似た意味を持つ「庇護」(読み方:ひご)と「保護」(読み方:ほご)の違いを例文を使って分かりやすく解説しているページです。
どっちの言葉を使えば日本語として正しいのか、迷った方はこのページの使い分け方を参考にしてみてください。
「庇護」と「保護」という言葉は、どちらも「かばって守ること」を意味しているという共通点があり、本来の意味は少し違いますが混同して使われる傾向があります。
庇護と保護の違い
庇護と保護の意味の違い
庇護と保護の違いを分かりやすく言うと、庇護とは弱者を守ること表す限定的な表現、保護とは人や環境などを守ることを表す一般的な表現という違いです。
庇護と保護の使い方の違い
一つ目の庇護を使った分かりやすい例としては、「戦後、日本はアメリカの庇護のもとで経済を発展させました」「ゆくゆくは親の庇護から離れ自立する」「小作人たちは領主の庇護下にありました」などがあります。
二つ目の保護を使った分かりやすい例としては、「保護犬の里親募集情報をチェックする」「エクセルのシートを保護する方法を教えてください」「環境保護活動に関心があります」「少年は保護観察処分となりました」などがあります。
庇護と保護の使い分け方
庇護と保護という言葉は、どちらも「危険などからかばって守ること」を意味しますが、厳密な意味や使い方には違いがあります。
庇護とは、かばって守ることを意味し、特に、弱い立場の者を助けて守ることを表現する時に使われる言葉です。具体的には、子供や難民あるいは社会的弱者などをいたわり守ることを表し、「難民庇護」とは、政治動乱からの迫害を逃れ他国に救済を求める難民を、受け入れ守ることを意味します。
保護とは、外的危機や脅威などから、助け守ることを意味します。保護は、弱者を守るという「庇護」に比べて広い意味で使われる言葉であり、弱者に限らず困っている人や動物あるいは自然環境など、あらゆる分野で用いることができます。
つまり、庇護と保護の違いは守る対象にあります。庇護は、弱い立場の者を対象とする限定的な表現ですが、保護は広く使われる一般的な表現になります。
庇護と保護の英語表記の違い
庇護も保護も英語にすると「protection」「guardianship」「shelter」となり、例えば上記の「庇護のもとで」を英語にすると「under the protection」となります。
庇護の意味
庇護とは
庇護とは、かばって守ることを意味しています。
表現方法は「庇護を受ける」「庇護のもと」「庇護を与える」
「庇護を受ける」「庇護のもと」「庇護を与える」などが、庇護を使った一般的な言い回しです。
庇護の使い方
庇護を使った分かりやすい例としては、「親が子どもを庇護する」「庇護対象となる難民を受け入れる」「英語が話せない庇護申請者は手続きに時間を要する」「ドイツの庇護権と難民問題について論じる」「仏法の庇護者として信玄は信長を非難した」などがあります。
その他にも、「難民を受け入れた庇護国に定住する」「裕福な両親の庇護の下で育つとお金の使い方が大雑把になります」「男性の庇護欲をかき立てる女性には共通の特徴があります」などがあります。
庇護とは、かばって守ることを意味し、特に弱い立場の者を、他から害を受けないように守っていたわることを表現する言葉です。庇護の「庇」は訓読みで「かばう」と読み、 害などから助け守ることを表し、「護」は付き添って過ちのないように大切にすることを表します。
「庇護権」の意味
上記の例文にある「庇護権」とは、国家が外国の犯罪人や政治的避難者で保護を求めてきた者を、自国領域内で庇護する国際法上の権利のことです。原則として、自国の在外公館などでの庇護は認められていません。
「庇護欲」の意味
庇護を用いた日本語には「庇護欲」があります。庇護欲とは、自分が誰かを守ってあげたい、助けてあげたい、貢献したいと感じる欲求のことです。一般に、男性が守ってあげたくなるような女性に対して抱く欲求とされています。
庇護の対義語
庇護の対義語・反対語としては、弱い立場の者などを追い詰めて苦しめることを意味する「迫害」、むごい扱いをすることを意味する「虐待」などがあります。
庇護の類語
庇護の類語・類義語としては、侵害や危害から庇い守ることを意味する「擁護」、養い守ることを意味する「養護」、かわいがって庇護することを意味する「愛護」、苦しむ人を救い助けることを意味する「救済」などがあります。
保護の意味
保護とは
保護とは、外からの危険・脅威・破壊などからかばい守ることを意味しています。
その他にも、「応急の救護を要する理由のあるとき、警察署などに留め置くこと」の意味も持っています。
表現方法は「保護する」「保護されていない通信」「保護ガラス」
「保護する」「保護されていない通信」「保護ガラス」などが、保護を使った一般的な言い回しです。
保護の使い方
「生活保護を受給する条件を確認する」「週末は保護猫カフェに行く予定です」「保護犬の譲渡会に参加しました」「初めての保護者会の服装に迷っています」「化学実験では保護メガネをかけた方がよいでしょう」などの文中で使われている保護は、「かばい守ること」の意味で使われています。
一方、「保護観察所は全国各地にあります」「父は保護観察官として働いています」「保護司は給料ではなく報酬が規則に従って支払われます」などの文中で使われている保護は、「警察署などに留め置くこと」の意味で使われています。
保護とは、外からの危険や脅威などに対し、気をつけてかばい守ることを意味します。保護という言葉の「保」は、養い育てることや大切に守ること、「護」は、侵されたり害が及ばないように防ぐことを表す漢字です。
「生活保護」の使い方
上記の例文にある「生活保護」とは、日本国憲法第25条の理念に基づき、国民の健康で文化的な最低生活を保障する制度です。生活保護法に則り、世帯の収入だけでは国が定める最低生活費に満たない場合に受けられます。その場合、不足する額が保護費として支給されます。
「保護司」の使い方
保護を用いた日本語には「保護司」があります。保護司とは、犯罪をした者の改善および更生を助け、犯罪予防に努めることを使命とする無給非常勤の国家公務員のことです。社会的信望などを有する民間人の中から法務大臣が委嘱します。
保護の対義語
保護の対義語・反対語としては、そのままにして放っておくことを意味する「放置」、世話をしたり関係を保ったりするのをやめる事を意味する「見捨てる」、暴力や強権などをもって他を侵害することを意味する「蹂躙」(読み方:じゅうりん)などがあります。
保護の類語
保護の類語・類義語としては、監督し保護することを意味する「監護」、非行少年などを教育し保護することを意味する「教護」、まもることを意味する「守護」、危害の及ぶのを防ぎ守ることを意味する「防護」などがあります。
庇護の例文
この言葉がよく使われる場面としては、かばい守ること、いたわり守ることを表現したい時などが挙げられます。
例文1にある「庇護を受ける」の意味は、他者や国などから守ったり世話をしたりしてもらうことです。例文3の庇護と擁護の違いは、守る対象にあります。庇護は弱者など人に対して使われますが、擁護は人権など権利に対して使われることが多い言葉です。
保護の例文
この言葉がよく使われる場面としては、危険などからかばい守ること、警察などに一時とめておくことを表現したい時などが挙げられます。
例文1から例文4にある保護は、「危険などからかばい守ること」の意味で用いられています。例文5の保護は、「警察などに一時とめておくこと」の意味で用いられています。
庇護と保護という言葉は、どちらも「かばって守ること」を表します。どちらの言葉を使うか迷った場合、弱者をかばって守ることを表現したい時は「庇護」を、人や動物あるいは環境などを守ること表現したい時は「保護」を使うようにしましょう。