似た意味を持つ「貴賤」(読み方:きせん)と「優劣」(読み方:ゆうれつ)の違いを例文を使って分かりやすく解説しているページです。
どっちの言葉を使えば日本語として正しいのか、迷った方はこのページの使い分け方を参考にしてみてください。
「貴賤」と「優劣」という言葉は、二つの物事を比べるという共通点があり、本来の意味は少し違いますが混同して使われる傾向があります。
貴賤と優劣の違い
貴賤と優劣の意味の違い
貴賤と優劣の違いを分かりやすく言うと、貴賤は身分が高いことと低いことを表現する時に使い、優劣は物事が優れていることと劣っていることを表現する時に使うという違いです。
貴賤と優劣の使い方の違い
一つ目の貴賤を使った分かりやすい例としては、「貴賤老若問わずにその宗教は当時人気を集めていた」「見た目で貴賤を判断されるのはおかしな話だ」「職業に貴賤はあると言う人も一定数いる」などがあります。
二つ目の優劣を使った分かりやすい例としては、「文化の優劣を争うことは到底できやしない」「優劣をつけるために一度試してみる必要がある」「大会は優劣を競う場だが、楽しむことで本来のパフォーマンスが出来る気がする」などがあります。
貴賤と優劣の使い分け方
貴賤は、身分が高いことを表す貴という漢字と、身分が低いことを表す賤という漢字が組み合わさった言葉で、江戸時代から使われてきた言葉です。
一方の優劣は、優っていることを表す優という漢字と、劣っていることを表す劣という漢字が組み合わさった言葉です。ただし、特徴が現れやすい遺伝子と現れにくい遺伝子に対しても優劣という言葉を使っていました。
貴賤と優劣はどちらも、何か物事や人を比べた際の良し悪しを意味する言葉ですが、前者は人の身分や地位に対して使い、後者は人や物事が優れているか劣っているかに対して使うという違いがあります。
貴賤と優劣の英語表記の違い
貴賤を英語にすると「high and low」となり、例えば上記の「貴賤老若」を英語にすると「high and low, young and old」となります。
一方、優劣を英語にすると「superiority and inferiority」となりますが、例えば上記の「優劣を争う」を英語にすると「contend for superiority」となります。
貴賤の意味
貴賤とは
貴賤とは、身分の高い人と低い人を意味しています。
貴賤の読み方
貴賤は「きせん」という読み方をする言葉ですが、「きぜん」など他の読み方をすることはできません。
貴賤の使い方
貴賤を使った分かりやすい例としては、「職業に貴賎なしとは絵空事に過ぎない」「貴賤上下で差別するような社会ではなくなってきた」「作法は貴賤老若関係なしに身に付けるべきだ」「貴賤に限らず区別をしない考え方に惹かれた」などがあります。
その他にも、「出版物に貴賎があるわけではないが人を選ぶような本もある」「身分の貴賎に関わらず能力のある人は評価される」「服装で貴賎が分かる時代と今では大きく違う」「貴賤の隔てなく負わされる苦労はかつて女性の負担となっていた」などがあります。
貴賤の貴という漢字は身分や価値が高いことを意味する一方、賤という漢字は身分が低いことや品位に欠けていることを意味するため、貴賤とは対になる漢字を組み合わせた言葉です。
「職業に貴賎なし」の意味
上記例文の「職業に貴賎なし」という言葉は、石田梅岩が著書『都鄙問答』に残した言葉で、職業に貴賎の区別はなく、どのような職であっても社会に必要とされているものであることを意味します。
表現方法は「命に貴賎なし」「人に貴賎あり」「貴賎の別なく」
上記以外では「命に貴賎なし」「人に貴賎あり」「貴賎の別なく」などが、貴賤を使った一般的な言い回しです。
貴賤の類語
貴賤の類語・類義語としては、地位や価格などの差や違いを意味する「格差」、身分などが高いことと低いことを意味する「高下」があります。
貴賤の対義語
貴賤の対義語・反対語としては、二人の間に優劣や身分の高さ低さなどの差がないことを意味する「対等」、程度や地位などが同じであることを意味する「同等」があります。
優劣の意味
優劣とは
優劣とは、優れている物事と劣っている物事を意味しています。
表現方法は「優劣はない」「優劣をつける」「優劣を争う」
「優劣はない」「優劣をつける」「優劣を争う」などが、優劣を使った一般的な言い回しです。
優劣の使い方
優劣を使った分かりやすい例としては、「技芸の優劣を競い合う大会は白熱する」「物事の優劣を決めるだけが良いこととは限らない」「何に対しても優劣をつけようとするのは間違っている」「比較するポイントによって優劣があるのは仕方がない」などがあります。
一方、「遺伝子における優劣は人間の血液型が一番わかりやすい」「父母の遺伝子の優劣で子どもに表れる髪色なども大体わかるらしい」などの文中で使われている優劣は、「特徴として現れやすい優性遺伝と現れにくい劣性遺伝」の意味で使われています。
強い者が勝ち残って弱い者が負けることを意味する「優勝劣敗」という言葉にもあるように、優劣は優り劣りを意味する言葉です。上記例文のように「優劣を競う」「優劣を決める」など日常生活はもちろん、ビジネスシーンなどでも使われる言葉です。
ただし、メンデルの「優劣の法則」などでも遺伝子に対して優劣という言葉が使われていましたが、どちらかの遺伝子が劣っていると誤解を生むような表現とされたことから、2017年に優性は「顕性」と、劣性は「潜性」と表現されるようになりました。
優劣の類語
優劣の類語・類義語としては、勝つことと負けることを意味する「勝敗」、二つの間に大きな差がある状態を意味する「雲泥」、優れていることと劣っていることを意味する「雌雄」、長所と短所を意味する「長短」などがあります。
優劣の対義語
優劣の対義語・反対語としては、二人の力量が同じ程度で優劣の差がない様子を意味する「互角」、双方の間で優劣の差がない様子を意味する「五分」、力が釣り合う状態で優劣がつけがたいことを意味する「伯仲」があります。
貴賤の例文
この言葉がよく使われる場面としては、身分の高い人と低い人などが挙げられます。
例文4の「貴賤貧富」は貧しい人と裕福な人や、身分の高い人と身分の低い人をどちらも表す四字熟語です。
優劣の例文
この言葉がよく使われる場面としては、優れている物事と劣っている物事などが挙げられます。
どの例文の優劣も、身分や地位に使われていないため貴賤という言葉に置き換えて使うことはできません。
貴賤と優劣どちらを使うか迷った場合は、身分が高いことと低いことを表す場合は「貴賤」を、物事が優れていることと劣っていることを表す場合は「優劣」を使うと覚えておけば間違いありません。