似た意味を持つ「厭世的」(読み方:えんせいてき)と「悲観的」(読み方:ひかんてき)の違いを例文を使って分かりやすく解説しているページです。
どっちの言葉を使えば日本語として正しいのか、迷った方はこのページの使い分け方を参考にしてみてください。
「厭世的」と「悲観的」という言葉は、どちらも「希望を持てなくなっているさま」を表しているという共通点があり、本来の意味は少し違いますが混同して使われる傾向があります。
厭世的と悲観的の違い
厭世的と悲観的の意味の違い
厭世的と悲観的の違いを分かりやすく言うと、厭世的とは人生や世の中に対して希望を持てないさま、悲観的とは全ての物事に対して希望を持てないさまという違いです。
厭世的と悲観的の使い方の違い
一つ目の厭世的を使った分かりやすい例としては、「ショーペンハウエルは厭世的な哲学者でした」「厭世的な小説を好んで読んでいます」「恋人から別れを告げられ、厭世的な気分で朝を迎えました」などがあります。
二つ目の悲観的を使った分かりやすい例としては、「日本の将来を悲観的に見る」「母は心配性で悲観的になりがちだ」「悲観的な人生観を捨てて前向きに生きよう」「悲観的な考え方にもメリットがあります」などがあります。
厭世的と悲観的の使い分け方
厭世的と悲観的という言葉は、どちらも希望を持てなくなっている様子を表すマイナスイメージの言葉ですが、意味や使い方には違いがあります。
厭世的とは、世の中に希望を見出せず、生きていることにうんざりしているさまを意味します。世の中や人生に対する失望感を表す言葉です。
悲観的とは、先行きに希望がないと考えるさまを意味します。世の中や人生だけでなく考え方や状況など、あらゆる物事に対して悪い方向に考えてしまうさまを表します。
つまり、厭世的は人生や世の中に対する失望感を表しますが、悲観的はあらゆる物事に対する失望感を表現します。厭世的と悲観的という言葉を比べると、悲観的の方が広い意味を持ち、汎用性のある言葉だと言えるでしょう。
厭世的と悲観的の英語表記の違い
厭世的も悲観的も英語にすると「pessimistic」となり、例えば上記の「厭世的な哲学者」を英語にすると「pessimistic philosopher」となります。
厭世的の意味
厭世的とは
厭世的とは、人生に悲観し、生きているのが嫌になっているさまを意味しています。
厭世的の読み方
厭世的の読み方は「えんせいてき」です。誤って「おんせいてき」「えんよてき」などと読まないようにしましょう。
表現方法は「厭世的な気分」「厭世的な性格」「厭世的になる」
「厭世的な気分」「厭世的な性格」「厭世的になる」などが、厭世的を使った一般的な言い回しです。
厭世的の使い方
厭世的を使った分かりやすい例としては、「彼は常につまらなそうにしている厭世的な人だ」「厭世的だった彼女は英語留学で考えが変わったようだ」「嫌なことがあって厭世的な気分になっている」などがあります。
その他にも、「厭世的な性格を直したいと思う」「厭世的な思考回路を変えたいです」「厭世的な作品を書く作家だ」「厭世的思想を持つ宗教があります」「ギフテッドは孤独を感じて厭世的になりがちです」などがあります。
厭世的という言葉の「厭世」とは、この世は悪と苦に満ちていて、生きていることがつまらないものだと思うことを意味します。「厭」は訓読みで「いとう」「いや」と読んで、嫌だと思って避けようとすることを表す漢字です。
厭世的とは、世の中に希望を見い出せず、生きることに対して投げやりな気分になっているさまを意味する言葉です。厭世的は文語的表現であり、日常会話においては英語由来のカタカナ語である「ペシミスティック」と表現されることがほとんどです。
「厭世的な人」の意味
上記の例文にある「厭世的な人」とは、人生を悲観したり、虚しさを感じたりして、生きる意味が見つけられない状態になっている人のことです。夢や希望がないという特徴があります。
厭世的の対義語
