【禁じる】と【禁ずる】の意味の違いと使い方の例文

言葉の使い方の例文

似た意味を持つ「禁じる」(読み方:きんじる)と「禁ずる」(読み方:きんずる)の違いを例文を使って分かりやすく解説しているページです。

どっちの言葉を使えば日本語として正しいのか、迷った方はこのページの使い分け方を参考にしてみてください。

「禁じる」と「禁ずる」という言葉は、どちらも禁止することを意味するという共通点があり、使う場面は少し違いますが混同して使われる傾向があります。




禁じると禁ずるの違い

禁じると禁ずるの意味の違い

禁じると禁ずるの違いを分かりやすく言うと、辞書に載っている現代風の読み方か、古い読み方かの違いです。「禁じる」と「禁ずる」は、どちらも同じ意味を持つ言葉で、現代では「禁じる」の方を一般的な読み方として使用しています。

禁じると禁ずるの使い方の違い

一つ目の禁じるを使った分かりやすい例としては、「政府が禁じる意向を固めた」「親の子供への体罰を法律で禁じる」「無断使用を固く禁じる」「金の輸出が禁じられている」「チケットを定価以上で売ることを禁じる」「この場所での写真撮影は禁じられている」「18歳未満の登録を禁じる」などがあります。

二つ目の禁ずるを使った分かりやすい例としては、「文書の無断転載を禁ずる」「委託契約先以外の複写を禁ず」「自衛隊の海外派遣を禁ずる」「レジ袋の使用を禁ずる」などがあります。

禁じると禁ずるの2つが存在する理由

なぜ、禁「じる」と禁「ずる」という二種類の語尾が存在するのか。これは、日本語の口語文法と文語文法の決まりによる違いがあるからです。口語文法とは、しゃべり言葉のことで、文語文法とは、文章で書く際の言葉という意味です。

これらの日本語文法には「活用法」という考え方があります。活用法とは、文章の流れによって単語の語尾を違和感のないように変えることを意味します。

まさしく「禁じる」「禁ずる」のように、最初の言葉は同じであっても語尾が違う言葉が存在するのは、活用法によって文脈に合うかたちで語尾が変えられているからです。

禁じる、禁ずるという言葉は「サ行変格活用」という活用法によって、語尾を変えています。サ行変格活用では、文章の流れによって語尾をサ行の言葉である「さしすせそ」を元にして変えていきます。

「禁じる」「禁ずる」という言葉の場合、「禁」という先頭の言葉はそのままに、語尾を「未然形:じ」「連用形:じ」「終止形:じる・ずる」「連体形:じる・ずる」「仮定形:じれ・ずれ」「命令形:じろ・じよ・ぜよ」という風に変化させます。

語尾の変化の形である未然形や連用形などの名称は、その言葉がどのような文脈で使われているかの形のことを指しています。例えば「未然形」というのは「まだそうなってはいない」という意味を持ち、否定形と一緒に使われます。

つまり、禁じるの未然形の表現は「禁じない」となります。変化しない先頭の「禁」に未然形の「じ」をつけて、最後に否定形の「ない」を付けた形です。

このように、日本語には、様々な文法上の決まりがあります。「禁じる」「禁ずる」というのは、両方ともこの文法で言うところの「終止形」です。

終止形というのは、言い切りの形という意味があります。文章ではなく、ひとつの単語として使う際には終止形を使います。

禁じると禁ずるの使い分け方

「禁」の終止形には「じる」と「ずる」の二種類があります。これが「禁じる」と「禁ずる」の違いです。二種類の語尾がある場合、どちらを使っても間違いではありませんが、どちらか一方が、一般的に使われているものであることがほとんどです。

