似た意味を持つ「時間外労働」(読み方:じかんがいろうどう)と「残業」(読み方:ざんぎょう)の違いを例文を使って分かりやすく解説しているページです。
どっちの言葉を使えば日本語として正しいのか、迷った方はこのページの使い分け方を参考にしてみてください。
「時間外労働」と「残業」という言葉は、どちらも就業時間外に仕事をすることを意味しているという共通点があり、本来の意味は少し違いますが混同して使われる傾向があります。
時間外労働と残業の違い
時間外労働と残業の意味の違い
時間外労働と残業の違いを分かりやすく言うと、時間外労働とは就業時間外の労働全般を表し、残業とは終業時間以降の労働のみを表すという違いです。
時間外労働と残業の使い方の違い
一つ目の時間外労働を使った分かりやすい例としては、「時間外労働を削減する方針だ」「時間外労働の上限は年720時間以内です」「時間外労働の計算について確認する」「36協定は時間外労働に関する協定です」などがあります。
二つ目の残業を使った分かりやすい例としては、「残業時間の上限は何時間ですか」「今月の残業代の計算がおかしい」「残業手当の計算方法を確認する」「会社員の残業時間の平均を調べる」「管理職は残業代が出ないらしい」などがあります。
時間外労働と残業の使い分け方
時間外労働と残業という言葉は、どちらも定められた就業時間外に仕事をすることを表します。二つの言葉は同じように使われていますが、厳密な意味や使い方には違いがあります。
時間外労働とは、定められた労働時間を超えて働くことを意味します。労働基準法は、1日8時間、1週間で40時間までの労働を原則としており、これ以上の労働をさせることを時間外労働と言います。残業、休日出勤、早出などを含み、就業時間外の労働全般を指す言葉です。
残業とは、規定の勤務時間を過ぎてからも働くことを意味します。例えば、終業時間が17時であるにも関わらず、仕事が終わらずに18時以降も働くことを残業と言います。居残りして仕事をすることであり、休日に会社に出向いて仕事をすることや、朝早く出社して仕事をすることは残業とは言いません。
つまり、残業は時間外労働の一つであり、残業よりも時間外労働の方が広い意味を持つ言葉だと言えるでしょう。
時間外労働と残業の英語表記の違い
時間外労働も残業も英語にすると「overtime work」となり、例えば上記の「時間外労働を削減する」を英語にすると「cut overtime work」となります。
時間外労働の意味
時間外労働とは
時間外労働とは、労働基準法や労働協約に定める時間を超えて行われる労働、または休日に行われる労働を意味しています。
時間外労働の使い方
時間外労働を使った分かりやすい例としては、「法改正により時間外労働の上限規制が設けられた」「36協定では時間外労働について規定している」「時間外労働休日労働に関する協定届を提出する」などがあります。
その他にも、「時間外労働に関する協定届を提出する」「時間外労働の原則として月45時間です」「時間外労働の賃金割増率を確認する」「時間外労働で割増賃金の支払いが発生した」「時間外労働等改善助成金を申請する」などがあります。
時間外労働は「早出」「残業」「休日出勤」を含む
時間外労働とは、所定労働時間を超えて行われる労働のことです。労働基準法は、1日8時間、週40時間までの労働を原則としており、これ以上の労働時間を指します。普段より早く出勤して働く「早出」、勤務時間を過ぎても働く「残業」、休日に勤め先に出向いて働く「休日出勤」などが含まれます。
時間外労働は三六協定を結ぶ必要がある
時間外労働や休日労働に関する法的な規制は、労働基準法36条に定められています。この法律に基づき労使間で締結する時間外労働協定を「三六協定」と言います。使用者が労働者に時間外勤務をさせる場合は、この協定を労使間で結び、労働基準監督署に届け出る必要があります。
時間外労働の対義語
時間外労働の対義語・反対語としては、定刻より早く勤務先や学校などを退出することを意味する「早引け」、定められた勤務終了時間に勤め先から退出することを意味する「定時退勤」などがあります。
時間外労働の類語
時間外労働の類語・類義語としては、決められた勤務時間をこえて勤務することを意味する「超過勤務」、規定外労働時間や超過勤務を意味する「オーバータイム」などがあります。
残業の意味
残業とは
残業とは、規定の勤務時間を過ぎてからも残って仕事をすること、超過勤務を意味しています。
表現方法は「残業する」「残業を強要する」「残業が少ない」
「残業する」「残業を強要する」「残業が少ない」などが、残業を使った一般的な言い回しです。
残業の使い方
残業を使った分かりやすい例としては、「残業時間の上限が法律で規定された」「残業時間の上限は月45時間です」「もう残業時間の上限に達してしまいそうだ」「残業代が出ないのは正しいのだろうか」などがあります。
その他にも、「残業をしているのに残業代が出ていない」「私の職場ではみなし残業代が定められています」「サラリーマンの残業時間の平均はどのぐらいですか」「正しい残業代の計算方法を教えて下さい」などがあります。
「サービス残業」の意味
残業とは、一般的には勤務の終業時間を超えて行う業務のことを言います。労働基準法上は、1日8時間、週40時間超の労働に対しては、割増賃金の支払いが必要になります。この残業手当が支払われない残業のことを、俗に「サービス残業」と言います。
「みなし残業」の意味
上記の例文にある「みなし残業」とは、実際の時間外労働や休日労働の有無や長短にかかわらず、残業代として一定額が支給される割増料金のことです。「固定残業代」「定額残業代」とも言います。
「ノー残業デー」の意味
残業という言葉を用いた日本語には「ノー残業デー」があります。企業や官公庁において、社員や職員が残業をせずに必ず定時に退社することを設定する制度です。労働時間の短縮のほか、作業の効率化や光熱費の軽減などのメリットがあります。
残業の対義語
残業の対義語・反対語としては、社や学校を定刻より早く退出することを意味する「早退」、勤務先が定めた勤務時間の終了時刻に業務を終了し退社することを意味する「定時退社」などがあります。
残業の類語
残業の類語・類義語としては、超過勤務を略した「超勤」、時間外手当の支給されない残業を意味する「サービス残業」などがあります。
時間外労働の例文
この言葉がよく使われる場面としては、所定労働時間を超えて行われる労働、超過勤務を表現したい時などが挙げられます。
例文5について、現行の法律では、時間外労働の上限は月45時間、年360時間までとなっています。これを超えて労働者を働かせた使用者は、6か月以下の懲役または30万円以下の罰金という罰則が科せられます。
残業の例文
この言葉がよく使われる場面としては、規定の労働時間以後も残って仕事をすることを表現したい時などが挙げられます。
例文1にある「残業代」とは、所定労働時間を超えて働いた場合に支払われる賃金のことです。例文5の「残業上限」とは、労働基準法で規定されている残業時間の上限規制のことであり、月45時間・年360時間と定められています。
時間外労働と残業という言葉は、どちらも就業時間以外に働くことを表します。どちらの言葉を使うか迷った場合、就業時間外の労働を表現したい時は「時間外労働」を、終業時間以降の労働を表現したい時は「残業」を使うようにしましょう。