似た意味を持つ「嗚咽」(読み方:おえつ)と「号泣」(読み方:ごうきゅう)の違いを例文を使って分かりやすく解説しているページです。
どっちの言葉を使えば日本語として正しいのか、迷った方はこのページの使い分け方を参考にしてみてください。
「嗚咽」と「号泣」という言葉は、どちらも「泣くこと」を意味しているという共通点があり、本来の意味は少し違いますが混同して使われる傾向があります。
嗚咽と号泣の違い
嗚咽と号泣の意味の違い
嗚咽と号泣の違いを分かりやすく言うと、嗚咽とは声を出さずに泣くこと、号泣とは大声を出して泣くことという違いです。
嗚咽と号泣の使い方の違い
一つ目の嗚咽を使った分かりやすい例としては、「妻は両手に顔をうずめて激しく嗚咽しはじめた」「激しく嗚咽しながら取り乱していた」「我慢できなくなり嗚咽が込み上げてきた」「人目はばからず嗚咽を漏らす」などがあります。
二つ目の号泣を使った分かりやすい例としては、「子どもが急に号泣したので驚きました」「英語留学中に寂しくて号泣しました」「号泣する母の姿を一度だけ見たことがあります」「号泣必至の感動小説です」などがあります。
嗚咽と号泣の使い分け方
嗚咽と号泣という言葉は、どちらも悲しみや苦しみなどの感情から泣くことを意味しますが、意味や使い方には違いがあります。
嗚咽とは、声を詰まらせて泣くこと、体を震わせて泣くことを意味します。感情が高まりながらも、何とか声を我慢しようし、息がつまったり呼吸が激しくなったりする泣き方のことです。
号泣とは、大声をあげて泣き叫ぶこと、声を出して泣くことを意味します。感情に任せて大きな声で泣いたり、叫んだりする泣き方を表します。
つまり、嗚咽と号泣は泣く行為を表しますが、嗚咽は声を我慢して出さないようにすることに対し、号泣は大声をあげることをを表します。この点が、二つの言葉の明確な違いになります。
嗚咽と号泣の英語表記の違い
嗚咽を英語にすると「sobbing」「weeping」「fit of crying」となり、例えば上記の「激しく嗚咽しはじめた」を英語にすると「burst into convulsive sobbing」となります。
一方、号泣を英語にすると「wailing」「loud lamentation」「crying loudly」となり、例えば上記の「急に号泣する」を英語にすると「wail suddenly」となります。
嗚咽の意味
嗚咽とは
嗚咽とは、声を詰まらせて泣くこと、むせび泣きを意味しています。
表現方法は「嗚咽を漏らす」「嗚咽する」「嗚咽した」
「嗚咽を漏らす」「嗚咽する」「嗚咽した」などが、嗚咽を使った一般的な言い回しです。
嗚咽の使い方
嗚咽を使った分かりやすい例としては、「誹謗中傷に涙が止まらなくて嗚咽した」「お金の使い方で言い争いになり嗚咽してしまった」「登校前に吐き気を催し嗚咽するようになった」「胃カメラで嗚咽してしまった」などがあります。
その他にも、「卒業式では嗚咽を漏らす声が聞こえました」「嗚咽を止めることができませんでした」「悲しみが込み上げてきて嗚咽が止まらない」「嗚咽する友人の背中をさすってあげました」「俺の嗚咽は最高だ」などがあります。
嗚咽とは、息が詰まるほど激しく泣くこと、声をのみこむようにして泣くこと、しゃくりあげて泣くことを指す言葉です。嗚咽の「嗚」は悲しみ泣くこと、「咽」は込み上げる感情で息が詰まることを意味します。声が出そうになることを、必死に我慢して泣いているようなイメージです。
また、嗚咽はネットスラングで「既婚男性が配偶者以外に好きになった女性」の意味を持ちます。「俺」の「愛する」「2番目の女」の頭文字から「oa2」と表記し、その音から「嗚咽」とも表現するようになりました。上記の例文にある「俺の嗚咽は最高だ」は、この意味で使われています。
