似た意味を持つ「生じる」(読み方:しょうじる)と「生ずる」(読み方:しょうずる)の違いを例文を使って分かりやすく解説しているページです。
どっちの言葉を使えば日本語として正しいのか、迷った方はこのページの使い分け方を参考にしてみてください。
「生じる」と「生ずる」という言葉は、新しく物事が発生するを意味するという共生点があり、使う場面は少し違いますが混同して使われる傾向があります。
生じると生ずるの違い
生じると生ずるの意味の違い
生じると生ずるの違いを分かりやすく言うと、辞書に載っている現代風の読み方か、古い読み方かの違いです。「生じる」と「生ずる」は、どちらも同じ意味を持つ言葉で、現代では「生じる」の方を一般的な読み方として使用しています。
生じると生ずるの使い方の違い
一つ目の生じるを使った分かりやすい例としては、「恐怖から躊躇が生じる」「隙が生じる瞬間がチャンスだ」「今の行いで将来的な差が生じる」「お釣りの差額により損得が生じる」「油断すると誤差が生じる」「この電車は頻繁に遅れが生じる」などがあります。
二つ目の生ずるを使った分かりやすい例としては、「今より福の生ずる絵馬」「恐怖は常に無知から生ずる」などがあります。
生じると生ずるの2つが存在する理由
なぜ、生「じる」と生「ずる」という二種類の語尾が存在するのか。これは、日本語の口語文法と文語文法の決まりによる違いがあるからです。口語文法とは、しゃべり言葉のことで、文語文法とは、文章で書く際の言葉という意味です。
これらの日本語文法には「活用法」という考え方があります。活用法とは、文章の流れによって単語の語尾を違和感のないように変えることを意味します。
まさしく「生じる」「生ずる」のように、最初の言葉は同じであっても語尾が違う言葉が存在するのは、活用法によって文脈に合うかたちで語尾が変えられているからです。
生じる、生ずるという言葉は「サ行変格活用」という活用法によって、語尾を変えています。サ行変格活用では、文章の流れによって語尾をサ行の言葉である「さしすせそ」を元にして変えていきます。
「生じる」「生ずる」という言葉の場合、「生」という先頭の言葉はそのままに、語尾を「未然形:じ」「連用形:じ」「終止形:じる・ずる」「連体形:じる・ずる」「仮定形:じれ・ずれ」「命令形:じろ・じよ・ぜよ」という風に変化させます。
語尾の変化の形である未然形や連用形などの名称は、その言葉がどのような文脈で使われているかの形のことを指しています。例えば「未然形」というのは「まだそうなってはいない」という意味を持ち、否定形と一緒に使われます。
つまり、生じるの未然形の表現は「生じない」となります。変化しない先頭の「生」に未然形の「じ」をつけて、最後に否定形の「ない」を付けた形です。
このように、日本語には、様々な文法上の決まりがあります。「生じる」「生ずる」というのは、両方ともこの文法で言うところの「終止形」です。
終止形というのは、言い切りの形という意味があります。文章ではなく、ひとつの単語として使う際には終止形を使います。
生じると生ずるの使い分け方
「生」の終止形には「じる」と「ずる」の二種類があります。これが「生じる」と「生ずる」の違いです。二種類の語尾がある場合、どちらを使っても間違いではありませんが、どちらか一方が、一般的に使われているものであることがほとんどです。
「生」の場合、辞書に記載されているのは「生じる」という言葉です。こちらが、現代では一般的に使用されている言葉であり、「生ずる」というのは古い言い方になります。
しかし、意味に違いはありませんし、どちらも文法的には使えるものですので、個々人の好みや文章の前後の文脈などを考えて、自由に使い分けが出来るものであると言えます。
生じるの意味
生じるとは
生じるとは、新しく物事が発生することを意味しています。
表現方法は「問題が生じる」「遅れが生じる」「誤差が生じる」
「問題が生じる」「遅れが生じる」「誤差が生じる」などが、生じるを使った一般的な言い回しです。
生じるの使い方
生じるを使った分かりやすい例としては、「痛みが生じるなら病院に行くべきだ」「給湯機から生じる音で眠れない」「この制度で生じる影響は大きい」「燃焼により生じる灰の処分方法を検討」「夜勤で生じるコストは大きい」「通信環境が悪く文字化けが生じた」などがあります。
その他にも、「得票数に少数点以下が生じる場合がある」「家の前の工事によって大きい音が生じている」「災害で出た被害の責任はどこまで生じるのか」「この機械はすぐエラーが生じる」などがあります。
生じるの対義語
生じるの対義語・反対語としては、消えて無くなることを意味する「消滅」があります。
生じるの類語
生じるの類語・類義語としては、物事が起こることを意味する「発生する」、新しいものを創造することを意味する「生み出す」などがあります。
生じるの生の字を使った別の言葉としては、生まれた家を意味する「生家」、人生の始まりから終わりを意味する「生涯」、ものを作り出すことを意味する「生産」などがあります。
生ずるの意味
生ずるとは
生ずるとは、生じるという言葉の少し古い言い方を意味しています。生ずるというのは「生ず」という言葉のサ行変格活用の終止形です。
表現方法は「効力を生ずる」「違いが生ずる」「差が生ずる」
「効力を生ずる」「違いが生ずる」「差が生ずる」などが、生ずるを使った一般的な言い回しです。
生ずるの使い方
生ずるを使った分かりやすい例としては、「火災時に生ずる煙は危ない」「文化摩擦を生ずる言葉の研究をしている」「日々の鍛錬により生ずる感覚がある」などがあります。
生ずるは辞書に載っていない
意味としては、生じると全く同じものであり、文章の前後の文脈などによって使い分けることが出来るものです。辞書には「生じる」は載っていても、「生ずる」という言葉は載っていないことが多く、生ずるは現代語よりも少し古い表現です。
しかし、意味は同じであるので、「生じる」「生ずる」のどちらを使っても間違いではありません。古風な雰囲気を出したい時などには、あえて「生ずる」という言葉を使うのも良いでしょう。
他にも、例えば「生ず」という言葉の命令形を考えてみると、現代風の言い方であれば「生じろ」となりますが、古風な言い回しになると「生じよ」または「生ぜよ」となります。
この「生じよ」「生ぜよ」と同じ雰囲気を持つのが「生ずる」であると考えると、わかりやすいでしょう。
生じるの例文
この言葉がよく使われる場面としては、新しく物事が発生することを表現したい時などが挙げられます。
例文1の「誤差が生じる」や例文2の「遅れが生じる」など、日常生活ではあまり使うことはありませんが、「生産性に誤差が生じる」「電車遅延により出社時間に遅れが生じる」といったようにビジネスシーンでこの言葉を使う頻度は高いです。
生ずるの例文
この言葉がよく使われる場面としては、生じるという言葉を少し古風な表現で表したい時などが挙げられます。
上記の例文を見れば分かる通り、「生ずる」を「生じる」に置き換えても全く文章としての問題はありません。
「生ずる」を使う場合は「生じる」と「生ずる」の意味を知っている人からすると、古風な人間だなと思われるくらいです。