厭世的の対義語・反対語としては、物事にくよくよしないでいつも明るいほうに考えていくさまを意味する「楽天的」、軽薄でむこうみずであることを意味する「能天気」、心身の苦痛や生活の苦労がなく楽々としていることを意味する「安楽」などがあります。
厭世的の類語
厭世的の類語・類義語としては、この世では幸福や満足を得られず積極的な価値は認めがたいとする人生観を意味する「厭世観」、全く希望がもてないほど悪くなっているさまを意味する「絶望的」、既存の価値体系や権威をすべて否定する思想や態度を意味する「ニヒリズム」などがあります。
悲観的の意味
悲観的とは
悲観的とは、先行きに望みはないと考えるさま、望みの持てないさまを意味しています。
表現方法は「悲観的な言葉」「悲観的な人」「悲観的になる」
「悲観的な言葉」「悲観的な人」「悲観的になる」などが、悲観的を使った一般的な言い回しです。
悲観的の使い方
悲観的を使った分かりやすい例としては、「いつも悲観的に物事を考えてしまう」「悲観的な人は、なかなか行動に移せません」「悲観的なマスコミ評論家が多いように感じる」「英語が苦手でも悲観的になる必要はないよ」などがあります。
その他にも、「悲観的に準備し、楽観的に対処せよ」「悲観的排他制御は読み取り時にロックをかけます」「楽観的ロックと悲観的ロックによって排他制御を行う」「実在論を悲観的帰納法によって批判する」などがあります。
悲観的の「悲観」とは、物事が思うようにならずに失望すること、世の中や人生が悪と苦に満ちていると考えることです。そのような性質を表す「的」と組み合わさり、悲観的とは、将来の見通しに希望を持てなくなっているさまを意味する言葉です。
「悲観的に準備し、楽観的に対処せよ」の意味
悲観的という言葉を用いた名言には「悲観的に準備し、楽観的に対処せよ」があります。これは危機管理評論家の佐々淳行氏の言葉であり、起こりうる最悪の事態を想定して備えておき、非常の事態が起こった際には、先行きを悲観せずに冷静に臨むべきであることを意味しています。
「悲観的防衛主義」は誤り
悲観的の誤った使い方には「悲観的防衛主義」があります。正しくは「防衛的悲観主義」であり、失敗した場合のことを考え、そうならないように努力するという考え方であり、心理学の世界で用いられる言葉です。
悲観的の対義語
悲観的の対義語・反対語としては、物事をうまくゆくものと考えて心配しないさまを意味する「楽観的」、積極的に認めるさまを意味する「肯定的」、何事においても良い方向に考えが向くことを意味する「プラス思考」、物事に対する姿勢が積極的であることを意味する「前向き」などがあります。
悲観的の類語
悲観的の類語・類義語としては、否定する内容をもつさまを意味する「否定的」、何かにつけて悪い方向に考えが向くことを意味する「マイナス思考」、考え方などが消極的なことを意味する「後ろ向き」などがあります。
厭世的の例文
この言葉がよく使われる場面としては、人生に絶望し、世をはかなむ傾向にあるさまを表現したい時などが挙げられます。
厭世的という言葉は、話し言葉よりも書き言葉として使われる傾向があります。例文2や例文3の「厭世的な作品」「厭世的な小説」のように、文学作品や芸術作品に対して用いられることも少なくありません。
悲観的の例文
この言葉がよく使われる場面としては、悲観する傾向にあるさま、すべての事態を悪い方に考えがちな性向を表現したい時などが挙げられます。
例文3にある「悲観的」と「ネガティブ」という言葉の違いは、悲観的は悪い結果を考えて望みがなくなっている様子であり、ネガティブはあまり考えずに悪いと決めつける様子である点にあります。
厭世的と悲観的という言葉は、どちらも「希望を持てなくなっているさま」を表します。どちらの言葉を使うか迷った場合、人生や世の中に対して希望を持てない様子を表現したい時は「厭世的」を、あらゆる物事に対して希望を持てない様子を表現したい時は「悲観的」を使うようにしましょう。