嗚咽の誤用
嗚咽の誤用として、吐き気を催す際の声を指す言葉として使われることがあります。嗚咽という言葉の響きから「オエッ」と吐くことを連想させますが、このような意味は無いので誤用になります。
「嗚咽反射」は誤り
嗚咽を用いた誤った表現には「嗚咽反射」があります。正しくは「嘔吐反射」であり、口に器具を入れられたりする際にオエッとえづいてしまう反応を指す言葉です。
嗚咽の対義語
嗚咽の対義語・反対語としては、にっこりと笑うことを意味する「ほほ笑み」、ほほえむことを意味する「微笑」、喜びを抑えきれずに叫ぶ声を意味する「歓声」、喜んで大きな声を上げることを意味する「歓呼」などがあります。
嗚咽の類語
嗚咽の類語・類義語としては、息を何度も吸い上げるようにして泣くことを意味する「しゃくり上げる」、鼻汁をすすって泣くことを意味する「すすり上げる」、悲しみのあまりうつ伏せになって泣くことを意味する「泣伏す」、しゃくりあげて泣くことを意味する「泣きじゃくる」などがあります。
号泣の意味
号泣とは
号泣とは、声をあげて泣くこと、泣き叫ぶことを意味しています。
表現方法は「号泣する」「号泣した」「号泣会見」
「号泣する」「号泣した」「号泣会見」などが、号泣を使った一般的な言い回しです。
号泣の使い方
号泣を使った分かりやすい例としては、「意外にも号泣する夢は吉夢らしい」「無料の号泣イラストをネットで探しています」「号泣の顔文字で悲しみを表現する」「誘いを断ったら号泣の絵文字が送られてきた」などがあります。
その他にも、「思わず号泣してしまう映画でした」「議員の号泣会見が話題になっている」「不祥事を起こした号泣議員を許そうとは思いません」「ハンカチを手にして号泣する準備はできていた」などがあります。
号泣とは、大きな声を出して泣くこと、泣き叫ぶことです。号泣という言葉の「号」は、大声を出すことや叫ぶことを意味し、「怒号」や「号令」のように使われています。
号泣は誤用されやすい言葉です。文化庁が発表した平成22年度「国語に関する世論調査」では、本来の意味とされる「大声をあげて泣く」で使う人よりも、本来の意味ではない「激しく泣く」で使う人が上回りました。「声をこらえて号泣した」のように、間違った使い方をしないように注意しましょう。
号泣の対義語
号泣の対義語・反対語としては、大声を上げて笑うことを意味する「大笑い」、大口をあけて笑うことを意味する「哄笑」、大勢の人がどっと笑うことを意味する「爆笑」、大きな声で笑うことを意味する「高笑い」などがあります。
号泣の類語
号泣の類語・類義語としては、悲しみのあまり声をあげて泣くことを意味する「慟哭」、声をあげて泣き悲しむことを意味する「哀哭」、声をあげて泣くことを意味する「啼泣」、泣きながら叫ぶことを意味する「泣叫ぶ」、しきりに泣くことを意味する「泣きしきる」などがあります。
嗚咽の例文
この言葉がよく使われる場面としては、むせび泣くこと、すすり泣きを表現したい時などが挙げられます。
例文2にある「嗚咽を漏らす」の意味は、泣き声にならない声を漏らして泣くことです。「漏らす」は、感情を思わず表情や声に出すことを意味します。
号泣の例文
この言葉がよく使われる場面としては、大声をあげて泣き叫ぶことを表現したい時などが挙げられます。
例文4にある「大泣き」と「号泣」の違いは、号泣は声をあげて泣くことですが、大泣きは激しく泣くことであり、声の有無に関わらず使うことが出来る点にあります。
嗚咽と号泣という言葉は、どちらも「泣くこと」を表します。どちらの言葉を使うか迷った場合、声が出ないように我慢して泣くことを表現したい時は「嗚咽」を、大声を上げて泣くことを表現したい時は「号泣」を使うようにしましょう。