似た意味を持つ「後顧の憂い」(読み方:こうこのうれい)と「心残り」(読み方:こころのこり)の違いを例文を使って分かりやすく解説しているページです。
どっちの言葉を使えば日本語として正しいのか、迷った方はこのページの使い分け方を参考にしてみてください。
「後顧の憂い」と「心残り」という言葉は、どちらもあとのことが心配なことを意味しているという共通点があり、本来の意味は少し違いますが混同して使われる傾向があります。
「後顧の憂い」と「心残り」の違い
「後顧の憂い」と「心残り」の意味の違い
「後顧の憂い」と「心残り」の違いを分かりやすく言うと、「後顧の憂い」は一般的に使われていない、「心残り」は一般的に使われているという違いです。
「後顧の憂い」と「心残り」の使い方の違い
一つ目の「後顧の憂い」を使った分かりやすい例としては、「後顧の憂いのないよう生命保険に入ることにしました」「後に問題になるような関係は辞めて後顧の憂いを断つ必要がある」「私は後顧の憂いなくオーストラリアへ発ちました」などがあります。
二つ目の「心残り」を使った分かりやすい例としては、「幼い息子を残して天国へ旅立つのは心残りです」「彼女に優しくしてあげられなかったのが心残りだ」「私には心残りなことが何もありません」などがあります。
「後顧の憂い」と「心残り」の使い分け方
「後顧の憂い」と「心残り」はどちらもあとのことが心配なことを意味しており、大きな違いはありません。あえて違いを挙げるならば、「後顧の憂い」は一般的に使われていないのに対して、「心残り」は一般的に使われているという点です。
したがって、どちらも正しい日本語で置き換えることもできますが、「後顧の憂い」は一般的に認知されていない言葉なので、場合によっては伝わらない可能性があります。相手に伝わらないと感じたのであれば、「心残り」の方を使うのがいいでしょう。
「後顧の憂い」と「心残り」の英語表記の違い
「後顧の憂い」を英語にすると「anxiety」「free of worry」となり、例えば上記の「私は後顧の憂いなくオーストラリアへ発ちました」を英語にすると「I left for Australia free of worry」となります。
一方、「心残り」を英語にすると「regret」となり、例えば上記の「私には心残りなことが何もありません」を英語にすると「I have nothing to regret」となります。
「後顧の憂い」の意味
「後顧の憂い」とは
「後顧の憂い」とは、あとあとの心配のことを意味しています。
「後顧の憂い」の読み方
「後顧の憂い」の読み方は「こうこのうれい」です。誤って「ごこのうれい」などと読まないようにしましょう。
表現方法は「後顧の憂いを断つ」「後顧の憂いなく」「後顧の憂いがないよう」
「後顧の憂いを断つ」「後顧の憂いなく」「後顧の憂いがないよう」などが、「後顧の憂い」を使った一般的な言い回しになります。
「後顧の憂い」の使い方
「後顧の憂い」を使った分かりやすい例としては、「後顧の憂いがないよう早めに検査へ行くことにしました」「後顧の憂いを断つために出発前に最終チェックをした方がいいだろう」「後顧の憂いがないよう早めに手術を受けることにしました」などがあります。
「後顧の憂い」は、後ろを振り返って見ることや後を気遣うことを意味する「後顧」に、予測される悪い事態に対する心配や気遣いのことを意味する「憂い」が合わさり、あとあとの心配のことの意味で使われている言葉です。
「後顧の憂い」の語源
「後顧の憂い」の語源は中国の歴史書『魏書』になります。『魏書』に「我をして、境を出し、後顧の憂い無からしむ」という一文があり、これを日本語にすると、「私が国の外に出るとき、李沖が働いてあとの心配がないようにしてくれた」となります。
これが転じて、あとあとの心配のこと「後顧の憂い」と言うようになりました。
「後顧の憂い」は「後顧の憂いがあっては旅行を楽しむことはできない」のように、未来への心配事について使う言葉になります。また、「後顧の憂いがないよう」「後顧の憂いなく」などのように否定形にすることによって、未来に対して心配事がないというニュアンスになります。
「後顧の憂いを断つ」の意味
「後顧の憂い」を使った有名な言葉として、「後顧の憂いを断つ」があります。「後顧の憂いを断つ」はあと心配事をなくすことを意味する言葉です。また、「後顧の憂いを絶つ」と表記するのは誤用なので間違えないように注意しましょう。
「後顧の憂い」の類語
「後顧の憂い」の類語・類義語としては、どうなるかと不安で心から離れないことを意味する「気掛かり」、危ぶみ恐れることを意味する「危惧」、よくないことが起こる恐れのことを意味する「気遣い」などがあります。
「心残り」の意味
「心残り」とは
「心残り」とは、あとに思いが残ってすっきり思い切れないことを意味しています。
表現方法は「心残りに感じる」「心残りがある」「心残りがない」
「心残りに感じる」「心残りがある」「心残りがない」「心残りですが」などが、「心残り」を使った一般的な言い回しになります。
「心残り」の使い方
「心残り」を使った分かりやすい例としては、「あなたに会うことができなったのが心残りです」「日本代表を決勝トーナメントに連れていけなかったのが心残りだ」「今日の試合で引退するが私の野球人生に心残りはありません」などがあります。
「心残り」は既に何かを物事を終えたあとに、そのことが思い通りにならず、不満や物足りなさを感じた時に使う言葉です。また、未練が残っているという感情を表す場合にも使うことができます。そのため、ややマイナスなイメージなを持っている言葉です。
「心残り」は広く一般的に使われている言葉なので、似た意味を持つ「後顧の憂い」を置き換えて使うこともできます。
「心残り」の類語
「心残り」の類語・類義語としては、もの足りなく感じることを意味する「残念」、期待したようにならず心残りであることを意味する「遺憾」、ひどく残念がることを意味する「痛恨」、執心が残って思い切れないことを意味する「未練」などがあります。
「後顧の憂い」の例文
この言葉がよく使われる場面としては、あとあとの心配のことを表現したい時などが挙げられます。
上記の例文にあるように、「後顧の憂いを断つ」「後顧の憂いなく」などの言い回しはよく使われています。
「心残り」の例文
この言葉がよく使われる場面としては、あとに思いが残ってすっきり思い切れないことを表現したい時などが挙げられます。
上記の例文にあるように、「心残り」は未練がある場合に使う言葉です。
「後顧の憂い」と「心残り」はどちらもあとのことが心配なことを表します。どちらの言葉を使うか迷った場合、一般的に使われていないのが「後顧の憂い」、一般的に使われているのが「心残り」と覚えておきましょう。