似た意味を持つ「母数」(読み方:ぼすう)と「分母」(読み方:ぶんぼ)の違いを例文を使って分かりやすく解説しているページです。
どっちの言葉を使えば日本語として正しいのか、迷った方はこのページの使い分け方を参考にしてみてください。
「母数」と「分母」という言葉は、統計学の用語という共通点があり、本来の意味は少し違いますが混同して使われる傾向があります。
母数と分母の違い
母数と分母の意味の違い
母数と分母の違いを分かりやすく言うと、母数は全体数の特徴を表現する時に使い、分母は全体数を表現する時に使うという違いです。
母数と分母の使い方の違い
一つ目の母数を使った分かりやすい例としては、「母数を算出するため母集団のデータと向き合った」「あまりにも母数が小さかったため元情報の更新が必要なのではと疑った」「母数を推定することで大まかな考えがまとまる」などがあります。
二つ目の分母を使った分かりやすい例としては、「分母と分子を書き写す時に反対にしてしまい計算間違いをした」「分母の数が小さいほど結果は大きくなる」「分母が大きいために実際マナーが悪い人も多くなるのだろう」などがあります。
母数と分母の使い分け方
母数と分母、どちらの言葉も数学や統計学にて使われており、全体の数を意味するとして使われていますが、本来は意味が異なります。
母数は、統計を取るに当たって調査や研究の対象となる集団の全体を表す「母集団」が持つ平均や分散などの特徴となる数値を意味する言葉で、全体数を意味する言葉ではありません。
一方の分母は、数学の分数において割る方の数や式を意味する言葉です。そのため、「100人中5人」という表現であれば、分数式に変換した場合100分の5となるため、100人という総数が分母に該当します。
一般的に、母数と分母のどちらも対象の全体数を表す言葉として使われていますが、「この統計に答えを出すには母数が少ない」などのように母数を全体数を表す言葉として使うのは、統計学などの専門的な用語として誤りとされています。
母数と分母の英語表記の違い
母数を英語にすると「population parameter」となり、例えば上記の「母数を算出する」を英語にすると「calculate the population parameter」となります。
一方、分母を英語にすると「denominator」となり、例えば上記の「分母と分子」を英語にすると「the denominator and numerator」となります。
母数の意味
母数とは
母数とは、調査や研究の対象となる集団の全体の特徴を意味しています。
母数の使い方
母数を使った分かりやすい例としては、「標本を抽出した母集団があまりにも大きいが母数の算出ができるのだろうか」「仮に母数を提示されても実感が沸かない」「母数を出す前に母集団の情報を得る必要がある」などがあります。
一方、「母数の数からしてあまり参考にできない」「母数が少ないために行動パターンが読めない」「声を掛けた人の母数から考えてこの結果では納得がいかない」などの文中で使われている母数は、「全体の数」の意味で使われています。
母数は、本来統計学において「母平均」、「母分散」、「母標準偏差」などを指す言葉として使われており、調査対象となる集団の全てを表す言葉ではありません。
全体数の意味で使う場合は、母数ではなく「母集団」とするのが正しく、この母集団の平均や分散などの特徴を「母数」と言います。
例えば、全世界の人間の身長の平均に関する調査を行う場合、全世界の人間の身長が「母集団」に該当し、その母集団の平均が「母平均」もしくは「母数」に該当します。
今日では、全体の数を意味する言葉として母数を使う場合も多く見られますが、専門的な用語としては誤用とされています。しかし、言語の使われ方が変化したことで日常生活において俗語として使われ続けています。
分母の意味
分母とは
分母とは、分数において割る方の数や式を意味しています。
分母の使い方
分母を使った分かりやすい例としては、「通常の割り算の式を見て分母と分子を決めるのがどうやら苦手らしい」「最初は分母の数が小さければ値としては大きくなると言われても理解ができなかった」「確率の問題では基本的に分母は100である」などがあります。
一方、「顧客の分母を増やして更なるリピーターの増加を狙う」「出会いの数の分母を増やして女性との交際経験を培う」「大人になって興味を持つものの分母が減り始めた」などの文中で使われている分母は、「物事の全体数」の意味で使われています。
分母は分数式の割る方の数を指し、例えば「5/100」であれば、100が分母に当たります。この分数は「5÷100」という式に変えて表現することもできます。「100分の5」という表現もできますが、この表現から「100/5」と表記するのは誤りです。
上記例文のように、対象の数の全体数を表す言葉として使われていることもありますが、一つのものを二人で割るよりも三人で割る方が分けた後の量が少なくなることからも分かるように、分母の数が小さいほど指す範囲が大きくなります。
そのため、「顧客の分母を増やす」などの表現は混乱を招くこともあるため、「顧客の総数を増やす」などの表現がより分かりやすい表現と言えます。
分母の対義語
分母の対義語・反対語としては、分数において割られる方の数や式を指す「分子」があります。
母数の例文
この言葉がよく使われる場面としては、調査や研究の対象となる集団の全体の特徴などが挙げられます。
例文2の「母数警察」とは、母数という言葉を誤って使う人に対して誤りを指摘するような人たちを指す言葉です。
上記の例文3、例文4と例文5は本来の母数という言葉の使い方ではなく、全体数を表す俗語として使われています。
分母の例文
この言葉がよく使われる場面としては、分数において割る方の数や式などが挙げられます。
例文1や例文5の分母は、対象の数の全体数を表す言葉として使われていますが、数学の分数式においては数が小さいほど表す範囲が大きくなるため注意が必要です。
母数と分母どちらを使うか迷った場合は、を全体数の特徴を表す場合は「母数」を、全体数を表す場合は「分母」を使うと覚えておけば間違いありません。