです。
「折檻政治」は誤り
折檻の誤った使い方には「折檻政治」があります。正しくは「摂関政治」であり、摂政あるいは関白が主導して行なう政治のことです。特に、平安時代に藤原氏や関白を独占し、天皇に代わって行った政治を指すことが多い言葉です。
折檻の対義語
折檻の対義語・反対語としては、深く感心して褒めることを意味する「賛嘆」、大いに褒めることや称賛することを意味する「褒め称える」、人の気に入るような口先だけのうまい言葉を意味する「甘言」、うれしがることを言って相手を得意にさせる「おだてる」などがあります。
折檻の類語
折檻の類語・類義語としては、こらしめのために罰すること「お仕置き」、肉体に直接苦痛を与える罰を意味する「体罰」、懲りさせることを意味する「懲らしめ」、他人の失敗などを叱りとがめることを意味する「叱責」などがあります。
虐待の意味
虐待とは
虐待とは、むごい扱いをすることを意味しています。
虐待の使い方
虐待を使った分かりやすい例としては、「最近は胸が痛むような虐待事件が多すぎる」「障害者虐待の種類にはネグレクトや性的虐待があります」「あの英語教師が生徒を虐待していたなんて信じられません」などがあります。
その他にも、「児童虐待の定義は法律で定められていますか」「高齢者に対する虐待防止法があります」「虐待を発見したら通報義務があります」「虐待を受けた子供には共通する特徴があります」などがあります。
虐待とは、人や生き物に対して、残酷でむごたらしい行為をすることです。虐待という言葉の「虐」は訓読みで「しいたげる」と読み、むごい目にあわせることを表し、「待」は取り扱うことを表します。
「児童虐待」の意味
上記の例文にある「児童虐待」とは、法律上、保護者が監護する18歳未満の児童を虐待することと定義されています。身体的虐待、性的虐待、ネグレクト、心理的虐待の四つに分類されます。2000年に児童虐待防止法が施行され、学校や福祉施設の教職員に早期発見の努力義務が課されました。
虐待の対義語
虐待の対義語・反対語としては、可愛がって庇護することを意味する「愛護」、手厚くもてなすことを意味する「優待」、外からの危険や脅威などからかばい守ることを意味する「保護」などがあります。
虐待の類語
虐待の類語・類義語としては、弱い立場の者などを追い詰めて苦しめることを意味する「迫害」、弱い者を暴力やいやがらせなどによって苦しめることを意味する「いじめ」、家庭内における暴力行為を意味する「DV」などがあります。
折檻の例文
この言葉がよく使われる場面としては、責め苛むこと、叱って体罰を加えること、強くいさめることを表現したい時などが挙げられます。
例文4にある「折檻状」とは、織田信長が家臣の佐久間信盛に送った19ヶ条からなる直筆の書状のことです。その中身は、事実上の解雇通知だったと言われています。
虐待の例文
この言葉がよく使われる場面としては、残酷に取り扱うこと、残虐な待遇を表現したい時などが挙げられます。
虐待という言葉は、人だけでなく動物に対しても使われます。例文5にある「動物虐待」とは、動物を不必要に苦しめる行為のことです。正当な理由なく動物を傷つけたりする積極的な行為だけでなく、必要な世話を怠ったりするネグレクトと呼ばれる行為も含まれます。
折檻と虐待という言葉は、どちらも体罰行為を表します。どちらの言葉を使うか迷った場合、相手を正そうと叱ることを表現したい時は「折檻」を、自分の感情から弱い者を痛めつけることを表現したい時は「虐待」を使うようにしましょう。