「禁」の場合、辞書に記載されているのは「禁じる」という言葉です。こちらが、現代では一般的に使用されている言葉であり、「禁ずる」というのは古い言い方になります。

しかし、意味に違いはありませんし、どちらも文法的には使えるものですので、個々人の好みや文章の前後の文脈などを考えて、自由に使い分けが出来るものであると言えます。

禁じるの意味

禁じるとは

禁じるとは、禁止することを意味しています。

表現方法は「転載を禁じる」「立ち入りを禁じる」「外出を禁じる」

「転載を禁じる」「立ち入りを禁じる」「外出を禁じる」などが、禁じるを使った一般的な言い回しです。

禁じるの使い方

禁じるを使った分かりやすい例としては、「誰からも祝福されない禁じられた愛」「嫁にオタク活動を禁じられる」「無断転載を禁じます」「再販することを禁じます」「直接販売を禁じる契約となっている」「強制的な技術移転を禁じる」などがあります。

その他にも、「裁判所では写真撮影を禁じている」「災害被害により立ち入りを禁じる」「この広場での集会を禁じる」「会社から外出を禁じる命令が出た」「立ち入りが禁じられた知識」などがあります。

禁じるの対義語

禁じるの対義語・反対語としては、許可することを意味する「許す」、禁止をやめることを意味する「解禁する」などがあります。

禁じるの類語

禁じるの類語・類義語としては、抑え留めることを意味する「抑制する」、妨げることを意味する「阻害する」、やめさせることを意味する「差し止める」、妨害することを意味する「妨げる」などがあります。

禁じるの禁の字を使った別の言葉としては、閉じ込めて外に出ることの禁止を意味する「禁錮」(読み方:きんこ)、行わないよう命じることを意味する「禁止」、本能を抑えることを意味する「禁欲」などがあります。

禁ずるの意味

禁ずるとは

禁ずるとは、禁じるという言葉の少し古い言い方を意味しています。禁ずるというのは「禁ず」という言葉のサ行変格活用の終止形です。

表現方法は「使用を禁ずる」「立ち入りを禁ずる」「移設を禁ずる」

「使用を禁ずる」「立ち入りを禁ずる」「移設を禁ずる」などが、禁ずるを使った一般的な言い回しです。

禁ずるの使い方

禁ずるを使った分かりやすい例としては、「この敷地内にある物の無断使用を禁ずる」「女湯につき男性の立ち入りを禁ず」「何人たりとも自粛中のゴルフを禁ずる」「この地域への移設を禁ずる」などがあります。

禁ずるは辞書に載っていない

意味としては、禁じると全く同じものであり、文章の前後の文脈などによって使い分けることが出来るものです。辞書には「禁じる」は載っていても、「禁ずる」という言葉は載っていないことが多く、禁ずるは現代語よりも少し古い表現です。

しかし、意味は同じであるので、「禁じる」「禁ずる」のどちらを使っても間違いではありません。古風な雰囲気を出したい時などには、あえて「禁ずる」という言葉を使うのも良いでしょう。

他にも、例えば「禁ず」という言葉の命令形を考えてみると、現代風の言い方であれば「禁じろ」となりますが、古風な言い回しになると「禁じよ」または「禁ぜよ」となります。

この「禁じよ」「禁ぜよ」と同じ雰囲気を持つのが「禁ずる」であると考えると、わかりやすいでしょう。

禁じるの例文

1.この場所での飲食およびスマートフォンの閲覧を禁じる
2.その怪我が治るまで稽古に参加することを禁じる。
3.『禁じられた遊び』というクラシックギターの名曲にハマっている。
4.体調が悪い観光客の入国を禁じることを決定した。
5.この施設への時間外の立ち入りを禁じる条項を設けるべきだ。

この言葉がよく使われる場面としては、何かを禁止することを堅い表現で表したい時などが挙げられます。

日常会話で使われるというよりは、例文1のような張り紙、例文4や例文5のように国会や委員会等で何かを決める場所で使われることが多いです。

禁ずるの例文

1.許可なく出入りを禁ずる。ご用の際は事前にご連絡ください。
2.この国では誰も人の自由を禁ずることはできない。
3.今回の会合ではメンバー以外の参加を禁ずる。

この言葉がよく使われる場面としては、禁じるという言葉を少し古風な表現で表したい時などが挙げられます。

上記の例文を見れば分かる通り、「禁ずる」を「禁じる」に置き換えても全く文章としての問題はありません。

「禁ずる」を使う場合は「禁じる」と「禁ずる」の意味を知っている人からすると、古風な人間だなと思われることでしょう。

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